ゲーテを、ハイネを、グリム兄弟を生んだ文化の国、ドイツ。
そして、自動車産業をはじめとするさまざまな分野で世界をリードする、ドイツ。
今回は、そんなドイツの葬儀についてご紹介します。
教会の影響のもとに
悠々と大地を流れる父なる河、ライン。そのほとりに点在する美しい古城と中世の面影を残す街並み。ヨーロッパのほぼ中央に位置するドイツは、さまざまな歴史に揺れ続けてきた国です。
この地に住む人々の多くはキリスト教徒で、カトリックとプロテスタントがほぼ半数ずつ。かつて教会は埋葬に対しても権限を持ち、原則的に教会がそれを執り行っていました。 カトリックではキリストが土葬されたと言い伝えられているため、当時、すべての信者はそれに準じなければならず、異教徒のものである火葬は固く禁じられていました。
16世紀からの土葬墓が残っている、
墓地と礼拝堂
十八世紀後半に、政府は葬儀に対する権限を教会から取り上げましたが、カトリック教会はいまも火葬を指示していません。そのため、今日でも、ドイツ全土での火葬の率は40%以下。最も一般的な葬儀の方法が、土葬なのです。
美しい花々を飾られて、鐘の音に送られて
では、ドイツの土葬はどのように行われるのでしょう。まず、遺体が納められる棺は一般的に木製で、黒や褐色の八角形舟形。内側には、シルクや紙などで作られたシーツが敷いてあります。棺は花で飾られ、月桂樹を施したスタンドに支えられます。死亡の通知は地方新聞に広告を出すのが普通で、友人や知人は訃報を知ると、遺族に花輪やカードを贈ります。
また、印象的なのが葬列です。都市部では条例により廃止されていますが、地方では、いまも昔ながらのおごそかな葬列を繰り広げることがあります。黒の喪服やシルクハットを身にまとった遺族や会葬者が、黒い布を垂れかけた馬車の霊柩車や棺持ちの手によって運ばれる柩の後ろをしずしずと歩を進め、墓地まで行くのです。ときには、先頭にブラスバンドが立ち、葬送曲を演奏することも。教会は、葬列が続く間、鐘の音を打ち鳴らし、死者への尊敬の念と参列者への感謝を示します。
墓地では、埋葬式が行われた後、まず司祭者が棺の上に土を三回かけ、遺族がそれに続きます。穴を埋めた後は、棺の形に土を盛り上げておき、遺族は好きな時にその小さな山の上や横に花やツタを植えるのです。
増えつつある火葬
ドイツの平均的な家族墓
このようなカトリックの伝統的な土葬がいまも続けられている一方で、火葬への動きも見逃せません。十八世紀後半には、すでに公衆衛生上の理由などで火葬が多く行われ始めましたし、十九世紀には、長い月日をかけて身体が朽ちていく土葬よりも、燃え上がる炎のなかで短時間に遺体が燃えていく火葬を高く評価しようという考え方が、知識層を中心に広がりました。現在では、ほとんどの墓地は火葬場を設置。
火葬は、人々や社会に対する教会の影響力が低下するにつれて、確実に普及してきたのです。
中世と近代、メルヘンの世界と最先端のテクノロジー、そして人々の生真面目な姿勢と陽気な笑顔。ひとつの国や国民にさまざまな素顔があるように、ドイツの葬儀の流れにも伝統と変革が混じり合い、これからも動き続けていくのでしょう。
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