*序 論

 私は業務上警察署を訪ねる機会が多い。
 その折に、警察署内で保管されている動物を目にする。尋ねると「迷い犬」だという。しばらくの間、警察署で保護されているそうである。
 それから数週間後、また警察署を訪れる機会があり、犬は姿を消していた。飼い主が見つかったのであろうと、勝手に思い込んでいた…
 ある日の、刑事の一言が記憶に残る。
 「結局、保健所ですわ」
 はっきりと覚えていないが、「ここにいた犬は、どうなったんですか?」とおそらく私が個人的な好奇心から発した質問に、そんな答えが返ってきたことを記憶している。具体的にどうなったのかは刑事には聞かなかったことだけは確かである。
 無知ながら、私でも保健所が野良犬等を処理している話は、幼い時から耳にしたことがある。しかし、具体的にどうされているのかは知らない。それが今回の論文作成にあたってのきっかけである。
 「自分には関係のないことだ」「他人事」だと思い込むことで、現実から目を背け、かかわりを持つことを拒んでいた…。
 しかし、無関心さを装うことが原因で、こんなにも多くの動物たちへの虐殺を黙認してしまうことを今回の論文作成に当たって知った。
 人間社会は数多くの動物たちの犠牲の上に成り立っていることをあらためて再認識し、命の尊さを今一度、見つめ直すきっかけになることを願い、作成したものである。


*第一章 身近な動物たち

 人間社会は様々な動物たちの恩恵により成立している。食という観点だけで言えばスーパーマーケット等へ行けば、沢山の肉や魚がいつでもずらりと並んでいる。肉や魚を調理する飲食店も数多く存在している。
 また人間が使用しても人体に害ではないかどうかを、沢山の動物たちで実験を行ってから商品化したものを我々は購入し使用している。
 身近に感じる動物としては、ペットとしての犬や猫、街を歩いていて目にしないことのないカラスやハト、スズメであろう。ペットの種類も多種多様販売されており、犬や猫の哺乳類をはじめ、鳥類、昆虫類、魚類、爬虫類、両生類と実に多岐にわたっている。
 かつてペットは、愛玩用としてのニーズよりも使役のために飼い慣らされていた傾向が強かった。犬は狩りの狩猟用番犬として、猫は鼠を捕獲するために人間に役立つということで飼われてきた。
 犬に関しては現在でも、盲導犬、聴導犬、レスキュー犬、警察犬、麻薬探知犬のように使役犬として人間のために日々多大な恩恵を与えてくれている。
 しかしながらニーズの変化によって、犬等のペットは使役のためというよりは、パートナーあるいは自分の子供という新しい感覚でペットを購入されるようになって来ている。こうしたペット購入者が増加する中で、様々な新たな問題が発生してきた。
 悪質なペット販売店や悪質なブリーダーと購入者とのトラブルをはじめ、売り手側、買い手側共に当てはまる動物虐待という問題が全国各地で発生するようになった。
 これらを受け動物取扱業者への規制が平成11年に議員立法として発案され、平成12年12月1日に現行の『動物の愛護及び管理に関する法律』が改正され施行された。この法律により動物の販売業者、繁殖販売業者、貸し出し業者、保管業者、訓練業者、展示業者、展示販売業者は都道府県知事へ届出を行わなければならなくなった。さらにこの法律は5年ごとに改正を行うことが前提となっている。平成17年である今年は、改正の年度となっている。今年度の改正で、動物販売業者は届出制から登録制に変更されている。
 またこの法律は動物を飼っている飼い主(飼養者)への責任も厳しく明記している。可愛いだけでは動物を育てることはできない。中でも動物虐待を行った者への罰則がうたわれている。行政が介入するほどに我々人間の、動物たちとの接し方が明らかに変化している。


1−1 ペットブーム

国語辞典で『ペット』という項目を引いてみると、「かわいがって飼う動物」と記されている。続いて、『飼う』という項目を引いてみると、「動物に食べ物をあたえて養う」と記されている。つまりペットとは、「かわいがって、食べ物を与え養う動物」とされている。
 そんな認識のある日本において、現在2,000万頭近くの犬や猫が1,450万世帯の家庭で飼育されており、飼われている犬や猫を取巻くペット産業全体では、1兆円を超える市場を形成していると言われている。

『日本ペットフード工業会「犬猫飼育頭数および飼育率グラフ」より』
犬猫飼育頭数及び飼育率グラフ

 市場規模拡大の背景を受け、さまざまな業種がペットマーケットに参入している。ペットとの共生をコンセプトとした新しい需要を日々創造している。
 従来はマンションではペットを飼うことはできなかったが、最近ではペットと暮らすことができる分譲マンションなど珍しいことではなくなっている。
 さらに、「ペット専用の」と名のつくサービスも少なくない。ペットショップに動物病院、ホテル、美容院、トレーニング(しつけ)教室。留守中の世話を引き受けるペットシッターや、行方不明のペットを探す探偵、ペットの通院・入院見舞金の出る保険、ペットのための健康施設、ペットのカメラマン、ペット霊園、ペットと共に食事ができるレストランや喫茶店、ペットと共に宿泊可能なホテルや温泉旅館等々が存在している。
 このようにペットが優遇される環境になった背景には、国内の社会事情も大きく反映されていると言える。犬や猫に使役の任を負わせる時代から、コミュニケーションの対象へとペットに対して求めるニーズが変化していることが、ペット環境を取巻くビジネスから見ても感じ取れる。



1−2 動物に関する資格

子供に将来なりたい職業を聞き、毎年子供の日にランキングをメディアが報道している。今年平成17年度は初めて動物を扱う職業が上位にランクインした。それほどまでに様々な動物に関する職種が現在巷に存在している。

大人になったらなりたいもの
男  子 女  子
@ 野球選手(前年2位)
A サッカー選手(前年1位)
B 学者・博士(前年7位)
C 大工さん(前年4位)
D 食べ物屋さん(前年3位)
@ 食べ物屋さん(前年1位)
A 保育園・幼稚園の先生(前年2位)
B 看護師さん(前年3位)
C 学校の先生(前年4位)
D 飼育係・ペット屋さん(前年6位)
(平成17年5月5日 朝日新聞朝刊より)

 動物の医師である「獣医師」、動物園の「飼育係」、さらにペット専門の美容師の資格である「トリマー」はよく知られた職種である。この他にも様々なペットに関する職種、そのための資格が存在している。
 人間とともに生きる“パートナー”と位置づけ、互いにとって良好な関係の築き方を考え、犬の心のバランスを安定させ、元気で健康に暮らせるようサポートする「ドッグ・セラピスト」。
 ペットの適正な飼い方・動物愛護精神の普及が目的の資格「愛玩動物飼養管理士(ペットケア・アドバイザー)」。
 動物の看護や介護を行う「アニマル・ヘルス・テクニシャン(動物衛生看護師)」。
 愛犬相談員として飼い主に的確な指導を行う「ドッグライフカウンセラー」。
 都道府県知事の免許を受けて家畜の人工授精(牛、馬、豚、めん羊、山羊など)または受精卵移植(牛)を行う「家畜人工授精師」。
 生まれたばかりのヒヨコの雄・雌を瞬時に見分ける「初生ひな鑑別師」。
 この他にも「ペットシッター士」、「実験動物技術師」や、動物の愛護及び管理に関する法律を受け誕生した「動物取扱主任者」等々が存在している。

