*序 論

葬儀屋は傲慢である。
なぜなら自分が買った経験の無い商品を売っているからだ。
自分の売っている商品を、一般消費者として購入した事がない。
車を買ったことの無い自動車ディーラーからあなたは車を買うだろうか?
それにもかかわらず葬儀社の広告には「お客様の気持ちになって」という言葉が踊る。

消費者は矛盾している。
元気なうちから葬儀のことを考えるのはいやだと言う。
人生の終末を考えるのはいやだと。
しかし生命保険には入る。これは人生の終末を考えてのことではないのか?

傲慢な葬儀社は、一般消費者の矛盾という弱みにつけこんで来た。
つけこむという表現が不適切なら「情報の非対称性(売り手が買い手より圧倒的に多くの情報を持っていること)が機会主義的行動を引き起こしている(Williamson1980 情報を意図的に操作し、わざと誤って伝えることにより自分の利益を悪賢い方法で追求すること)」状態であるというべきか。
しかし最近になって、消費者は矛盾を解消し始めた。

消費者は、葬儀と葬儀社に関する情報を欲している。
しかしマスメディアで流される「葬儀社の選び方」は、ほとんどが役に立たないか間違っている。
葬儀社側に都合のいい話や、業界に悪意を持つライターの文章で満ちている。
「式場論」「非合理的葬儀論」で述べたとおり、確かに消費者にとっては近所の葬儀会館を選ぶことが合理的なケースが多い。また葬儀社の厳密な比較を行うのは難しい。そのような消費者の現状に対して葬儀業界の人間は、もっと真摯に応えるべきではないだろうか。

 この論文では、巷の誤った情報による葬儀社の間違った選び方と、葬儀社の「使える」選び方を述べる。
第一章では葬儀社の間違った選び方を指摘している。
第二章では多くの葬儀社を訪問して得た体験情報に基づいて、葬儀社の正しい選び方を述べている。



*第一章 間違いだらけの葬儀社選び

実際葬儀社がパンフレットやホームページで紹介している誤った「葬儀社の選び方」を抜粋してその問題点を考えてみましょう。

葬儀費用の統計上の平均値を目安にする
 葬儀費用のベンチマーク(指標)で断トツによく使われるのが、財団法人日本消費者協会の発表する葬儀費用の金額ではないでしょうか。今朝読んだ日本経済新聞でも「日本消費者協会によると葬儀費用の全国平均は236万円」との記事が載っていました。この数字は2003年度の「葬儀についてのアンケート調査」をもとにしており、あらゆる媒体(時には葬儀社のパンフレットでも)で見かけます。しかし日本消費者協会の数字は信頼性に欠けます。

 理由は2つです。
@サンプル数が少ない
Aサンプリング方法に問題がある

 まず@について説明します。この日本消費者協会のレポートでは、地域別に金額を出しています。近畿地方の数字を見てみましょう。葬儀社に支払った平均費用50万円(飲食費用除く)。「ん、ずいぶん安いな?」とこの業界に籍を置く筆者は思ってしまいます。ちなみに山梨・長野・岐阜・静岡・愛知5県の平均費用は248万円です。さすが愛知県民は派手好きで、関西人は倹約主義…にしてはあまりにも金額の差が激しすぎるとは思わないでしょうか?タネを明かすと「近畿地方のサンプル数が1名(!)だから」です。年間数十万件の葬儀が近畿地方で行われているのに、サンプル数が1名!
 Aに関しても説明します。サンプリング方法は、直接日本消費者協会に電話をして聞いてみました。
 モニターが全国に1,000人いて、彼らに葬儀費用に関する質問をしたとのこと。回答数は335人。金額に関しては施主(葬儀費用を支払った人)以外に伝聞した人が回答した金額(つまり払った経験のある人から聞いた金額)もサンプル対象としたとの回答でした。つまり@Aから考えると以下のケースも成立することになります。
 私が大阪の葬儀費用を知りたいと思ったとします。そこで大阪の叔母に電話を入れます。「おじいちゃんの葬儀費用いくらだった?」「んー、市民葬やったから50万円位かかったて、おばあちゃん言うてたなぁ」「うん、分かった」それで私が葬祭研究所の上司にレポートを出します。「近畿地方の平均葬儀費用は50万円です」次の日から私は、コピーとお茶汲みだけをやらされることになるでしょう。@Aから考えると消費者協会のデータの正確性はこんな感じです。
 適正なサンプル数は、どこまで誤差の範囲を認めるか?によっても異なるのですが、テレビの視聴率調査を例に挙げると関東、関西それぞれ300世帯をモニターにしているそうです。
 上記の問題点を、日本消費者協会に問いただしてみました。返答は「確かに地方別では正確性にはかけるが全国平均値を見て欲しい」とのこと。それにしても4年前に発表した前回の葬儀費用総額の数値(2,287,000円)よりも現在の方が値上がりしています。このデフレと老人人口増加の世の中で。全国平均もおそらく実体より高い金額が出ています。
 なぜそう言えるかというと筆者の所属する葬儀社の葬儀平均単価の数字が手元にあるからです。当社は関西と関東に営業拠点を持ち、社葬から火葬のみの葬儀まで年間9,000件ほどの施行を行っています。当然そこから導かれた数値の方が実態に近いはずです。企業秘密なのでいくらかは言えませんが。
 私が心配するのはこの日本消費者協会の発表する数値が、葬儀社による葬儀費用引き上げのネタに使われていることです。ホームページなどで「全国平均に比べて当社はこんなに安くできます」と謳っている葬儀社が多くあります。できるのは当たり前です。全国平均が間違っているのですから。逆に日本消費者協会の発表する全国平均並みの価格でしか施行できない葬儀社を選ぶことはやめるべきです。
 もう日本消費者協会の数字を根拠にするのはやめましょう。
 最も信頼されていた葬儀の平均価格の統計は、消費者のためではなく、実は葬儀社のために使われていたのです。

電話帳で選ぶ
 近所に葬儀社が存在することは分かるでしょう。しかしそれ以上のことは何も分からないでしょう。

自宅の近くにある

 上記と同じでこんな理由で選んではいけません。

自分自身で確かめる

 どのように確かめるかを示さないと役に立ちません。
心付けを要求しない葬儀社を選ぶ
 当たり前です。心付けを要求する葬儀社などは近年珍しいのではないでしょうか。これがアドバイスと言えるのなら「パンチパーマの社員がいない葬儀社を選ぶ」というアドバイスも成立すると思いますが。

店舗を持って、長年営業している

 長年やっているところは信用できるということなのでしょう。
 一理あるかもしれませんが、葬儀業界は現在変革期にあり、現在の視点から見れば過去のレベルは低かったと思います。低レベル(高い価格、低いスキル)でも十分やってこられたというのが現実です。つまり長くやっている=高レベルとは言えないと思います。歯医者などは経験によるスキルを技術革新が上回っており、ベテランよりも新進の歯医者の技術力が高いということは珍しくありません。今後も淘汰が進むはずです。

豊富な経験と実績を持つ葬儀社

 豊富な経験と実績を持っているかをどう判断するのでしょうか。葬儀社自身の自己申告では信用できません。また豊富な経験と実績を持っている→長期間たくさんの葬儀を施行している→良い葬儀社である0と必ずしも言えないことは前項の内容の通りです。

