世界の火葬状況と日本火葬の未来

〜人口飽和状態の中国を中心に〜

公益社 エンバーミングセンター
宇 屋 貴


 目 次
第一章 中国の葬儀事情
 
1. 中国という国
2. 旧来の土葬とその理由
第二章 その他の国の埋火葬状況
 
1. イギリスの場合
2. アメリカの場合
3. 韓国の場合
4. シンガポールの場合
第三章 将来の日本の葬儀形態
 
1. 火葬による大気汚染の問題
2. 将来の火葬を取り巻く環境対策



 埋葬形態における土葬から火葬への変化が多くの国々で見られるようになってきた。ここでは、中国の殯葬革命を中心に、世界各国の火葬化の動きや取り組みを述べつつ、日本の現状を考察する。

第一章 中国の葬儀事情
1.中国という国
 北京中心部の天安門広場の西側には、御影石の八角柱に伝統的な瑠璃瓦を配した勇壮な毛沢東記念堂が建ち、その中にはエンバーミングされた毛沢東が眠っており、今でも多くの参詣の人で賑わっている。

 中国の人口は現在約11億人で年間の死亡者数は1500万人であり、死者の数では日本の約20倍とも言われている。私はその膨大さに驚くと同時に、多くの先進諸国が「土葬から火葬へ」の移行を図っている時流のなかで、儒教の教えの影響や地域格差等の理由により、今なお土葬を残している中国がどのような動きをしているのかということを知りたくなった。

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2.旧来の土葬とその理由
 2−1 土葬がなされてきた理由
 確かに、かつて儒教思想の支配下にあった中国では亡親を火葬にするのは親不孝の最たるものとして忌避されていた。死を生と同じように重要視し、祖先の墓を立派にすることが生きている者に繁栄と幸福をもたらすと信じられてきた。

 地方の場合、死亡すると、場所によっては遺体の足を玄関口に向け、買水(外の流水)したもので湯灌をして清潔な衣類を着せる。近隣の人々に死が伝えられると、通夜の晩には遺体の傍らで近親者の老婆が慟哭し、年老いた人たちが念経することもある。翌朝に納棺して釘付けをし、地元の有志が担いで墓地へ向かう。葬列は先頭に弔旗をたて爆竹を鳴らしながら進むが、会葬者の多くは平服に黒の喪章をつける程度で特別の喪服は着ない。喪家に戻ってからは、会葬者に簡単な食事を供することが多い。

 1995年の中国の新聞記事における人生相談のコーナーに、地方で暮らす人の生々しい声が載せられている。

 ―『先日、母を亡くした46歳の農民です。農村の習慣で母の遺体は土葬にするつもりですが、「耕地を節約する為、火葬にするようにと人民政府が呼びかけており、みんなも応じているのです。あなたも例外ではありません。」と村民委員会長に言われました。遺体が無くなると、死者の霊魂が天国へ昇れないという伝説をよく聞いていましたから、苦労して私と2人の妹を育てあげてくれた母の遺体を火葬するなんて、私にはできません。どうしたらいいのでしょうか。

 ―(回答)本当に親孝行な方ですね。ただし、分かってもらいたいのは、中国の土地は広いのですが、耕地面積はたった9.96パーセントに過ぎないということです。土葬がこのまま続けられていくと、人が死ぬたび人間一人の身長以上の土地が墓地になってしまうため、耕地面積が減少するのは必至です。耕地は農業にとって最も重要です。広い耕地を子孫に残さないと、天国の祖先も安心していられないでしょう。遺体がなくなると霊魂が天国に昇れないなんて、全くの迷信ですよ。信じないで下さい。今、何よりもやるべきことは、一日も早くお母さんの葬儀をすませることです。死者にとって一番重要なのは、安らかに霊魂が天国に送られることです。古い習慣にとらわれず、すっきりした気持ちでお母さんに最後の孝行をしましょう。』

