長い歴史を持ち、伝統と格式を重んじながらも、時に伝統の枠を打ち破る斬新な文化を生み出してきた国、イギリス。
そこに住む人々は、死をどのように考え、どのように人生の終幕を迎えるのか。今回は、イギリスの葬儀についてご紹介します。
老後は、自然に囲まれて
林や草原のなかをどこまでも歩いてゆける散歩道、優美なバラや緑のオブジェが美しいガーデン、そして窓辺を飾る可憐な花々。イギリスを旅するとき、私たちの目を楽しませてくれるのは、季節によってその色合いを微妙に変化させる自然の風景とすみずみまで手入れが行き届いた邸宅のガーデンです。
イギリスは、環境保護の団体「ザ・ナショナル・トラスト」の運動が盛んな地であり、かつガーデニングの本場。
いまは都会に住む人々の多くも、引退後は田園に移り住み、日々、緑のなかを散歩したり、読書をしたり、庭の手入れをしたり・・・。そんなゆったりとした生活をしたいと願っているといわれます。自然を愛し、植物に対して豊かな知識と技法を培ってきたイギリスの人々。彼らは人生のラスト・シーンを、どのように迎えるのでしょう。
簡素に、しかし厳かに進む葬儀
イギリスでは、どちらかと言うと、ごく親しい少人数の葬儀が中心です。それは、死はあくまでもプライベートなことであり、愛する者を失った悲しみは各人が心の中で噛みしめるものであるという考え方が、伝統的にあるからだとも言われています。実際、親しい友人や知人が亡くなったとの知らせを受けても、日本のお通夜のように、遺族のもとに駆け付けることはほとんどありません。 哀悼の気持ちは、それぞれが花束を贈ることで表現します。
葬儀は、死後、数日から10日ほど経った頃、火葬場に併設されたチャペルや教会、または故人が信仰した宗教の寺院などで執り行われます。式では、まず列席者一同でお祈りをし、賛美歌を歌います。そして、牧師が聖書を引用して故人の徳を讃えた後は、遺族や友人たちによるスピーチ。故人のありし日の姿をしんみりと、時にはユーモアを交えて語ります。そして、再び賛美歌とお祈りがあり、約三十分から四十分ほどの式は幕を閉じます。
このような簡素な葬儀のなかで、イギリスらしいものと言えば、霊柩車。近頃では、一般的な車両にまざって、葬儀用に特別に調教された黒馬が引く伝統的な馬車が人気を集め、復活を果たしつつあります。
花や木に、悲しみを託して
イギリスでは、現在、亡くなる人の約七割が火葬に、そして約三割が土中に埋葬されています。しかし、火葬と言っても、日本ように遺骨として形を残すものではなく、完全に燃焼させ、粉末状の遺灰とするもの。遺族が引き取った遺灰は故人の墓の周りやメモリアル・ガーデンと呼ばれる公園墓地、または故人の思い出の地や自宅の庭などにまかれます。
遺灰をまいたそれらの地にすでに植えられ、そして新たに植えられるのが、バラなどの花々や木々。そのため、墓地は自然が美しい公園のようにも見えます。
また、土葬の場合でも、埋葬した上に木を植える「green burinal(緑の埋葬)」が注目を集めています。生長する木によって、家族はいつまでも故人を思い出すことが出来ますし、豊かな緑ともなれば、次の世代の環境へも貢献出来るのです。さらに、棺も従来の木製に代わって段ボール紙などの素材を用い、環境に配慮するケースも登場してきました。
さて、愛する人が亡くなった後も、その人の眠る地で花を咲かせ、木を育てる。そして、故人に話し掛けるように植物たちに話し掛け、思いを馳せる。ラテンの国の人々と比べると、一般的に感情表現が控えめだと言われるイギリス人ですが、その姿には自然をこよなく愛する彼らならではの悲しみの癒し方があるように思えてなりません。
内張りが施され、
外側には把手(とって) がついた
ゴージャスな棺
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