業界団体に加盟している葬儀社
業界の上部団体に加盟している葬儀社は、経済産業省の指導のもとで営業しており、消費者にとっての安心と信頼を担っている
 こういってはなんですが団体に加盟していてもひどい業者は、現場でたくさん見てきました。闇金融ではないから金を借りても安心と言うのと同じ理屈です。互助会の互助会制度は経済産業省の許可を得て営業しているというだけです。別に厳しい許認可制度があるわけでは無く、ましてや上部団体(?)が指導のもと云々ということもありません。

実際に葬儀をした方々の評判がよい

 確かにこれは大事でしょう。しかし都市部のように地域共同体の繋がりが弱いところでは、なかなか口コミ情報を得るのは難しいのです。また実際に葬儀をされた方の評価も、葬儀という商品を何度も買って比較したわけではないので、相対的評価ではなく絶対的評価に過ぎません。

小さい葬儀屋にする

 これは業界をレポートしたある本から抜粋したのですが、どうも大きいところはあくどく稼いでいるから大きくなった、小さいところは親身になってやってくれるから良いという論旨のようです。これでは町の旅館より外資系ホテルのサービスは劣るといっているようなものです。もちろん小さくても良い葬儀社はあるのでしょうが、大きいところの方がクオリティの安定したサービスを供給できるという理論上のアドバンテージがあります。
 3人で月間30件を施行するところより、30人で300件施行するところの方が安定したサービスを供給できるのです。この仕事はいつ依頼が来るか分からないので24時間人を置いておかねばなりません。いつ依頼が来るか分からないという不確定要素に大きなコストを払っています。不確定要素=リスクへの対策には何が有効でしょうか。「リスクの分散」です。3人に分散するより30人に分散したほうが、人的シフトの組み換えが流動的に行える分、安定した人材供給ができます。3人のところは一度に4件仕事の依頼が来たときにはどうするのでしょうか。おそらく人材を外注するはずです。質の低下とコストの増大を招きます。アウトソーシングといえば聞こえはいいのですが、外注しても基幹部分の人材の質が変わらないというなら、その葬儀社の質自体に問題があると考えるべきです。

事前に明確な見積書を作成すれば最も安い業者を選べる
セット価格はお得である
(筆者注:この節は若干筆者のポジショントークになっています。御了承ください)
 たしかに事前に明確な見積書を作成するのは基本的には正しいです。と言うよりも必須事項でしょう。
悪質な葬儀社に会う可能性は低くなります。(悪質なところは見積書を作成しないですから)
 しかし正直なところ事前に見積もりを作成しても、悪質な業者は排除できますが、余程の検証能力がない限り最安値の葬儀社を選べるわけではないと思います。
 なにしろこの章の冒頭で述べたとおり、世間で最も信頼されていた葬儀の平均価格の統計が間違っていたことからも分かるとおり、真実は見えにくいものなのです。
 「葬儀価格は不透明だ。我々は適正価格だ」という葬儀社が増えてきました。ホームページなどで自社の情報を発信することはいいことです。供給側と需要側、双方の情報格差がなくなるほど価格は適正に収斂します。しかし価格の適正さを強く謳っている企業が本当に安いのでしょうか。相手の主張を鵜呑みにせず疑ってみる必要があります。たとえば「セット価格だから安い」という主張があります。セット価格を売りにする新興葬儀社を、2社ピックアップして検証してみました。果たしてセット価格は安いのでしょうか?
 下図の葬儀費用の価格比較を見てください。

火葬のみで費用を抑えた場合の価格比較
病院にて納棺後→自宅に安置→火葬・拾骨 〜葬儀見積り例〜一般価格で比較
内  容
詳  細
公益社
H 社
葬儀基本セット 火葬のみ
100,000
 
寝棺
50,000
 
防腐処置 ドライアイス
16,000
(2日分)
車両費用 寝台車
12,600
(病院〜自宅)
  霊柩車
25,900
(〜火葬場)
遺影写真  
20,000
四つ切サイズ
  お別れ花
5,000
 
  消費税
¥11,225
 
  小計(葬儀社支払い分)
¥235,725
 
火葬場支払い分 火葬料金
48,300
 
  収骨容器一式
12,075
 
  控室
22,575
 
  小計(斎場支払い分)
¥82,950
 
  総額
¥318,675
¥500,000
 
公益社
A 社
100,000
 
50,000
 
16,000
(2日分)
12,600
(病院〜自宅)
12,600
(〜火葬場)
   
   
¥9,560
 
¥200,760
 
48,300
 
12,075
 
22,575
 
¥82,950
 
¥283,710
¥500,000

 適正な価格と言っておきながら個別の商品の値段を示していないので、良く分かりません。仕方がないので個別の価格を提示している公益社の価格とほぼ同条件(項目別に安い物で計算しました。棺など異なる品物も何点かはありますが最安値のものを選んでいます)で比べてみました。

最も低価格な通夜・葬儀プランでの比較
〜葬儀見積り例〜一般価格で比較
内  容
詳  細
公益社
H 社
葬儀基本セット 祭壇
300,000
 
寝棺
50,000
 
防腐処置 ドライアイス
16,000
(2日分)
車両費用 寝台車
25,200
(病院〜自宅〜火葬場)
  霊柩車
15,000
場内搬送
遺影写真 遺影写真
20,000
四つ切サイズ
飲食費 通夜ぶるまい
15,000
(5名分)
  精進落とし
15,000
(5名分)
  礼状
 
 
  消費税
¥21,310
 
  小計(公益社支払い分)
¥447,510
 
火葬場支払い分 火葬料金
48,300
 
  収骨容器一式
12,075
 
  控室
22,575
 
  小計(斎場支払い分)
¥82,950
 
  総額
¥530,460
¥750,00
 
公益社
A 社
300,000
 
50,000
 
16,000
(2日分)
15,300
(病院〜自宅)
12,600
(〜火葬場)普通車
 
 
8,000
礼状100枚
¥19,695
 
¥413,595
 
 
 
¥12,075
 
 
 