 この記事から、未だに土葬の方がよいという考え方が、たとえそれが一部ではあっても根強く残っているということがわかる。

 また、開放政策によって経済至上主義が広がり、鄭小平氏の提唱で「先に豊かになれる者から豊かに」の方針を推進し、その政策の浸透によって農村部と都市部の所得格差が拡大していき、多くの農村は豊かさから取り残されてしまった。ちなみに都市部の平均月収は530元(約7,200円)であるが、年収がその額にも到達しない「絶対貧困者」は農村部に6,500万人いるといわれる。疲弊した農民の中から豊かさを求めて出稼ぎ労働者として村を離れるものが後を絶たない。このように混沌とした不安な状況下に置かれた農村部では、迷信と民間信仰が復活蔓延して勢いを強めている。この現象について、心を委ねられる確かなものを見出そうとする庶民心情の一つのあらわれとみる専門家もいる。

 2−2 殯葬革命
 1956年に毛沢東が火葬の導入を提唱したことから、事態は急変する。棺材になる森林資源の節約と墓地用地による耕地の減少を食い止めることが目的であった。1976年には周恩来元首相が八宝山で火葬に臥され、遺骨が中国全土に撒かれた。1980年代から政府によって殯葬改革業務の強化が訴えられ、「改革殯儀・移風易俗」(荀子・楽論が原典)というスローガンのもと、中国の殯葬改革は都市部から農村まで展開されてきた。当時の政府からの通達には、全国の85%の都市、30%以上の県で火葬が行われ、改革の実行が十分に徹底されていない向きがあることを指摘した上で、「各階級の人民政府はこの方針に則って、宣伝工作も含め努力するように」とある。河北省の人民政府からの通達によれば、河北省では既に135の市や県に火葬場があり、10の県で火葬場が基本建設計画に組み込まれていて、土葬の制限や宣伝教育が行われているという。しかし、1983年の共産党からの通達には、実際には火葬率が低下していると謳われている。それによれば、1982年の火葬率は、全国で14.5%、大都市では70〜80%だが、それ以外は10%台ということであった。そこで、「共産党員は喪事を簡素化し、率先して火葬を実行せよ。」と強調されている。

 こうした動きをふまえて、中国国務院は殯儀管理に関し数々の規定を1985年2月8日に発布した。第一に、従来の土葬を改革し、封建的・迷信的な葬送習俗を除去することを掲げている。これによって葬送儀式で消耗する資源の節約と、費用の倹約を狙った。第二に、人口過密、平原、交通便利な地区は火葬にするべきだと訴えた。その他の地区は土葬を許可するが、改革を義務づけ、火葬推進地区の線引きは省、自治区、直轄市(北京・天津・上海)で定めた。第三に、火葬推進地区の人民政府は具体的に計画を策定することとした。火葬場、殯儀館(葬儀・火葬・納骨を行う施設)の整備を地方基本建設計画に組み入れた。第四に、火葬の推進が困難な地区は、土葬用地を計画的に指定する、とした。村・集落を単位に荒山や痩地を公墓とする。埋葬は深く固め、表面を平らにし、土饅頭を作らないように提唱。宗族墓地の復元や新たな建立を禁止した。第五に、従来、習俗的に行われてきた迷信による葬送用品の生産や販売、使用を禁止することにした。第六に、名勝旧跡、文物保護区、風景区、ダムや河川敷、鉄道用地、道路両側への墳葬を禁止した。既存の墳墓については、国家保護の革命烈士(共産革命、抗日戦争、新中国の解放戦争などに貢献した人々)の墓、知名人の墓、華僑の祖先墓や、歴史的、芸術的、科学的価値のある古墓は保存することとし、一般の土葬墓は、期限を定めて移転あるいは破壊することを強調した。第七に、漢族以外の少数民族の葬送習俗は尊重し、干渉しないとした。第八に、火葬の推進地区では、国営機関の労働者が火葬を拒否する場合は、葬送費用を支給しないと決めた。所属する単位は喪事活動の便宜を図ってはならず、国営機関の労働者がこの規定の執行を拒否するときは行政処分をするということになっている。これらの規定が、現在の中国の葬儀事情及び葬儀業界の根本概念といえる。