 また「公認訓練士」としての資格は、国が認可する次の団体がそれぞれに認定試験を設け、試験を行っている。

・(社)ジャパンケンネルクラブ (JKC)
・(社)日本シェパード犬登録協会 (JSV)
・(社)日本警察犬協会 (PD)

 JKCの認定資格は、訓練士補、訓練練士、訓練教士、訓練範士、訓練師範の五段階。
 JSVの認定資格は、三級訓練士、二級訓練士、一級訓練士、準訓練師範、訓練師範、名誉訓練師範の六段階。
 PDの認定資格は、三等訓練士、二等訓練士、一等訓練士、一等訓練士正、一等訓練士長の五段階。



1−3 ペットを必要とする時代

 日本は世界的にもかなりのスピードで高齢社会へ突入している。高齢化を推し進めている要因の1つに国内の少子化という人口問題がある。そんな中着々と数を増やしてきたのが、人間の子供ではなくペットという第3の子供である。

『老年人口割合の国際比較』
老年人口割合の国際比較

『日本の人口ピラミッド』
日本の人口ピラミッド

『日本ペットフード工業会「犬猫飼育頭数及び飼育率」より』

日本ペットフード工業会「犬猫飼育頭数及び飼育率」より

『日本ペットフード工業会「単身世帯での犬猫飼育頭数」より。単位は千匹』

日本ペットフード工業会「単身世帯での犬猫飼育頭数」より

『日本ペットフード工業会「世帯別犬猫飼育頭数」より。単位は千匹』

日本ペットフード工業会「世帯別犬猫飼育頭数」より

 上記の図を見ると、おおまかに計算し0歳から14歳までの子供の数が約1,787万人。2050年には0歳から14歳までの子供は約1,066万人なると想定されている。それに対して、現在飼われている犬猫の頭数は約2,516万匹も存在している。
 14歳までの子供の数より飼われている犬猫の数が上回っていることがよくわかる。

 さらに、犬を飼養する世帯の約10%の世帯が単身者であり、猫に関していえば約20%の世帯が単身者だとされている。もちろん単身者には高齢者も存在しているので直接的に少子化の要因であるとは言いがたい。近い将来の話ではなく、すでに子供を目にするより犬や猫を目にすることが多い社会なのかもしれない。
 いずれにせよペットの需要は増え、子供が減り、高齢者が増えている。少子高齢化へ移行するにつれペット産業への注目度は高くなりつつある。



1−4 ペットによる癒し

 ペットに癒されるという話を昨今よく耳にする。
 一人暮らしの者が仕事に疲れ、帰宅しペットに癒され、翌日から仕事に精を出す。そんな癒し効果を更に利用した取組みが、昨今では行われている。
 従来のようなペットという呼び方を排して、「コンパニオン・アニマル」と呼ぶようにまでなっている。アニマル・セラピーは、コミュニケーションを遮断した人をコミュニケーションの場に引き戻すのに、かなり効果的な訓練コースになっている。
 犬との触れ合いや交流を通じて、病気やケガまたは精神的な痛手を受けた人の不安を減らし気力を高め心と体を癒す「ドックセラピー」と呼ばれるものもある。
 犬からの癒しにより、「明るくなった」「笑顔が見られるようになった」などの他にも、以下のような効果があるとされている。

『ドッグセラピーの効果』
  1. 痴呆症という患者の進行を予防する効果―痴呆症は記憶や認知に障害が生じるが、情緒面は失われていないため、犬を世話することで、やさしい気持ち、愛情、慈しみなどの感情が蘇れば、毎日の生活はより楽しく豊かになる。
  2. 犬と一緒に遊んだり、犬の世話をしたりすることで、心理的な効果となってリハビリに対する積極性や、自立する前向きな姿勢を生みだしていく。

 高齢化が進む日本社会にとって、ペットによる癒しに対する期待は大きい。ペットと生活している単身の高齢者の数も増えつつある。
 ただし、アニマル・セラピーには注意しなければならない落とし穴がある。そもそも飼養動物たちは、その生命を完全に人間にゆだねている。高齢者の生きがいになっている反面、飼い主が次第に虚弱になっていったとき、どうするかという問題も存在している。

 ペットによる癒しの期待は、止まることを知らず電子ペットにまで及んでいる。
 アイボや、ファービー等の擬似ペット、さらには液晶画面で動き回るたまごっち等のゲーム感覚のペット。躾やエサ、汚物の処理を伴わない分、飼主にとっては申し分ない存在なのかもしれない。



1−5 ペット葬

 人間同様ペットもこの世に生を得た以上、いつの日か必ず死を迎えなくてはならないという現実がある。飼い主にとっても飼う以上は責任持って死を受け入れる必要がある。ペットを失う悲しみは、肉親を失う悲しみに匹敵することがある。
 日本ペットロス協会の調査によると、愛犬などを亡くした人の数%が、強い絶望感や悲しみが2ヶ月以上続き、生活に支障をきたす「ペットロス障害」に陥っている。会社や学校に行けなくなるケースもあるそうだ。そんな飼主がペットの亡骸をゴミ扱いの一般廃棄ゴミとして処理することを望むはずはなく、ペット葬はそんな背景を受け徐々に需要が増加したのである。
 かつては庭先に穴を掘りペットを埋めるか、一般ゴミとして扱われ処理する程度であった。
 現在は住宅事情の面から簡単にペットを埋める場所が存在しない。仮に自分の土地に埋めるにあたっては、周囲に悪臭を放たないように配慮する必要があり、公衆衛生の面からも近年は火葬が望ましくなっている。
 他人の土地や、公共の土地へ土葬を行った場合当然罰せられ、河川へ流すことも同様であり場合によっては刑法に触れる可能性もある。

『動物の死体処理に関連する法律』
  • 所有地に土葬を行った場合
     近隣に対して悪臭や土壌汚染等の害を及ぼし、損害を与えた場合は民法の不法行為責任(民法709条)を負う可能性もある。
  • 他人の私有地に土葬を行った場合
     所有権を侵害したものとして死体の撤去及び損害賠償を請求される可能性がある。(民法709条)
  • 公共の土地に土葬を行った場合
     廃棄物処理及び清掃に関する法律(第25条8号)により、「5年以下の懲役又は1000万以下の罰金に処し、又はこれを併科する」
     軽犯罪法(1条27号)「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者」は拘留又は科料に処せられる。
  • 河川に動物の死体を流した場合
     廃棄物処理及び清掃に関する法律(第25条8号)に該当する可能性があり、