¥12,075
 
¥425,670
¥1,000,000

 「セット価格は必ずしも安くない」ということがお分かりいただけるでしょうか?
 前近代的な葬儀業界を変革するといいながら、戦前から営業している会社(公益社)と変わらないか、それ以上の価格という結果はどうかと思います。ここまでの細かい比較は一般消費者には難しいでしょう。なぜなら個別に単価を示していないからです。マクドナルドがセット価格を安いとアピールするのは、単品価格も表示しているからこそ説得力があるのです。ということはセット価格のみ表示して単品価格を表示しないというのは、セット価格にして故意に分かりづらくしているのだといったら言いすぎでしょうか?そもそもセット料金が安くなるのは、より多くのものを購入してもらえれば結局売り手の得になるからでしょう。消費者の無知につけ込んだ「偽善」や「詐欺」という言葉が筆者の頭には浮かびます。
 業界を変えると主張するのはいいことだと思うのですが、中身が伴わなければ不誠実です。
 いや、それとも葬儀費用が高いのはさぞかし価格に見合う素晴らしい人材を揃えていらっしゃるのでしょうか。ならば価格に関してではなく人材を誇るべきなのです。
 もちろん上記で選んだ業者は旧来の葬儀社に比べれば、ずっと良心的な価格だとは思います。ただ「犯罪歴がないから私は善人だ!」ということを声高に叫ぶ人はやはり不愉快です。
 その葬儀社が適正価格を謳うのであれば、どういうビジネスモデルゆえに適正価格なのか検証が必要です。自己申告の「適正価格」を鵜呑みにしてはいけません。
 適正な消費行動をする消費者のもとでは、適正な供給が行われます。日本国内のホテルの宿泊料が、ほぼクオリティに見合ったものになっているのをみれば理解いただけると思います。ちなみにインドのマドラスでは外国人の金持ちがでたらめな出費をするため、ホテルの宿泊料とクオリティのバランスは、でたらめになっていました。まだ日本の消費者の多くが葬儀に関しては、マドラスの金持ち状態です。
 (消費者が適切な選択をすれば)葬儀価格の低下は、適正価格近くで逓減的に下げ止まります。(なぜかは「補論1:葬儀価格の構造について」を参照)
 質を落とさない画期的な葬儀価格のコストダウンというのは難しい、と筆者は考えています。実際「なるほど」とひざを打つような価格に関するビジネスモデルには、お目にかかったことはありません。暴利を貪らないまじめな商売するくらいしか大幅なコストダウンの方法は思い浮かびません。適正価格の葬儀社は画期的なビジネスモデルがあるのではなく、結局のところ暴利を貪っていないということなのです。(この業界ではその程度でも十分「優良企業」なわけですが)
 耳障りのいい言葉にだまされず、イメージでなく冷静に比較しましょう…といっても消費者にとってはそれが難しいと思います。上記の表のような細かい比較は不可能でしょう。しかし先ほど述べたように、ある程度の価格までくれば、葬儀価格は逓減的に下げ止まります。そこまでは葬儀社を絞り込みましょう。そのラインまでくれば数万円単位の安さを比較するのではなく、後はサービスの質などで比較判断した方が良いのではないでしょうか。その判断の仕方は第二章で述べています。

(補論1:葬儀価格の構造について)
 葬儀のハードの価格に関して言えば、祭壇のレンタル代と棺に大きな利益を乗せているところが多いと思われます。「非合理的葬儀論」でも述べましたがこの二つの項目は、消費者が価格予想し辛いからです。仮にこの部分に法外な利益を乗せないとすれば、それほど葬儀費用の総額に極端な差はつかないはずなのです。なぜならこの二つのハードの項目以外では、葬儀のコストの中で人件費の占める部分が大きく、人件費には市場原理(=競争原理)が働いているからです。消費者が葬儀社を選ぶ際には市場原理はなかなか働きませんが、葬儀業界で働く人の収入に関しては市場原理が適正に働いているのです。なぜなら規制も無く人材が流動的だからです。一般的な規模の葬儀であれば一人の担当と数名のサブスタッフで施行されます。無宗教葬をのぞけば葬儀の様式も殆ど変わりません。また大手であろうが零細であろうが担当が一人責任者として施行する構造が多いです。そして殆どの葬儀担当が打合せ、設営、司会などゼネラリストとしてのスキルを持つ傾向にあります。ですから勤め先を変わっても、担当としてのスキルをそのまま使えるわけです。料理人と同じといえば分かりやすいでしょうか。料理人が、より良い労働条件を求めて勤め先を転々とするように、この業界も人材は流動的です。通常規制が無く、人材が流動的であるならば競争原理が働き、人件費=賃金はスキルに応じた物になるはずです。安い賃金でも働くとしたら通貨の弱い国の労働者か、他で雇ってもらえない人材です。慣習、文化が大きく関わっているこの仕事では海外の方は使えないでしょう。だとしたら優秀な担当者が、安い賃金で働いているということはあり得ないのです。結局葬儀費用で多くを占める人件費は、クオリティに見合ったものになります。例外的に駄目な担当者が(社内不正をはたらきながら)高い収入を得ている悪質なケースはあり得ます。しかしそのような間違った部分は、今後淘汰されるでしょう。淘汰のスピードは、消費者ができるだけ適正価格で葬儀を購入する、ということにかかっています。

式場を持たない業者は葬儀価格のコストダウンが可能
 自社会館を持たず、一般の貸し式場のみを使うことによって自社会館にかける費用が浮く、その結果葬儀費用のコストダウンができる、という理屈です。しかしこの理屈はよく考えればおかしいことに気づきます。通夜葬儀を行うには式場は不可欠です。都市部では自宅での葬儀が物理的に難しい以上、遺族は一般の貸し式場に、お金を払わなければなりません。葬儀社に払うお金も、貸し式場に払うお金も遺族にとっては同じお金です。例えばトヨタ自動車が「車にフロントライトをつけないことにしてコストダウンに成功しました」と言ったらどうでしょう。結局消費者はパーツ屋でフロントライトを買わなければいけません。これはコストダウンというのでしょうか?
 また消費者が葬儀価格を適切に評価することができなければ、コストダウンを葬儀価格に反映させずに葬儀社側の利益にすることも可能なのです。こういうギミック(仕掛け)に引っかからないようにしましょう。

1級葬祭ディレクターが多い会社を選ぶ
 1級葬祭ディレクターとは……(葬祭ディレクター技能審査協会ホームページより抜粋)
 「葬祭ディレクター技能審査協会は、葬祭業界に働く人々の技能振興を目的とし、平成7年に設立されました。日本では、葬祭従事者にとって資格取得の義務はありませんが、マスコミや消費者などから信頼の指標として高い評価を得ることができました。平成8年8月に第1回を実施した葬祭ディレクター技能審査試験は、本年で10年目を迎えることになります。受験者総数は延べで約18,500名を数えました。平成16年までに送りだした葬祭ディレクターは1・2級あわせて約12,000名になります。また、2級取得者が1級に挑戦し、合格した数は約1,250名となっています。特に広範囲な知識と習熟した技能をもっていると認識された1級取得者が平成16年までに6,921名を数えました。このことは生活者の方々が葬祭サービスを受けるにあたって、高いレベルの葬祭サービスを安心して受けられる度合いが大きく高まったことを示しています。試験内容は、専門知識はもとより、技能においても、設営・運営に関するものだけではなく、お客様に適切な対応ができるかを評価するものとなっています。」
 ちなみに筆者も、この資格を持っています。
 この選び方の問題は、1級葬祭ディレクターが多いということをどのように確認するのか?という点です。従業員が、葬祭ディレクターのIDカードを着用しているところもありますが、殆どの場合、その会社に聞いてみるしかないでしょう。さらにその数が本当かどうか分からない。あとその会社の全社員数に対する比率も問題になります。
 また自分が葬儀の依頼をするときに、1級葬祭ディレクターが担当になってくれる保証はありません。
 さらに根本的な問題として「1級葬祭ディレクター=良い担当」か?という問題です。多分相関関係としては「難関医大出身=名医」くらいのものではないでしょうか。無関係ではないけれども…という感じです。もちろん知識が不足していれば、いくらホスピタリティがあってもだめですが(ただしホスピタリティがある人は知識も得ようとするので「ホスピタリティはあるけど知識は無い」という人はいないと思います。もしいるとしたらその人はホスピタリティもないのです。)知識があるから良い担当というわけではない。アメリカでの調査ですが、良い精神科医の最も必要な要素は、医学知識ではなくパーソナリティであったそうです。ましてや1級葬祭ディレクターの数が多いからといって、良い葬儀社であるとは必ずしも言えないわけです。

 いろいろ述べてきましたが、この章で言いたかったのは、このように葬儀社選びは難しいということなのです。ではどのように選べばいいのか?文句ばっかり言っていると思われても何ですから、次の章では葬儀社の「使える」選び方を述べていきましょう。