 さらに刑法(143条)「水道により公衆に供給する飲料の浄水又その水源を汚染し、よって使用することができないようにした者は、6ヶ月以上7年以下の懲役に処する」に該当する可能性もある。
 動物の死体は廃棄物処理及び清掃に関する法律の第2条により廃棄物と定められている。そのため一般のペットは行政へ廃棄物として処分をお願いすることが可能であり、一般廃棄物として焼却される。また市町村によっては動物専用の焼却炉を有し、有料で火葬を行う自治体も存在する。
 しかし廃棄物処理ということに抵抗を感じる飼い主は、ペット霊園等のペット葬業者へ依頼するケースが多々存在しており現在市場を確立している。

『死亡判断後、火葬を行うための選択』
@民間による火葬

A行政による焼却

B行政の動物専用炉での火葬

 ペット葬とは、文字通りペットの葬儀、火葬、納骨、供養について執り行うものである。昨今ではペット専用の火葬車輌が自宅へ来てくれるサービスも登場している。また、人間同様僧侶に読経してもらうなど、ペットに対する思いは人間同様になっている。以下はペット葬のおおまかな流れである。

(※)葬儀…自宅で通夜・葬儀を行ってから動物専用の火葬施設に連れてくる(或いは迎えに来てもらう)ケースもある。また、火葬施設のある敷地内のスペースで僧侶に読経をしてもらうケースも存在している。

『図・ペット葬の流れ』

ペット葬の流れ

ペット動物たちの死亡判断は以下の3種類である。

『ペット動物の死亡判断』
@獣医師による死亡判断

A飼い主による死亡判断

B交通事故死や殺処分

 人間と全く異なる点は、死亡事実の判断を医師に委ねなくとも死亡が確定され、さらに死後24時間以内であっても火葬することが可能な点である。
 また火葬に関しても、人間のように死亡届を役所へ提出し火葬許可書を交付されなければ火葬ができないということはない。
 犬は狂犬病予防法により所有者が所在地を管轄する市町村長へ畜犬の登録を申請しなければならない。その犬が亡くなった場合は飼い犬の抹消登録を行う必要性がある。が、火葬後に行っても別段問題はない。
 また獣医師による死亡診断書は存在しているが、火葬に関して必要な書類ではない。死因判定のための書類である。最近はペットのための保険等も存在しており、死後獣医師に診断書を書いてもらうケースも存在している。また、ペットショップで突然亡くなった動物たちの死因を見てもらい、人への感染をおこさないための予防策の一環ともなっている。
 ペット動物たちには狂犬病を始めとした人獣共通感染症(動物由来感染症)というものが存在しており予防について行政はかなり力を入れて、ペット動物販売業者に対して指導を行っている。
 しかしながら現実問題として、ペットの死因の判別についてはまだまだ検討の余地を秘めている。



1−6 人獣共通感染症

 先に述べたように、ペットなどの動物から人に感染する病気が世界中に存在しており、現在の医学でも解明されていないものが多々存在している。主な人獣共通感染症には以下の病名が上げられる。

『大阪府動物取扱主任者講習会 レジュメより』
・狂犬病
・高病原性鳥インフルエンザ
・野兎病
・ブルセラ症
・パスツレラ症
・カンピロバクター症
・オウム病
・トキソプラズマ症
・エキノコックス症
・皮膚糸状菌症
・ウエストナイル熱
・レプトスピラ症
ネコひっかき病
・サルモネラ症
・リステリア症
・Q熱
・回虫症
・疥癬症

 中でも狂犬病はすべての哺乳類が感染する恐れがあり、1度発症すると死亡する恐れが最も高い人獣共通感染症である。日本においては昭和31年以降発生していない(潜伏している可能性はある)が、全世界では毎年5万人以上の人間や動物が狂犬病で死亡している。海外旅行等で外国へ行った折は、動物への接触は十分に注意する必要性がある。

『「世界の狂犬病発生状況」 小平町役場ホームページより』

「世界の狂犬病発生状況」

 日本では昭和25年に制定された「狂犬病予防法」により、犬の飼い主は年1回の予防接種を義務付けられている。しかし登録していない犬も国内には存在しており、狂犬病予防接種も100%ではない。また海外から輸入される恐れもあり日本国内でいつ発生してもおかしくないという現状がある。

 ペットの輸入の検疫対象はすべての動物ではないので、検疫の対象外のペットが狂犬病にかかっていた場合見逃す危険性もあるとされている。



1−7 輸入動物

 2005年9月1日より、輸入動物を原因とする人の感染症の発生を防止するため、動物の輸入届出制度が開始されている。届出の対象となる動物は、陸生哺乳類(家畜、犬、猫等を除く)、鳥類(家禽を除く)、ネズミ等およびその死体。これらは、販売や展示のために輸入される動物だけではなく、個人のペットも対象となる。
 つまり、家畜、犬、猫等や家禽を除く動物・動物の死体を輸入するにあたっては、国への届出が必要であり、届出内容に不備がある場合は輸入不可能となる。

 海外から持ち込まれる動物を規制する動きは、感染症に対する恐怖だけではない。厚生労働省とは別の側面から環境省も取り組んでいる。環境省が取り組んでいる側面は、環境・生態系への配慮である。
 古来生物は数億年単位の長い年月をかけ、自然の中で徐々に進化を遂げてきたが、人間の手によって、人為的にもたらされた近年の急激な変化は、生態系を破壊するだけではなく、他の地域固有の文化にも影響を及ぼしているからである。

@ 天然記念物の鳥 ヤンバルクイナ
 その昔、猛毒のハブなどの退治目的で、インドに生息する肉食哺乳類マングースが那覇市北部などに放たれたが、思惑に反してマングースは弱い小動物をエサにしたようである。当時ヤンバルクイナは2,000羽以上生息していたが、現在では1,000羽に満たないといわれている。
 マングースがヤンバルクイナのヒナや卵を食べた結果のようである。沖縄ではマングースの捕獲が2000年に本格化し、これまで5,000頭を捕獲しているが、まだ3万頭が生息するとされている。

A アライグマ
 「アライグマ」と聞くと、ラスカルと言う名を思い浮かべる日本人は少なくない。
 テレビアニメで放映され当時の少年少女たちは、アライグマの存在を初めて知り、可愛い動物であることを知ったはずである。その可愛いはずの動物であるアライグマは、現在大阪府では有害鳥獣に指定されており、年間200頭近く殺処分されている。現在日本国内では、アライグマは特定外来種に認定されており根絶種とされている。アライグマはその愛くるしい表情や行動とは裏腹に、繁殖期には人の手には負えないほど凶暴となる。
 そのため、アニメではラスカルを最後北米の山へ帰し最終回を迎える。アニメ同様、手に負えなくなったアライグマを飼い主たちは山へ返した。その結果、自然繁殖し野生化したアライグマは農作物に被害を与える有害鳥獣へと変貌している。

B 甲虫王者ムシキング
 ムシキングの大ブームにより、外国産のカブトムシやクワガタムシが、ゲーム人気との相乗効果で売れに売れている。外国産甲虫の輸入量は年間200万匹を超えている。
 外国産甲虫の輸入量が増加した理由は、ムシキングブームだけではない。1999年農林水産省が、「国内の農産物に被害を与える心配がない」として、植物防疫法を緩和し、輸入を解禁したことがきっかけである。現在496種のクワガタムシと53種のカブトムシの輸入が認められている。
 これに伴い、外国産クワガタムシなどが大量に逃げると、国産クワガタムシのエサやすみかを奪ったり、雑種を作って地域の固有性が失われる恐れがあるため、環境省はポスター5,000枚を作成して、全国のペット店などに配布している。

 以上のように、海外から持ち込まれる動植物による国内の生態系への被害を防ぐため、2005年6月から『特定外来生物被害防止法』が実施されている。

 特定外来生物の指定を受けると、輸入や飼育、野外へ逃がすことが禁止され、必要に応じて駆除も行われる。違反すると、3年以下の懲役か300万円以下の罰金。会社組織が関わる場合には、最高1億円の罰金が科せられる。

『環境省による外来生物被害予防三原則
(侵略的外来生物による被害を予防するために)』
  1. 入れない(悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない)
  2. 捨てない(飼っている外来生物を野外に捨てない)
  3. 拡げない(野外にすでにいる外来生物は他地域に拡げない)

 現在、中華料理の高級食材である上海ガニ(チュウゴクモクズガニ)、アメリカミンクなど42種類の生物が追加選定されている。(2005年9月現在)
 上海ガニは輸入のほかに、国内の休耕田で養殖されており、在来種との交雑および、土手に穴を掘る被害を起こす恐れがあるという理由からである。正式指定後は、輸入や飼育、販売は原則として禁止される。規制後は、料理店は許可を得れば仕入れられるが、個人による生きたままでの購入はできなくなる。養殖は逃がさない設備が必要となる。
 輸入が増大している外国産クワガタムシについては生態系への影響などデータ不足の上、規制で飼育中のものが大量に遺棄される恐れがあるとして、現在は見送られている。



*第二章 犠牲になる動物たち

 昨今、犬猫の殺処分について様々なメディアや動物愛護団体の働きかけにより、行政側も情報を公開するようになった。殺処分の問題点の多くは、飼主の責任によるところが大きい。しかしながら、飼主から安易に引取処分している行政サイドにも疑問を感ずるところである。
 行政側も、好きで引取殺処分しているわけではない。引取らず、そのまま捨て犬、捨て猫となり、野生化されるのが、一番の問題点でもある。野生化が進むと、必ず人への被害が想定される。現に街中を野犬が集団で徘徊すると人が、襲われケガをする可能性が増大する。また、咬まれたことで狂犬病を発病する可能性すら秘めている。
 人間への被害が深刻化する前に行政サイドが行う予防線の一環が殺処分なのである。すべては、飼主側が最後まで世話をし続けないのが原因で発生している処分である。

『STOP!動物虐待!』 http://www.geocities.jp/より
高知保健所/中央小動物管理センター

STOP!動物虐待! STOP!動物虐待! STOP!動物虐待!

『平成15年度版・全国動物行政アンケート結果報告書・ALIVE資料より』

全国動物行政アンケート結果報告書

 グラフを見る限り、殺処分の数は年々減少していく傾向に向かっている様に見えが、依然として43万もの命を殺害している哀しい現実がある。
 ある愛護団体の調べによると、1頭当りの殺処分に投入されている税金は、約1万円(職員の人件費は別)。年間約43億円の税金が使われていることになる。飼主の責任を国民全員で負担しているのである。
 また行政側が行っている殺処分とは、安楽死ではない。吸入式の麻酔薬で、安楽死をほどこされているイメージがあるかも知れないが、現実は大きく異なり、ナチスのユダヤ人虐殺行為に用いられたアウシュビッツのガス室を連想させる炭酸ガスによる窒息死処分である。
 動物種の多くに用いられている安楽死の薬剤である、エーテル、ハロセン、メトキシフルラン、イソフルラン、セボフルラン、デスフルラン、エンフルランなどは残念ながら、殺処分される動物たちには使用されていない。
 ここ数年徐々にではあるが、自治体による殺処分方法が全国的に公開されつつある。
 自治体によって殺処分の方法は異なっているが、大多数の自治体は、炭酸ガスによる窒息死で殺処分を行っている。
 自治体によっては実験動物に麻酔薬として広く用いられているペントバルビタールを使用し、昏睡状態による安楽死を行う所も存在している。
 福島県いわき市では、規定の引取り日に引き取ったものは、従来通り炭酸ガス。規定の引取り日以外に引き取り依頼があり、かつ子犬子猫で未離乳の場合、ペントバルビタールを使用している。

『平成15年度版・全国動物行政アンケート結果報告書・ALIVE資料より』
殺処分に使用される薬剤
ペントバルビタール前投与後、塩化スキサメトニウム投与
塩酸ケタミン
フェノバルビタールで麻酔後、サクシン投与
ペントバルビタールナトリウム
塩化スキサメトニウム
塩酸メデトミジン
ラボナ錠を経口投与後、炭酸ガス
チオペンタールナトリウム
麻酔後、筋弛緩剤
猫・バルビツール麻酔薬
ソムノペチル
塩酸メデトミジン
セラクタール又はドミトール麻酔
キシラジン
バルビツール系麻酔薬過剰投与 (等)


2−1 実験動物たち

 実験動物たちは、様々な実験に使われている。人間が使用しても安全であるかどうかの確認を、最初に動物たちで実験するのである。医薬品、医薬部外品、化粧品、食料品、薬害、致死量、ワクチン開発と様々な用途で使用されている。殺処分に決まった動物たちが最後に生き残る道が実験施設への払下げであった。
 実験用の犬や猫の条件は、安くて、人に馴れていて、いうことをきく。犬であれば尻尾をふって、何をされても怒らない、反抗しない、咬まないという、扱いやすいことが望まれる。殺処分前の動物は動物実験を行っている施設にとって、入手しやすいルートであった。
 人に飼われていた犬や猫は、人に馴れているため扱いやすく、さらに不要とされたものであるがゆえに、どんなブランド犬も安値で入手できたのである。
 しかしながら、安値の動物たちで実験することで、安いから問題ないという理由で、必要のない実験まで行われている現状がある。我々一般人には理解できないような実験に使われることもある。

(火傷実験) バーナーで体を焼かれ、身体が金網につかないように中腰の姿勢をとらせ続け、横になって休むことができないようにする。

(心理的ストレス実験) 足を繰り返しハンマーで打ち砕かれ、何の手当てもないまま放置される。
(『STOP!動物虐待!』http://www.geocities.jp/より)

『1998年〜2003年の犬猫の殺処分数と実験払い下げの推移』
(AVA−net、ALIVE、生きものSOSの調査による)ALIVEホームページより

犬猫の殺処分数と実験払い下げの推移

 現在、行政で殺処分と決まった動物たちの実験施設への払い下げはほとんど廃止となっている。しかし依然として、ごく一部の自治体のみが現在も行っている。
 実験動物は、犬や猫だけが対象ではない。無菌状態で飼育されたマウスや、ウサギ、サル等、様々な動物種が対象である。