*第二章 葬儀社の「使える」選び方

1.霊安室論〜霊安室で葬儀社を選べ〜

葬儀社選びのポイントは「霊安室」です。
霊安室は、その葬儀社の全体(ハード及びソフト)のレベルを表しています。
葬儀社の比較が難しいことは何度も述べてきました。
 事前相談が必須なのは認知されつつありますが、結局どこを見れば良いのか分からない人は多いと思います。式場を見たところで、広い部屋に椅子と祭壇が置いてあるだけで、そんなに違いは分からない。そこのサービスが優れているかどうかは短時間では分からない。ではどうすればいいのでしょう。

 以前、病院のトイレだけを調査して病院ランキングを作成した企画を、何かの本で見たことがあります。医者の得意分野とか置いてある最新医療機器とか看護士の対応とかは、一切関係無し。トイレの清潔度やバリアフリー度などを検査項目としていました。つまりあまり目立たないが、かならず患者が使うトイレが良い病院は、きっと治療も設備も対応も良いに違いないというコンセプトに基づいていた訳です。
 この病院のトイレに相当する部分が葬儀社(葬儀会館)の霊安室ではないか、と考えました。式場などと比べてすぐ目につく部分ではないが、最後に遺族が故人と落ち着いて過ごす大切な空間です。今後、死亡者数の増加の問題と住宅事情の問題などで、霊安室の需要はさらに高まります。そしてこのような流れの中で多くの葬儀社が、自社の式場や霊安室を所有せざるを得ない状況です。しかし現在は遺族がお別れまでの大切な時間を過ごす場所というよりも、遺体安置空間の確保という目的が、優先されているのが現実といえます。霊安室が良い(空間上のハード部分だけでなく運営上のソフトに関しても)葬儀社はきっと式場を含めた施設やスタッフの対応も良いのではないかと仮定したわけです。霊安室を見れば、その式場からサービスの良さまでが分かるのです。ポイントは「霊安室を見ろ」ということです。
 葬儀に関する素人の方(ほとんどの人がそうなのですが)が式場全体やスタッフの質に関して評価を下すのは難しいと思います。しかしチェックポイントに基づいて霊安室だけ評価するなら、5分もあれば簡単にできます。
 もちろん自宅安置の予定で、霊安室は使わない方でもこの方法は使えます。そしてこの仮説が実際に有効かどうか実証するために、葬儀社を訪問して調査しました。
 調査結果を発表する前に「霊安室」の歴史と現状に対するお話をします。次節では戦後から現在までの死亡場所の変化を説明し、霊安室の現状を述べています。



1−1 霊安室の現状


死亡場所と霊安室(2001年5月17日火葬研究会講演資料より抜粋
 まず死亡場所の変化を考えましょう。
 1960年の段階では、病院死亡者が全体の約2割、自宅死亡者が7割です。これが1980年になると病院死亡者が全体の約5割、自宅死亡者が4割と逆転します。最新のデータでは病院死亡者が全体の約8割、自宅死亡者が1割強となり、圧倒的に病院で亡くなる方が多くなりました。(厚生労働省のホームページより)
 最初に死亡場所の変化の要因を分析したいと思います。
 まず戦争が終わって戦後のベビーブームが起こり、人口が増加し始めます。この頃生まれた人たちが2038年まで増加する死亡者人口の中核を形成しています。時期を同じくして戦後の復興が起こります。これに伴い大都市で労働力の需要が発生します。このため多くの人が地方から上京し始め、都市部への人口流入が起こります。その結果まず地縁血縁関係の喪失、共同体の喪失が起こります。近所に親戚はいない。また隣にどんな人が住んでいるか分らないという状態です。
 これと同時に家族の少人数化つまり核家族化が起こります。
 都市の人口はどんどん増えていきますが、埋め立てを除いて土地が増えるわけではないので、地価の上昇に伴い持ち家率の低下という住宅事情を生み出します。バブル経済とその崩壊を通じてその傾向は一層強まっていきました。これは病人を自宅で看病できる場所がないということを意味します。
 またベビーブームの後、経済的発展に伴い生活水準は向上し、女性の社会進出に伴って出生率の減少(看護者の負担増)が起こりました。つまりベビーブーム世代より後の世代は少子化が進むわけで当然老人一人あたりの介護者数は減少し、介護者の負担は増加します。そこに医療技術発達による延命治療がさらに老人人口の増加に拍車を掛けます。
 やがて家庭内で看護を行わず病院などの外部に看護を委託するケースが増えてきます。外部に看護を委託するコストの方が安くなったということでしょうか。
 妻が夫の親の面倒を看るというかつてのイエの文化的慣習的束縛が、減少してきたことも挙げられると思います。その結果病院で死亡する傾向がどんどん強まりました。

 ではあなたの肉親の誰かが病院で亡くなったと仮定します。まず反射的に葬儀の式場のことを考えると思います。しかしあなたが最初に直面する問題は故人の安置場所です。
 戦前、戦後直後はシンプルでした。自宅で家族に見取られて亡くなり、そのまま地域共同体=ご近所の助けを借りて自宅で葬儀をすればよかったのです。
 さて、あなたはどうすれば良いでしょうか。いつまでも病室に安置していられないのはお分かりかと思います。また東京都内においては、亡くなってから式を執り行うまで多少日数がかかることが多いということを認識してください。理由としては@増加する死亡人口に対して火葬場や式場の数が十分でないA地方の親戚が上京するまで時間が必要Bお墓がある菩提寺が地方にあるため寺院の都合で日程を調整する必要があるなどが挙げられると思います。

 いつまでも病室に安置していられないという逼迫(ルビ=ひっぱく)した状況を考えると、式場をどこにするかよりも、遺体を何処に安置するかという問題のほうが重要なのです。また葬儀社とのファーストコンタクトが起こる可能性も高く、「式場論」冒頭で述べた心理的安定、時間、情報の制限を強く受けるという点でも重要です。
 現実問題として死亡場所と式場をつなぐ空間として遺体の安置場所、つまり霊安室の存在が実は重要なのです。

下記に安置場所の選択肢とその長所短所をまとめてみました。

 
長  所
短  所
病院霊安室
無料 霊安室自体が無い病院がある
病院出入りの葬儀社の勧誘がある
時間制限がある
保冷設備がないところが多い
自宅
(一戸建て)
故人遺族の思い入れ(最後に一度は自宅に寝かせたい)があった場合応える事ができる
近所の人が弔問し易い
納棺後、棺が出せない場合がある
密葬がしづらい
マンション
アパート
故人遺族の思い入れがあった場合応える事ができる
近所の人が弔問し易い
納棺後、棺が出せない場合がある
密葬がしづらい(但し都市部では近所づきあいの機会が無いので意外と可能)
葬儀社霊安室
又は
式場内霊安室
弔問場所と生活空間を分離できる
式場までの移動が簡単である
有料の場合が多い
どこの葬儀社も持っているわけではない
火葬場霊安室
  有料
事前に納棺が必要
面会に制限(主に時間帯)がある

 病室で亡なってから最初に安置されるのが病院の霊安室です。小さい病院では霊安室が無いところも多くあります。無い場合、葬儀社の人間は直接病室に伺うことになります。
 霊安室は大病院でも多くて3室位でしょうか。短所の1つとしては安置に時間制限があることです。次に亡くなる方がいるかもしれないので、ずっとその部屋を独占することはできません。また保冷設備を備えている病院も少ないので、その点からもずっと安置しておくということもできません。せいぜい1晩というところでしょうか。実際はお亡くなりになった段階で、看護士さんから遺族の方に「葬儀社はお決まりですか?お決まりでしたら連絡して車を呼んでください」という話が出るケースが多いと思います。

 次に病院で亡くなって自宅安置をするケースを考えてみたいと思います。
 自宅での安置の長所を述べます。亡くなった方の病院生活が長かった人の場合、遺族の方はどうしても1度は自宅に安置したいと思うのは自然な事だと思います。また、自宅に安置していると近所の方が弔問し易いという点が挙げられます。
 ただし、それはそのまま短所にもなります。最近の密葬の増加からも分かるとおり、亡くなったことを近所に知られたくないという方も多いのです。
 そんな方の場合、自宅前で遺体を運ぶ車が止まり、遺体の搬入、搬出を行うのはあまり好ましくないのです。また当然のことですが自宅つまり一戸建ての家を持っていないと安置できないということです。

 次にマンションやアパートで安置する場合について考えてみたいと思います。
 まず長所に関しては自宅とほとんど変わりません。故人や遺族の思いに対して答えることができますし、近所の方が弔問し易いということです。
 短所はマンションやアパートの方の場合も近所の方が弔問し易いということ=密葬が難しいということです。ただし都市部のマンションやアパートでは近所付き合いの機会がほとんどないため、意外と何の影響も無かったりします。
 もう1点は自宅よりもさらに物理的な制約の多いことです。
 当然遺体を安置するだけの部屋の広さがあるのが前提条件ですが、最初に直面するのはエレベーターの問題です。病人やご遺体を運ぶ時のことを考えて作られたエレベーターは下のハッチが開くようになっており、そちらの空間に長さ2メートルぐらいのストレッチャーを差し込むことができます。エレベーターがそのような構造でない場合、非常階段などを使って遺体を階上にあげる必要があります。高級マンションでも意外とストレッチャーの収容スペースがない場合があります。また部屋の玄関の構造によりストレッチャーが入らない場合があります。そのような場合、葬儀社は遺体を抱きかかえて運ぶかもしくは布状の担架を使います。

 次に葬儀社が所有する霊安室についてお話しします。これは霊安室を単体で所有するというよりは、葬儀社の持つ葬儀会館内にあることが殆どです。葬儀社が持つ霊安室の1番の長所は、外部からの弔問場所もしくはご遺体の安置場所を生活空間から分離することができるということです。遺族の方は長期間の看病による肉体的ストレスと肉親を亡くしたという精神的ストレスにさらされています。このような状況で弔問の方が自宅に訪れる場合は、遺族に対して疲労を与える可能性があります。葬儀業者の霊安室であれば弔問の方は自宅を訪れる必要がありません。もし遺族が付き添いに疲れたなら、そのまま自宅に戻って休めばいいのです。遺族が不在でも、遺体の管理、弔問者の誘導は葬儀社が行います。さらに長所をつけ加えるならば、葬儀会館内にあるので式場への移動が簡単であるということです。欠点は必ずしも自宅の近くにあるとは限らないということと、有料であることが多いという点です。

 次に火葬場の霊安室について説明したいと思います。
長所としては、葬儀は執り行わず、火葬のみをする方もしくは火葬場に隣接する斎場を利用する方にとっては移動が簡単であるということです。
短所としては、保冷庫に入れるには納棺する必要がある事です。安置の方法としては、早く到着した方から優先的に保冷室で預かって、保冷室がいっぱいになると柩にドライアイスを入れて、柩を並べて安置するというケースが多いです。
 又、数日間遺体を預っている場合、遺族が霊安室で面会を希望する場合があります。この場合も面会時間が制限されていて昼間は会えないというところも多いです。というのは火葬場側としても「勝手にどうぞ」というわけにもいかないですから、ずっと遺族に付き添う職員が必要なわけです。昼間は火葬で忙しいので、火葬場としても昼間はそこまで面倒は見られないというのが実情です。
 霊安室の構造も、コンクリートやタイル張りの殺風景な物で、そこに他の喪家の柩もずらーっと並べられている状態で、とても故人の生前を偲ぶという状況ではない場合が多いです。正直なところ、物理的な機能上安置場所を提供しているに過ぎません。
 以上が「霊安室の現状」です。図式化したものを載せておきます。

死亡・安置場所の変化


1−2霊安室ランキング

・調査方法について
 推論を実証するために事前相談者を装って20箇所ほど葬儀社の式場(というより霊安室)を回りました。対象葬儀社は会館所有数全国ランキングの上位を、中心に選びました。また都内では私の顔を知られている危険性があるので、都内の調査件数は少なくなっています。
 霊安室の評価と、式場(とそれを所有する葬儀社)全体の評価の相関関係を検証するため、まず霊安室に対して細かいチェックポイントを作成して得点化しました。これを「霊安室スコア」と呼ぶことにします(詳しくは次項参照)。最後に式場全体の評価をハードとソフトに分けそれぞれ3段階(○、△、×)で評価しました。ハードに関しては式場が豪華だから良いというわけではなく、プロである私の目から見て(という表現も恥ずかしいのですが)「動線」「キャパシティ」「使いやすさ」「適切な広さ」などの視点から判断しました。
 ソフトに関してもスタッフの対応を「ホスピタリティ」「知識」「言葉遣い」「身だしなみ」などの観点から同じく3段階評価で採点しました。これも3段階評価で細かい得点化はしていません。
 当初全体の評価も細かくチェックポイントを作って得点化して調査していたのですが、@業者の良し悪しの差がはっきりしていたので細かく得点化するのは無駄と感じたA3段階の総合評価ランキングとチェックポイントを数値化したランキングと差が殆ど無かった(対象が同じですから当然と言えば当然ですが)以上2点の理由から3段階の印象点で、全体の評価を下しました。
 次に霊安室の調査の評価項目と、その設定意図の説明をしたいと思います。

 まずはハードに関する項目からです。最初は弔問しやすさ、つまり「アクセスの問題」です。霊安室のメリットとして弔問と生活空間の分離が可能と述べました。つまり弔問者を自宅に呼ばなくてもよいというメリットです。それを生かすには遺族だけでなく、外部の方も弔問しやすい立地条件でなくてはなりません。駅から徒歩5分以内を5点、駅から5分以上で喪家あたり駐車場10台以上を3点としました。駅から徒歩5分以上駐車場10台以下なら1点です。
 霊安室の最後のお別れの時間を「満足して過ごしていただく」というコンセプトはホテルと全く同じだと思います。そこで部屋の広さの項目を加えました。どれくらいの広さを適正とするかは難しいところです。考え方としてはまず遺体の安置スペースとして1畳分、枕元の仏具、枕花、焼香する人が座るスペースとして1畳分必要になりますので、残りがフリースペースになります。となると部屋の広さが4.5畳ではテーブルすら置くことができません。6畳ぐらいでテーブルが置けて8畳あれば一家族分(4〜6名)が座ることができます。あまり広すぎるのも付き添いが1人のときなど落ち着かなくなってしまいますが、実際そこまで広い霊安室は珍しいと思います。そこで8畳以上は5点、4.5畳以上8畳未満は3点、4.5畳未満は1点とします。

部屋の広さは十分か?