 実験動物としてウサギは、鳴かないということで重宝されている。
 ドレイズテスト(眼刺激性試験) 眼を手足でこすらないように、頭だけがでる拘束器に入れられ、まぶたをクリップなどで固定される。化粧品の原料などを目に注入され、目がつぶれていく様子を観察する。
 75時間も痛みに耐え続けなければならず、あまりの痛みから大暴れし、首の骨を折って死んでしまう場合もある。実験後、すべて殺処分される。世界的に最も批判の多い実験。(『STOP!動物虐待!』http://www.geocities.jp/より)

 サルを研究対象にするような動物実験施設では、普通に行われていた実験がある。我々人間に準じた気持ちや、感情や、考えや、記憶などが実験動物としてサルにあるかないかの実験である。動物の愛情や感覚、情緒や認知の研究はたくさん行われていた。母親はもちろん、ときには実験者や飼育者との接触もほとんどない状態で育てられ、他のサルの姿も見えず、声も聞こえない状態で飼育することさえも行われていた。
 最近では動物福祉の精神に反するので可能な限り避ける傾向にあるが、ほんの20年か30年前までは当たり前のことだったようだ。
 実験動物界の健全な振興を図るため、農林水産省所管で公益法人として認可されている、社団法人・日本実験動物協会が現在、実験動物福祉憲章なるものを公表している。

実験動物福祉憲章
  1. 私たちは、人々の健康増進に寄与し、生命科学の発展のために動物実験が不可欠であるとの認識に立って実験動物の生命を尊び、慈しむ念をもって動物に接し、高品質の動物を提供します。
  2. 私たちは、実験動物に関する知識を深め、動物の特性を理解し、動物福祉に努めます。
  3. 私たちは、かけがえのない地球環境の保全に配慮して、適正な実験動物の供給体制を整えます。
  4. 私たちは、法規や指針を順守、尊重し、幸せで豊かな社会の発展に尽力します。

 昨今では、可能な限り動物実験に関しては代替が利用されている。代替とは動物を用いない方法での実験に置き換ることがあり、ヨーロッパから波及し進んでいる。
 日本動物実験代替法学会ホームページによると、科学研究や教育、毒性試験、生産等の目的のために動物を用いる方法を、動物を用いない方法に置き換え、動物使用数の削減や動物使用に伴う苦痛の削減に取り組んでおり、無駄な動物実験の廃止を提唱している。
 ヨーロッパ議会では、全身的作用に関する一部の試験を除き、動物を用いるすべての安全性試験を2009年以内に禁止するという法律が決定されている。
 さらに、ボロニア宣言なるものがある。
 イタリアのボロニアにおいて、動物実験の削減、純化、置き換えに関する世界会議において採択されたものである。

『日本動物実験代替法学会ホームページより』
  1. 動物を使用する医学研究を使用しない方法に置き換えること
      (in vitro実験=ガラスの中の実験、細胞培養実験などに置き換えること)
                                    ────Replacement
  2. 動物使用数の削減すること
                                    ────Reduction
  3. 動物への苦痛を減らしたり有効な情報をより多く得られるようにすること
                                    ────Refinement
    (責任(Responsibility)が加わり4Rsという人もいるが一般的ではない.)
           『Russel and Burch(1954)が提唱した3Rs』

 これらは3Rと呼ばれている。
 代替法に関しては、様々な企業も積極的に取り込んでいる。
 化粧品の大手メーカー資生堂は、動物愛護の面でもグローバルNo.1を謳っている。技術蓄積を基に独自の代替法試験プロセスとして定着し、眼刺激性、皮膚刺激性、経皮吸収性、並びに光毒性などの安全性の確認に活用している。
 また、代替法の研究の中で最も困難が指摘されているアレルギー性(感作性)にもいち早く取り組み、その成果が結実しつつある。(資生堂ホームページより)

 動物実験に関して全面廃止・撤廃を訴える団体は現在少なくない。しかし動物実験無しに新薬を人間でいきなり試す方法は現状として考えにくい。しかしながら、動物たちの命をもてあそぶ事は推奨される事ではない。その限りない葛藤に嘖まれる。

 動物実験により誕生したクローン。クローン動物はこれまで、羊のドリーを初め、マウス、牛、ヤギ、ブタ、ウサギ、猫、馬などで成功している。最近ではアメリカ・韓国の研究チームが、卵子を体外で成熟させるのが難しい犬のクローンを誕生させるのに成功している。日本においては、クローンではないが、盲導犬不足を解消しようと、盲導犬の凍結卵巣を別の雌犬に移植し、繁殖する取り組みが北海道帯広畜産大の研究グループと北海道盲導犬協会によって進められている。

 IT media News(http://www.itmedia.co.jp/news)によると、アメリカのGenetic Savings & Clone社(http://savingsandclone.com/)は一般向けにペットのクローン猫を販売している。
同社は、依頼に応じペットのクローンを作るために、「数百匹の」猫と犬の生体組織を冷凍保存しているそうである。注意すべき点は、あくまでクローンであり、死んだペットと同じ性格ではない。さらに記憶も共有しない。死んだペットの双子の兄弟的感覚に近い。「遅く生まれた双子」とも呼ばれている。(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0506/28/news034.html)



2−2 動物虐待

 動物虐待という言葉を耳にしたとき、私は神戸で発生した神戸連続殺人事件の酒薔薇聖斗を頭に思い浮かべる。彼が事件を起こす前兆として、動物を虐待、虐殺していた事があったことを書物で知り絶句したのを覚えている。
 獣医師の西山ゆうこ氏のコラムによると、動物虐待の種類は、大きく3つに分けられる。

『動物虐待の種類』
  1. 直接的虐待
    動物に直接危害を加える行為。
    動物を打つ。投げる。蹴る。叩く。罵声を浴びさせる。焼く。切る。割く。撃つなど。
    肉体的、精神的な暴力を動物に行うこと。
  2. 間接的虐待
     動物に当然行わなくてはならない世話を怠り、動物に苦痛を与える行為。
    食料や水を与えない。つないだまま長時間放置する。非常に狭い檻に長時間監禁する。適切な運動(散歩など)を行わない。糞尿の始末をしないで不衛生な環境で飼育する。極端に暑い環境、極端に寒い環境。雨などを避ける小屋を与えない場合。
    動物が病気や負傷した場合に、医療手当を与えないという行為も虐待に含まれる。
  3. 混合型
     @とAの虐待を与える行為。
    (『http://www.tails-by-side.com/index.html』より)

 上記にあるように、動物を肉体的暴行することだけが動物虐待でないことがわかる。動物虐待の怖い点は、虐待の意識を持たずに、虐待を行っている可能性がある点である。飼主にとってはあたりまえの行為が、動物虐待の可能性を秘めていることすらある。

 また、獣医師の西山ゆうこ氏は、
 「虐待に対する意識の違いは、その人の人生観、文化宗教的な背景、経済状態、教養によって大きく左右される」とコラムに公表している。

『STOP!動物虐待!』http://www.geocities.jp/より
腹部の身は見え、後ろ足が片方ちぎれてしまった犬

STOP!動物虐待!