「霊安室の室数」について
 これは式場の施行件数と式場数のバランスが関係してきます。よって式場数と同じかそれ以上の霊安室の室数があれば5点を加えることとします。式場が2つあるのに霊安室が1つというのは霊安室が不足していると考えます。

「内装」について
 ちょっと主観的な項目かもしれません。しかしひどいところになるとコンクリートの打ちっぱなしや、そこまででなくとも会議室のような部屋が多いのも事実です。落ち着いた内装であるか否かを評価基準とします。
「長期間の遺体安置」について
 特に首都圏では通夜まで数日間、年末年始を挟むと1週間近く安置することも珍しくありません。昔は早い段階で納棺してドライアイスを毎日取り替えるというのが一般的でした。10年ほど前からカプセル型の保冷庫が使用されはじめました。(下段画像参照)現在はエンバーミング(遺体衛生保全)を施す葬儀社も存在します。ドライアイス以外の長期遺体安置方法があるところに得点を与えます。

「空調調節」について

 たまに空調の操作盤の場所や操作方法がわかりにくい霊安室があったので、この項目をいれました。

「静音性は保たれているか」について
 ある程度大きい会館内にある霊安室は、並列で数室ある場合が多いため、静音性は重要です。このあたりはホテルと同じ考え方です。外の音が聞こえなければ1点、隣部屋の音が聞こえなければさらに3点です。

「通信に関する配慮」について
 遺族は関係者に対して葬儀の日程や時間を伝えなければいけないため、頻繁に電話を使います。そこで携帯充電器があれば1点です。また高齢者は携帯を使えない場合も多いので公衆電話があれば1点です。また式場の地図や訃報通知を送ることも多いので、FAXを利用することが可能なら1点です。

「物理的な面会制限」について
 これは少し分かりにくいかもしれません。遺体の安置状況と関係があります。ロッカー式の安置方法だと、遺族が自分の意思で故人の顔を見るのは難しいと思います。一方ガラスケースのカプセルなどを使った安置方法だといつでも顔を見ることが出来ます(下段画像参照)。そのような物理的制約があるかどうかが評価対象です。

「換気」

 喪家の9割近くは仏式で葬儀を行います。したがってお線香を枕元で焚くので、強力な換気機能は欠かせません。

霊安室の例
通信設備 空調設備
殺菌設備

 次はソフトに関する項目に関してです。
「案内書き(ディレクトリ)はあるか」
 ホテルのような豪華な物は不要ですが、注意事項などを書いた書面は必要です。中には仏壇や返礼品の業者に情報を提供するために、関係者を装って電話をかけて遺族から自宅の住所を聞きだそうとする輩もいます。こういった点に対する注意書きも必要と考えます。また地図を置くなど周辺地理の状況が把握できるよう配慮していれば1点です。これは葬儀の際、火葬場費用やお寺の御布施などのために現金を必要としますので、キャッシュディスペンサーやコンビニなどの場所が分かれば便利だからです。

「清掃状況は良いか」
 これは当たり前の項目です。霊安室の場合、ホテルのチェックアウトに当たるのは通夜開始に向けて遺体を式場に移動する際だと思います。このときは通夜の準備とも重なり忙しさがピークとなる時です。そのため掃除が行き届かなくなることも充分考えられます。この項目は3点とします。本来清掃状況のチェックの中身も細分化しておくべきなのでしょうが、調査は霊安室の見学といった状況で行いますので、床や窓際に埃が落ちていないレベルを合格点とします。

「衛生上の配慮(殺菌、消毒)がなされているか」

 これは多数の遺体を安置する霊安室においては大変重要な項目です。遺体の中には感染症を持っているケースもあり得ます。遺体に直接触れなくても結核などは空気感染します。免疫力の低い高齢者や子供が利用することを考えると、本来なら病院の手術室と同じくらいの衛生に対する配慮が必要なはずです。医療用の殺菌剤や機材などの使用が行われていれていれば5点とします。

「バリアフリーの配慮」
 バリアフリーといってもいろいろありますが、ここでは洋室か、和室であれば椅子を置いているなら得点を与えます。利用するのは高齢者が中心になります。和室の方が落ち着くとは思いますが、足の悪い方や正座の出来ない方も多数です。その点に関する配慮ができているかを評価します。この項目を満たしていれば5点です。

「香炉の灰はきれいになっているか、蝋燭・線香は補充されているか」
 これも特に説明はいらないと思います。ただしその霊安室のコンセプトとして、無宗教形式を採っており、最初から香炉や線香を置いていない場合は無条件で得点を与えることとします。それぞれ1点ずつです。

「ポットやお茶の用意はあるか」
最低限のおもてなしができているかということです。

給湯施設

「建物内に入ればすぐに霊安室にたどり着けるようになっているか」
 これは親族や弔問者が弔問に来た場合、迷わずに霊安室にたどりつく事ができるかということです。一見アクセスの問題のように見えますが、案内の看板を出しているか、もしくはインフォメーションの窓口を置いているかというソフトの問題が大きいと思います。条件を満たしていれば2点です。

案内表示 案内表示

「運用上の規制」
 故人との同席において規制(宿泊と面会制限)があるかどうかを基準にしました。できるだけ好きなときに同席できるのが好ましいのは言うまでもありません。宿泊機能がある5点、宿泊機能は無いが24時間同席可能4点、夜間同席不可2点、面会の総時間が1日12時間以下0点としました。

「使用資格制限」

 例えば火葬場の霊安室ですと原則その火葬場で火葬をしなければなりません。また公営式場の中の霊安室であればその地域の住民でないと使えないケースがあります。そういった制約が無ければ5点を与えます。民間の斎場の場合はまずこの制約はありませんが。

「その他の配慮」

 枕花のサービスがある、飲食のサービスが充実している、テレビや本が置いてあるなどの配慮も得点に加えました。

 以上配点の割振りは重要度に応じて行いました。

 価格の項目を加えなかった理由は霊安室の料金が式場使用料に含まれている場合もあり、単純比較が難しいからです。そのため価格の項目は調査対象から外してあります。

「霊安室を持っていない葬儀社の評価」
 上記にも書いた通り、現在の状況で霊安室を持たない葬儀社というのは消費者の需要を読めないところです。問題外と判断していいでしょう。

 事前相談者を装って調査した結果がこれです。

霊安室スコア1
霊安室スコア2

 最終的に霊安室スコア順に並び替えて見たところ、ほぼ予想通りの結果が得られました。予想外の結果の部分も含めて分析しましょう。
1.「霊安室が良い→その葬儀社は良い」という法則が成り立つ。
  霊安室スコアのハード面とソフト面のランキングと、総合評価のハード面とソフト面の評価(○△×)の関連性を見てください。両者に相関関係があることがお分かりになるでしょうか。
  仮説で述べたように
  「霊安室が良い(空間上のハード部分だけでなく運営上のソフトに関しても)葬儀社は、式場を含めた施設やスタッフの対応も良い」ということが証明されていると思います。
  つまり「霊安室で葬儀社を選べ」ということなのです。

 これがこの論文で最も言いたいことです。ハードに関しては総合評価に○が多いように思われるかもしれません。これは対象葬儀社を会館所有数全国ランキングの上位を中心に選んだためと思われます。やはりたくさん会館を建設すれば問題点も建設の都度フィードバックされるでしょうから、改良された式場が建設されてきたはずです。実際建物としては(霊安室を除いて)あまり欠点のある物件は少なかったです。逆にソフトの部分はより総合評価にばらつきがあります。これは大手といえども人材のレベルにばらつきがあることを表しているではないでしょうか。
2.霊安室スコアのハードとソフトの得点には相関関係がある。
  霊安室のソフトが良いのにハードが極端に悪いというケースはありませんでした。そして一方が悪いともう一方も悪いといえそうです。
3.関西より関東の方が、霊安室に関してはグレードが高い。
  これは死亡してから通夜までの時間の長さが原因です。関西の場合は、朝亡くなってその日に通夜ということは珍しくありません。霊安室を経由せずに祭壇に安置というケースもあります。そのため霊安室があまり発達してこなかった経緯があります。ですから単純に関東と関西を同じ土俵で比べるのは申し訳なかったかなとも思います。しかし依頼する葬儀社を関西にしようか関東にしようか迷う人はいないでしょうからその地域の葬儀社同士を比較してもらえればと思います。
4.衛生面を気にしないところが多い
  ほとんどが遺体の衛生面に対するケアに無頓着でした。遺体を常時預かっており、抵抗力のない高齢者が出入りすることを考えると、もっと配慮が必要ではないでしょうか?逆に言えば霊安室の衛生面まで気を使っているところは、他の要素を調べずともサービスや式場全てが良いといえるのではないでしょうか。



2.女性社員について〜20代女性社員で葬儀社を選べ〜

本来なら、ここでこの論文は終わるところだったのですが、多くの葬儀社を見て回った副産物としてもう一つの法則を発見しました。
 「20代の女性社員が多い→スタッフと式場が良い」という法則が成り立つ。
 つまり「20代女性で葬儀社を選べ」ということなのです。
 これは20社ほど葬儀社を調査してみて、高評価だったところを思い返して気づきました。別に直接対応してくれた方が20代女性だったからというわけでもなく(もちろんそういうケースもありましたが)男性が良い対応してくれたところでも事務所を覗いたり、式場案内のときに出会った社員を見たりする限り20代女性(とおぼしき方)が多いのです。一級葬祭ディレクターと違って、これはぱっと見ただけで分かります。(みんな老け顔だったらどうする、という議論は除きます)なぜなのかという分析を始める前に、上記の文章を読んで眉間に皺を寄せたフェミニストの方がいるといけないので、ちょっと申し上げておきます。ジェンダー論に関しては正直勉強不足なので(諸説あるでしょうし)地雷を踏んでしまったときの言い訳です。
 この業界に身をおいて10年ほどになりますが、これまでの社員の教育を通して、また退職していく女性社員に胸を痛めた者として、この仕事と女性社員のかかわりに関しては一言発言できる立場にあると思います(思い込みかもしれませんが)。私ごとですが私の妻も葬儀社を辞めた者です。発言の是非は下記の文章を読んで判断いただければと思います。業界全体の改善にも繋がる内容ですから。

 女性社員が優れている点は何でしょうか。
 まず遺族と接する部分で女性の方が印象が良いことが挙げられます。大体葬儀社と接している遺族は不安定な心理状態なので(式場論1章参照)女性の方が遺族を落ち着かせる効果があると思います。ことさら性差を強調するわけではありませんが、女性の方が寿命が長い分、施主が女性であることも多いわけですし、女性が担当の方が好ましい場合も多いでしょう。(社葬の場合は、若さと女性という要素は逆効果になる場合が多いようですが)
 また故人が女性で遺体に触れる際は、遺族心理として男性社員より女性社員の方が好ましいでしょう。接客の部分を重視するなら、女性の方が男性には無いアドバンテージを持っているのです。個人差はありますが女性の方がホスピタリティ能力が高く、きめ細かい対応ができるように思います。あくまでもイメージの問題に過ぎないのですが、接客はそのイメージが重要なのです。実際、葬儀後の顧客アンケートを見る限り女性優位のようです。
 求人マーケットの人材の半分は女性なのですから有効に活用すべきでしょう。

 従来の葬儀業界は典型的な男社会でした。なぜならこの仕事は肉体労働がベースになっているからです。
 下図の円グラフは葬儀が発生した際の業務内容を、時間比率で大まかに分けたものです。   波線が肉体労働の部分、二重線が非肉体労働の部分=接客の部分=男性よりも女性がアドバンテージを取りやすい部分です。一般的な個人葬は担当責任者1人を含んで大体3人前後の葬儀社スタッフでやり繰りされることが多いです。そうすると接客のみのスペシャリストというだけでは“ツブシが効かない”状態です。生産性を考えるなら、またサービス担当責任者の役割を果たすなら業務を一通りできるゼネラリストであることが前提条件として求められます。
 さらに問題点は、葬儀が発生していないときも常に24時間誰かを待機させていなければならないという点です。これは女性には難しいといえます。(補足:男女雇用機会均等法改正、女子保護法撤廃に伴い、女性が深夜待機をするのは法的には問題ない。ただし均等法に付随して定められた「深夜業に従事する女性労働者の就業環境等に関する指針」は「通勤及び業務の遂行の際における安全の確保」を事業主に義務付けている。電話依頼を受けて夜間社外へ出ていく業務内容を考えると女性の深夜待機は現実的に難しい)

業務内容グラフ

 現実問題として体力がものをいう世界なのです。筆者の場合、入社してから体力が足りないことを痛感しました。会社説明会では「イメージとしてホテルマンではなく、自衛隊員になる覚悟で入社してください」と話します。もちろん男性の私より軽い体重で私より重いものを持ち上げるパワーリフトの女性選手はたくさんいますので、女性だからだめというのは偏見にすぎないのかもしれません。しかし現実には多数の女性にとってハンデが大きいのです。

 また葬儀業界は他のサービス業に比べて性別年齢を問わず転職率が高いといえます。その理由として上記で述べた
 1 勤務時間が不規則
 2 拘束時間が長い
 3 体力的にハードである(防衛体力だけでなく純粋な運動体力も必要)
 4 遺族に対する共感性の高い人ほど精神的にストレスがたまりやすい
 5 職業上、社会的認知を受けづらくモチベーションを維持し辛い
などが挙げられます。
 同じ3K職場で働く女性といえば看護士さんでしょうか。看護士と葬儀社どちらも働き甲斐のある職場であると個人的に思いますが、社会的評価はどうでしょう。
 つまり葬祭業は長く続けるのが難しいのです。(村上龍氏が作成した「13歳のハローワーク」という本があります。子供に対して世の中にはこんなに仕事の選択肢がある、ということを啓蒙した良書です。その中で「葬儀屋」の項目を見ると「体力のない人には向かない」と書かれています。ところでこの文の主旨とは全く関係ないですが、13歳で葬儀屋を志すというのはどうなのでしょうか?)さらに以下のこともいえます「20代女性は世代別年代別労働階層の中で最も流動性が高い。女性の社会進出や雇用機会の改善の結果、職業の選択肢が多い。また男性ほど一つの職場に執着しない。均等法制定後10年世代は転職率が高い。」(「平成15年版 働く女性の実情」厚生労働省雇用均等・児童家庭局発行より)また結婚という選択肢も存在します。冒頭で「20代の女性」と限定したのはこの流動性が高いという部分が大きいのです。つまり葬儀社に勤める20代の女性社員は常に辞めるプレッシャーにさらされているといえます。
 それにもかかわらず一人前の社員を育てるのに時間がかかる。新卒の学生をとりあえず担当責任者にさせるのは1年かかります。一通りどのようなタイプの葬儀もできる様になるまで3年はかかるでしょう。
 育成という先行投資から始める以上、20代女性を採用するのは会社にとっても先行投資が回収できないリスクが大きいといえます。女性社員が持つメリットと退職転職のリスクを天秤にかければ、建前上雇用機会均等法があると言っても、手堅く男性社員を採用するのはやむを得ないように思われます。接客の部分に関して基本的には男性も一通りできるわけですから、それなら男性を採用しようという考えが主流だったのです。