『STOP!動物虐待!』http://www.geocities.jp/より
腫瘍を放置された犬

STOP!動物虐待!


2−3 動物の愛護及び管理に関する法律

 動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)は、動物の虐待防止や適正な取り扱い方などの動物愛護に関する事項、人に対する危害や迷惑の防止などを図るための動物の管理に関する事項を定めた法律である。
 昭和48年9月に『動物の保護及び管理に関する法律』が議員立法で制定される。
 平成11年12月改正。名称を『動物の愛護及び管理に関する法律』と変更される。
 平成12年12月1日施行。平成17年6月改正。現在に至る。
 この法律の対象となる動物は、家庭動物、展示動物、実験動物、産業動物などの人との関わりのある動物とされている。また、罰則規定もある。みだりに動物を殺したり、傷つけたりすると、「動物の愛護及び管理に関する法律」により処罰される。動物虐待は犯罪である。

『警視庁ホームページより(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp)』

動物の愛護及び管理に関する法律(抜粋)
第二七条
愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2.愛護動物に対し、みだりに給餌〔じ〕又は給水をやめることにより衰弱
   させる等の虐待を行つた者は、三十万円以下の罰金に処する。
3.愛護動物を遺棄した者は、三十万円以下の罰金に処する。
4.前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
  一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
  二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺〔ほ〕乳類、
     鳥類又は爬〔は〕虫類に属するもの



2−4 畜産動物たち

 人間の定住がまだ始まったばかりの、今から約一万年前に人類は家畜を飼い始めたといわれている。初めは捕殺した親ウシの近くにいて離れない子ウシのような動物を連れ帰り、子供の遊び相手にでもしていたのだろうと考えられている。
 食糧不足のときに殺して食べるために連れ帰ったのかもしれないし、荷物を運ばせるのに便利だったので飼い続けたのかもしれない。
 あとから、乳を出す能力を利用するようになったのだろう。とにかく、動物を自分たちと一緒に生活するようにしむけたのが牧畜生活、家畜飼養の始まりだと言われている。家畜とはその生殖がヒトの管理のもとにある動物である。

 今、畜産業界への改善要求活動が静かにはじまっている。畜産動物たちへの福祉という観点である。「何をばかげたことを」と思う人は多いであろう。私もその1人であった…畜産動物たちは、人間に食材として提供されるために飼育される。そのため、いかに早く家畜を大きくさせ市場へ出荷させ、なおかつ安定した供給を促す産業である。効率良い収益体制を望み、外国産やブランド産といった食材が競いあう。価格競争が強いられる生産業界である。今、畜産動物の福祉という観点から畜産業界全体に一石が投じられている。

 英国では、『ヴィールクレート』と呼ばれる、体の向きが変えられないほど狭い枠でヴィール用子牛を飼育することを1990年に禁止。EU全域では2007年に違法になる。採卵鶏用バタリーケージはEUでは禁止されている。繁殖雌豚用ストール/クレート(体の向きが変えられないほど狭いオリや枠で雌豚を飼育するもの)は英国とスウェーデンでは禁止、フィンランド、オランダも後に続きEU全域に広がりを見せている。この広がりを支えているCIWFという団体が存在している。
 CIWF(コンバッション・イン・ワールドファーミング)とは1960年代に工場畜産が広がり始めたことに疑問を抱いた酪農家によって1967年に設立された英国政府登録の市民団体である。CIWFは畜産動物の福祉に関する基本原則をまとめている。

CIWF畜産動物の福祉に関する基本原則
(『ALIVE資料集NO13、畜産動物の福祉@』より)

動物を利用する農業はつぎの原則にそって行われるべきである。

  • 動物の健康を損なったり、痛み、けがを生じさせるようなシステムや慣行により動物を飼育するべきではない。
  • 動物はその動物が自然な行動を発現できるような方法で飼育するべきである。
  • 1頭だけ孤立させたり、多数を過密にした状態で飼育するべきではない。
  • 体の向きを変えられないほど狭いストール、またはゲージで動物を飼育するべきではない。
  • 多くの場合、動物は強い社会的本能をもっているので適切な社会群で飼育するべきである。
     ただし大きすぎる群れであってはいけない。
  • 床はむきだしのコンクリートやスノコではなく、適切かつ清潔な敷料(できればワラ)を敷くべきである。
  • 成長の早い品種、高収量の品種を用いることが動物の健康を損なったり動物に苦痛を与えることになる場合は、その使用を避けるべきである。
  • 治療目的ではない断節(断尾、断嘴など体の一部を切断すること)、手術や侵襲的な処置は避けるべきである。
  • 制限給餌法は用いるべきではない。動物には空腹を十分に満たせるだけの飼料を与えるべきである。

日  本   世  界(推定)
133万頭 1億4000万頭
1702万頭 11億7000万頭
5億8931万羽 291億羽
『畜産動物の一生』(ALIVE・VIDEO)より
農林水産省畜産統計(平成10年度版)


*第三章 動物たちの死生観

 元来、家畜やペットという動物はこの世に存在しなかった。大きな食物連鎖の中に人を含めた動物は、この地球上に同じ生命体として存在している。生命体たちには必ず死が訪れる。生まれた命の数だけ、死は必ずある。
 死ぬと、その死は誰かに食べられる。死を食べてほかの生きものがいのちをつなぐ。
生きているから、ほかの生きものに食べられる。死んでしまったら、こんどはほかの生きものに食べられる。
 シマウマは、群れがライオンに襲われても、少しも気にかけない。しかしゾウは家族が死ぬと、はっきりと悲しむ様子を見せる。死にそうなゾウを助け起こし、何とか立たせようとする。ついに死んでしまったことがわかると、木の葉や土をかぶせて何日もそばにいて守り続ける。
 また、ゾウの死体は滅多に発見されることがない。死ぬ時期がせまったゾウはひとり群れを離れて、どこか秘密の場所で、こっそりと死ぬのではないかと昔から人々に信じられてきた。そのような秘密の場所、ゾウの墓場を多くの人々が探したが発見できなかった。ゾウの墓場を見つけることが出来れば、たくさんの象牙を独り占めにでき、たちまち大金持ちになれる。しかし、ゾウの墓場などは実際には存在しない。ゾウの死体はいったいどうなってしまうのか?
 非常に歳をとったり、病気やケガで体が弱ったりして群れと一緒に行動を取れなくなったゾウは、たったひとりで、静かな森の中や、通い慣れた水のみ場に行ってそこで死ぬ。そして死体は腐り、ゾウの骨はもろいので、すぐに崩れて跡形もなくなってしまう。死んだ子ゾウと別れられなくて、死体をつれて歩くゾウも存在する。
 チンパンジーはグループを作って生活をしているが、自分たちの縄張りには絶対によそ者を入れさせない。縄張りをオスのチンパンジーが見張って歩き、よそ者を見つけたなら、とことん戦って追い払い、殺すことさえある。しかしチンパンジーの母と子の絆は深い愛情で結ばれている。ジェーン・グルードという動物学者の記録によるとフリントという名の8歳のチンパンジーは、母親の死を悲しみ、3週間後に母親が死んだ同じ場所で死んでいたという。(別の見方もある。いつもついて歩いて同じことをしていればよかった母親が動かなくなって、どうしていいか分からなくなり衰弱死したのではという説)
 18世紀の博物学者ステラーは、カイギュウの様子などを書いている。槍がささった仲間から槍を抜いてやろうとした。あるオスは殺された妻の死体から離れられず、何度も戻ってきたという。カイギュウに関する報告を残した学者はステラーの他に存在しない。その後何年もしないうちに、カイギュウは絶滅したからだ。
 ライオンやトラが子供を殺すのは珍しくない。グループのボスが交代した時、新しいボスが古いボスの子供を殺して食べてしまうことがある。サメの子供は兄弟同士で殺し合いをする。それもまだ産まれないうちに母親のお腹の中で殺して食べる。


3−1 生命体

 動物も人もこの世に生を得たからには、一生懸命に生き、死んで行く。動物も人も死を迎えた後、肉体の消滅は同じである。
 以下は偕成社より出版されている『死を食べる』よりの抜粋である。

キツネの死

ダニはキツネの血を吸って生きている。
それがキツネの死に気付いた途端、さっさと離れていく。
暖かい血のめぐらなくなった、キツネの死骸にはもう用はないというわけだ。

アスファルトの上の死骸は、そのままではただひたすら干からびてしまう。
土の上なら干からびない。
早速ダニたちと入れ替わりに、他の虫たちがやって来た。
目や口もとのやわらかく、しめった部分にたかっているのはハエ。
卵を産みつけに来たに違いない。

死肉の匂いを嗅ぎつけてきたのだろうか。
肉を食べるスズメバチも飛んできた。

キツネの死骸
10月30日
アスファルトの上から土の上に移す。
3日後さっそくハエたちが飛んできた。卵を産みつけているのだ。

死肉の匂いを嗅ぎつけた、ハエと前後してスズメバチが飛んできた。
キンバエやニクバエたちは目元や口のやわらかいところにたかる。

2週間後キツネの身体が少し膨らんできた。
2週間余り経つと、キツネの身体にはハエの幼虫のウジが山のように湧いていた。
産み付けられたハエの卵が孵ったのだ。
ウジたちは腹の中にもぐりこんで、やわらかく腐った内臓を食べ、やがて毛皮を食い破って溢れ出す。
このころ、腐った匂いは最高潮に達している。

2週間と3日がたった雨の日
ウジが毛皮を食い破って、キツネの死骸からあぶれだした。
1ヵ月後、ウジを食べるために、ハクビシンがやって来た。

キツネに湧いた無数のウジが、すべてハエになったら、
あたりはハエだらけになってしまう。
けれどもそんな心配はない。
こうしてハクビシンのような動物たちが、たくさんのウジを食べることで、
ちょうどいい数に減らしてくれるのだ。

キツネの身体はバラバラになり、骨が見えるようになった。
1ヶ月半後、この年最初の雪が降った。
凍ったキツネの肉を食べに、イノシシが姿を見せた。

ハエのウジがサナギになるころ、
キツネの死骸は、すっかり姿を変えていた。

毛皮は細切れになって地面にべったりと広がり骨は剥き出しになる。
キツネの死骸は、様々な生き物たちに、すっかり食べつくされてしまったのだ。
残された骨も、いずれはぼろぼろになる。

きっと骨を食べるバクテリアなどに少しずつ分解されて、跡形もなくなってしまうだろ。
半年後雪解けの頃、
キツネの身体は土に還ろうとしていた。

 人も動物も肉体の消滅は全く同じである。違いは人間の死体が放置され続けることを人間社会が許さないということだけだ。
 人間、ペット動物以外の生命体の死は、食べられることで、ほかの生きもののいのちにかわっている。



3−2 食物連鎖

 食べられる側の緑色植物を生産者という。光合成(または炭素同化作用)によって太陽光のエネルギーと地中・空中から取り込んだ炭酸ガスや窒素などの無機物を生み出す、いわば無から有を生みだすという意味で、生産者である。
 それを食べる植物食動物のことを第一次消費者という。第一次消費者が増えると、食物が増えたことになるのでこの第一次消費者を食べる生物、捕食者も増える。こういう動物食者を第二次消費者という。そして、さらにそれを食べる高次の捕食者が増える。こうして食物連鎖が形成され、上に積み重なってゆく。
 食物連鎖の頂点に立つ大型・中型の動物に対しては、これを食い物にする寄生虫や病原菌がとりつく。最後にはこれらのすべてを土に返し、植物の栄養を供給する分解者の役割をするバクテリアがいる。こうして生物界のエネルギーはぐるぐる回転することになる。
 食物連鎖の頂点に立つ動物は、自分を食べにくるより上の捕食者がいないので気楽に思えるが、捕食者によって数を制限されることがない分、限りある資源をめぐってお互いの競争が激化する。
 また、人間も自然生態系の一員として、食物連鎖の中で命がけの食物探しに出かけ、病原菌と闘っている。
 生物は食物連鎖を形成する輪の一つ、生態系の一員としてこの地球上に存在する。
 食物連鎖の頂点にいて捕食者のほとんどいない人間は、寿命の尽きるまで安全に生き長らえるかに見えるが、病気と闘い続けている。



3−3 同じ土俵

 我が者顔で地球上を闊歩している人間ではあるが、地球上に人間以外の動物や植物がいなければ生きていけない存在である。地球上の生物たちとまぎれもなく共存している。
 殺処分される動物の問題の原因は、人である。
 私は今回の論文を作成するにつれ、犬猫も人も、死んだ後の処理に大差がないように感じた。
 「人の死を犬猫と一緒にするな!」と言う人もいるであろうが、火葬され骨になる。また、同じ動物であるがゆえに放置されれば、悪臭を放ち、自然のサイクルの中で自然に還る。
 人と他の動物との違いは、社会が異なるだけである。人の社会は、死体が自然に還るまで放置できない社会だというだけのことだ。
 私は前回の論文でも述べたように、身元不明遺体に関する公益社内の業務に従事している。
 故人の人生を振り返り、語り部となる遺族が存在しない人々を、犬猫と同じだと言っているのではない。当然外見も違えば、社会も違う。何より人であることには間違いない。火葬するための制度もシステムも違う。犬、猫に対する憐れみと、見ず知らずの人の死に対する憐れみは共通しているのでは?と疑問に感じることが多々ある。
 ただ大きく異なるのは、人の社会で人を殺処分する時は人の社会が死刑を宣告した時だけであるということだ。
 動物の社会での殺処分とは食糧にする時以外にない。食糧のため以外に、同種が殺し合うのもまた人間の社会だけである。
 大きな生命体である地球に同じ生を受けるものとして、人間だけが唯一絶対である思い上がりに対する警告が現在はじまっている。BSEに鳥インフルエンザは人獣共通の感染症だ。
 環境への地球規模での取り組みは、人間のためにも絶対に必要不可欠であり、他動物の絶滅は因果応報の中では必ず、滅ぼした者たちへと返ってくる。自然界での共同体として歩むことは避けられない。他の生命体を食べなければ、どんな動物も生きていけない。我々はそれを知りつつ生命を日々戴いている。
 すべての生命に感謝し、我々の身体に取り込んだ生命と一体となり、環境を守り続ける使命が、一人一人にあるはずであり、責任ある行動をとることが、生涯食す生命体たちへの供養でもあり、食した責任でもある。