 ただし辞めるプレッシャーに拮抗して仕事を継続させるための力が働けば話は別です。まず体力の問題を解消するために、会館専属要員として女性を採用する葬儀社ができてきました。そうすることによって病院対応以外の前図の    波線の部分(体力的にハンデを負う部分)の負担が低減されます。もちろん会館を所有することが前提なのですが。
会館をたくさん持っている。→フィードバックによる改良によりハード(式場)が洗練されている、
会館をたくさん持っている。→女性社員を多く雇える。

 これで式場が良いということの説明がつきます。
 また20代女性社員自身に、他の職業に従事する人が持っているよりもう一段高いモチベーションを持たせる必要があります。まず採用の際うまく適性(註1)を見抜く選択眼が会社側に必要です。次に会社、もしくは周辺の男性を含めたスタッフが、自分の仕事に尊厳を持てるモチベーションを与えられるよう何らかのノウハウと自信を持っていなければならない。「ノウハウと自信」は「高いスキルと仕事に対する熱意」と言い換えてもよいでしょう。当然そういうところは社員教育も積極的に行っているはずです。つまりそれは組織として20代女性に限らず全従業員が高いレベルのサービスを提供できる葬儀社ということが言えます。
 ここで20代が長く勤めている会社なら結果的に30代40代の女性も多くなるのではないか?という反論もあると思います。しかし一部の葬儀社が新卒を中心に20代女性を採用し始めたのはここ10年ほどのことです。したがって30代40代の女性社員がいるとしても彼女達自身はキャリアが短かったり、転職の選択肢を多く持っていない場合が考えられます。
 また葬儀業界は収入がいいから、それだけでモチベーションの維持ができるのではないかという反論もあるかもしれません。確かに同世代の平均収入額よりは多いでしょう。しかし通常この業界の賃金は競争原理のもとで適正値に収斂します。上記の5つの仕事上のストレスを考えれば、すくなくとも収入だけで続けられるほどの賃金を彼女らは貰っていないはずです。「お金ってこんなに簡単にもらえるものなんですね」大学を出て葬儀社に入って数年働いた後、他の業界に転職してしまったかつての部下に再会したとき聞いた言葉です。複数名から同じことを言われました。これが現実です。
 以上のことから「20代の女性社員が多い→スタッフと式場が良い」という法則が成り立つのです。

 図式化したものを載せておきます。

20代の女性社員が多い→スタッフと式場が良い

註1 補論:葬祭業の適性について
 上記の文章で葬祭業の適性について触れています。葬儀社で働くことに対する適性(が一種類であるとは思いませんが)について筆者なりに考えてみました。
 パーソナリティの分類の一方法として明るい人と暗い人、おしゃべりな人と無口な人など対立項目に分ける方法があります。
 まずここでは1点目に性善説信仰型(性善説を信じる人)と性悪説信仰型(性悪説を信じる人)という対立項を設定したいと思います。サービスを供給する側は性善説を信じていないと辛いと思います。お客様のことを悪人だと思っていては良いサービスはできないでしょう。逆に金貸しの仕事などは性悪説信仰型でなければ出来ないでしょう。
 次に高モニター型と低モニター型という対立項を設定したいと思います。
この概念はミネソタ大学の心理学者マーク・スナイダーによって提唱されました。セルフモニタリング(=自己監視能力:社会や人間関係の中で自分自身を観察し、規制し、コントロールすること)の能力の度合いでパーソナリティを分類したのです。一般に高モニター型人間は、世間や周囲の評価を気にする、周囲や上司に自分を合わせる、仕事の内容に関係なく地位名声など周囲の羨望を伴う仕事を選ぶというのが特徴です。一方低モニター型人間は、世間や周囲の評価を気にしない、自分の信念と行動を一致させる、融通が利かないというのが特徴です。高モニター型と低モニター型はどちらが良いという優劣はありませんが、日本人には圧倒的に高モニターが多いと言われています。
 上記のことから下図のようなマトリクス図を作成し、タイプ別に分類してみました。

葬祭業適性マトリックス

 補足しておくとARTISAN(アルチザン)は職人、MYWAY(マイウェイ)はわが道(を行く)、BURNOUT(バーンアウト)は燃え尽きること、BANKER(バンカー)は銀行員という意味です。
 葬儀屋は社会的地位が低いので、どうしても高モニターの人にとっては職業選択肢からはずれてしまうことが多いようです。そのため高モニターの多い日本人社会では成り手が少なかったのではないでしょうか。ARTISANタイプはかつての葬儀屋に多かったタイプです。生産性を追及しますが同時にモラルハザード(道徳的危険、倫理の欠如、節度を失った利益追求に走ること)も起こしやすいタイプです。BURNOUTタイプは八方美人という言葉があるように女性に多いような気がします。以前看護士の方と話したとき「正しくて弱い子が最も早く潰れる」という内容のことをおっしゃっていました。一生懸命がんばりますが、理想とのギャップやらストレスやらで潰れてしまうタイプです。MYWAYタイプが最も適性が高そうですが、上司がBANKERタイプやARTISANタイプだと信条的に反目しやすいので、組織としてうまくいかないケースも出てきます。結局BANKERタイプ以外はそれぞれに一長一短があるということです。現在葬儀社で働いている方、もしくはこの業界を志望している方は自分がどれに当てはまるか考えてみてはいかがでしょうか。



*まとめ

過去10年前から数年前までは式場の時代でした。全国で会館の出店が相次ぎました。そうすることが他社との差別化を生んだからです。会館も飽和状態になり現在は価格の時代です。不景気や消費者の学習の結果もあり現在は価格を競い合うようになりました。いいことです。あと数年でサービスの時代になると思います。もちろん上位の企業はそのことに気づいていますし対策を講じています。ただ消費者がサービスを本当に、選択基準に盛り込むのはまだもう少し先です。この論文は少し先を見越しておきたい、そして葬儀社主宰の会館見学会に足を運んだりする、葬儀社を選ぶ消費者のお役に立つと思います。
 最後にもう一度言いますが、葬儀社選びのポイントは「霊安室」と「20代女性社員」です。
 またこの論文は就職先に葬儀社を希望している方にも役に立つと思います。一生付き合うかもしれない以上、できるだけ精度の高い葬儀社選びを必要としていると思うからです。
 火葬場で、たまに見ず知らずの若い人から声をかけられることがあります。名前を呼ばれて怪訝そうな顔をすると就職活動中の会社訪問のときお会いしたとのこと。結局採用されなかったため別の葬儀社に就職したが元気にやっているそうです。彼(彼女)に関することを殆ど何も知らないのに、自分はなぜこんなにうれしいのだろうと不思議な気分になります。それほど希望者が多いとは思えませんが、この論文を読んで一人でも多くの方が良い葬儀社に就職することができることを願いながらこの論文を終えたいと思います。

参考文献  
「超文章法」
「カメレオン人間の性格」
「月間消費者特集号エンディングプラン」
公益社 営業システム
(2002)野口悠紀雄 中公文庫
(1998)マークスナイダー 川島書店
(2003) 財団法人日本消費者協会
 
Special thanks to
褐益社 葬祭研究所 スタッフ
褐益社 世田谷営業所 スタッフ
調査にご協力頂いた各葬儀社の皆様
過去施行依頼を頂いた御遺族の皆様