*まとめ

 序論で私が疑問に感じた警察署内で見かけた犬たち。あの犬をはじめとした迷い動物たちは、遺失物として落し物の扱いで、2週間警察署内で保管される。持ち主である所有者が発見されない場合、2週間後に飼いたいという人がいれば譲渡される。残念ながら貰い手が存在しない場合は、管轄の保健所へ預けられる。
 その後、大阪市内の場合は住之江区にある大阪市動物管理センターへ移される。
 移送後、すぐに殺処分という扱いではなかったことに、どこかでホッとした。
 現在は、毎日毎日殺処分など行ってはいない。抑留されている犬たちが沢山になり、尚且つ貰い手がない場合炭酸ガスによる窒息死処分が行われる。
 殺処分に要する時間は個体差によるが、10分〜12分だそうだ。
 処分機にかけられた犬や猫たちは、ダンボールに入れられ、マイナス20度の冷蔵庫で保管され数が溜まれば大阪市環境事業局へ渡される。処分機を見学した際、犬の首輪と鎖が処分機の横に吊るされていた。さらにその横に、作業員のものと思われる使い込んだ数珠が2房並んでいた。
 その昔は、捕まえ殺す施設であったが現在は、出来る限り殺処分より譲渡へ力を入れており成犬の再訓練にも取組んでいる。
 また、瀕死状態の犬が運び込まれることもあるそうだ。そんな場合は可能な限り治療をほどこし、助かる見込みがない場合は処分される。そんな時は処分機ではなく、注射での殺処分をするそうだ。
 行政も市民団体による生命を救う努力も虚しく、捨てられるペットたちはあとを絶たない。飼主の責任を果たせない人が多いのには驚かされる。可愛いだけではペットは飼えない。そんな背景が昨今、後を絶たない幼児虐待に通じているのでは…と危惧する点もある。
 また動物虐待という問題が想像以上に多いことを知った。動物虐待は犯罪である。しかし立件しにくい現状がある。ペット動物に関して死の判定は獣医師でなくても構わないのだ。飼主である所有者に委ねられているのである。当然、虐待死なのか?病死なのか?という判定する機関も存在しない。
 ペット動物に検視制度があってもおかしくないくらい、現在ペットの数は多い。しかも、狂犬病予防のための鑑札も犬のペット数と同じではないといわれている。日本でも狂犬病が発生してもおかしくない状況下なのである。
 生命の尊さを教える場でもある家庭で、ペットを虐待し、不要になったから捨てる。挙句の果てに学校では休日には、飼育動物にエサはやらずに休み前に多めに与えている。
 こんな状況下で、日本人にペットを思いやるやさしさや、生命の尊さを伝えることができるのか不安である。
 ペット動物の死因追求のための検視制度は、犯罪者を増やすだけかも知れないが、これからの日本人にとって必要なことなのかもしれない。

想定するペット動物の死因追求制度

想定するペット動物の死因追求制度


*あとがき

動物虐待は犯罪です

ご存知ですか?「動物の愛護および管理に関する法律」第27条により、犬や猫を捨てた者には罰金30万円以下の刑罰が、虐待したり、殺傷したり、エサや水を与えないなどした者には懲役1年以下、罰金100万円以下の刑罰が科せられます。もしも遺棄・虐待を目撃したら、最寄りの警察に通報して下さい。

動物福祉ネットワーク

 今回の論文作成にあたって、「どうぶつたちへのレクイエム」の作者児玉小枝氏の写真展を訪ねた。
 殺処分を前に脅えきった犬、何とかしてくれと叫ぶ犬たちが写されていた。写真から痛いほど悲痛な叫びが伝わってきた。その写真展の出入口の、自由に持ち帰れるビラの中に、一枚の張り紙(上記)があった。動物愛護法なる法律や、殺処分を減らすために沢山の人々が活動していることを今回の論文作成で知りました。
 アライグマは環境省が定める特定外来種であり、行政で決定している処分対象の動物。このアライグマのためにしてあげられることを真剣に考えに考えを重ねた結果…考え抜いたあげく不本意ではあるが、最後にしてあげることができるのが、「いかに、楽に殺してあげるか…」
 せめて意識のない状態にしてあげてから処分…を、麻酔が効いた後、無意識の中で炭酸ガスを…酸素等との割合で個体差が生じるため、動物にとっての安楽死であるかどうかを真剣に考えている人たちが存在していることに非常に心を打たれ、日本もまだ捨てたもんじゃないと強く感じた。本来法がなくとも、共通の道徳観であり、倫理観であったはずの日本人の優しさ。動物へのやさしさをきっかけに優しさを取り戻せるかもしれない。
 取材に協力していただいた皆さんへ心より感謝し、沢山の犠牲を払っている動物たちのご冥福を心より祈ります。



参考文献
  ALIVE ホームページ

ALIVE資料集

日本レスキュー協会 ホームページ

東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設 ホームページ

動物の不妊去勢と尊厳死を考える会 ホームページ

「STOP!動物虐待!」 ホームページ
  ペットと日本人     宇都宮 直子   文芸春秋
全国ペット霊園ガイド     MOKU出版
ペットの法律知識     法学書院
どうぶつたちへのレクイエム     児玉 小枝   日本出版社
ペットの福音     野村 潤一郎   岳陽社
ペットロス・ケア     ハーバード・A・ニーバーグ アーリン・フィッシャー   読売新聞社
いぬだす大阪限定@A     わんだふるネット著   メイツ出版
捨て猫を救う街     浅井 登美子   WAVE出版
犬の葬と供養     富所 義徳 著    国書刊行会
世界を変えるお金の使い方     山本良一   ダイヤモンド社
大阪府動物取扱主任者講習会テキスト
ヒトはなぜペットを食べないのか    山内 ヒサシ   文芸新書
もう牛を食べても安心か     福岡 伸一   文芸新書
進化しすぎた日本人     杉山 幸丸    中央公論新書
アネット・ティゾン&タラス・テイラー どうぶつビックリくらしかた     佐藤見果夢 訳   評論社
科学のアルバム17 野生ゾウの世界     あかね書房
死を食べる―アニマルアイズ・動物の目で環境を見る     著 宮崎 学   偕成社
罪なきものの虐殺     ハンス・リューシュ   新泉社
日本霊異記 上・中・下     中田 祝夫   講談社学術文庫
讀賣新聞 2005年11月までの紙面より
  大阪市動物管理センターの皆様
児玉 小枝 様
動物愛護 I 様 
成瀬 様