 2−3 都市部の葬送の実態
 かつては墓地も方角や場所を占って決めていたが、国策的な四つの近代化(農業、工業、国防、科学技術)を促進する障害になるという理由で、散在する墓地は整理され、一定の不毛地帯を墓地に指定して埋葬している。

 各都市では、葬儀・火葬・納骨がまとめて出来る殯儀館の建設を推進させている。現在中国全土には約1200ヶ所の殯儀館と4,000基の火葬炉があるといわれている。全国の火葬率は1990年現在で約30%に達している。一見日本と比べると少ないように思われるが、先述の儒教の思想が主流だった中国の慣習を鑑みれば、いかに中国という国が火葬化に力を入れてきたかが窺え、都市部においてはほとんどが火葬になっている。


※八宝山火葬炉
 殯葬改革により、各都市では、葬儀と火葬と納骨がまとめてできる殯儀館の建設が盛んに行われている。例えば、北京市には10以上の霊園と12の葬儀場がある。そのなかでも八宝山革命公墓・殯儀館は最も大規模な殯儀館の一つである。革命直後の1949年に党と国家要人の墓地として開設され、その後の1958年に火葬場を設けた。

※八宝山殯儀館
 ここは、元首相である周恩来の葬儀を行ったことでも有名である。北京市内の年間死亡者数約5万5千人のうち2万2千人を扱う。単純計算で1日平均60体を荼毘に付すことになる。ちなみに、受付時間は朝8時から夕方の4時30分までとなっている。火葬場と告別式場が同じ敷地内にあり、ここで簡単な葬儀を行った後、遺体をストレッチャーに乗せ、火葬場に運ぶ。火葬にする際に遺族が立ち会うことは無い。火葬後の納骨も職員だけで行い、当日又は翌日遺族に連絡して、遺骨配属の立会いの下に付属霊堂のロッカー式の納骨棚に安置する。骨箱は、3年間しか保管されず、その期限が来ると遺族に連絡して引き取ってもらい、それまでに用意した墓地に納めることになる。諸事情で、骨箱を引き取りに来ない場合は、他の遺骨と合祀されることになる。また、北京市郊外には福田公墓や付属納骨堂があり、個人の墓が立ち並ぶ。このようにたいていの都市の郊外には公営墓地があり、画一的な石碑が立ち並んでいる。

※八宝山公墓
 日本のように家族墓はなく、せいぜい夫婦単位のものである。式場は一般向けの小ホールと高官などが使用する大ホールがある。ちなみに、大ホールの使用料は1,000元で、一般平均所得の5ヶ月分にあたる。

 北京市では、1985年に全19条にわたる「北京市殯葬管理法」を施行し、殯葬改革に積極的に取り組んできた。北京市では10以上の霊園と12の葬儀場とそれに葬送用品の製造工場を管轄している。殯葬管理所の従業員は700人を超え、中国で最も先進的な設備とサービスで対応している。イスラム教徒を除いて、北京市民と在留外国人を対象に、遺体移送、空輸、防腐処理、火葬、骨灰処理などの葬送に関することは全て扱っている。「喪家至上、服務第一」をモットーに、「お客様の満足を創造」するようサービスに励んでいる。

 人が亡くなると、死亡宣告の後、公安局派出所に死亡届を出し、遺族は殯儀館に連絡をとって、遺体をマイクロバスで殯儀館まで搬送してもらう。殯儀館で所定の手続きをした後、遺体を冷凍庫に安置する。その後遺族は殯儀館の担当者と相談して、弔問時間、葬儀形式などを決定する。中国の「戸口登記条例」によると、「市民が死亡したときは、都市においては葬る前に、農村においては1ヶ月以内に、戸主・親族・扶養者又は隣人が、戸口登記機関に死亡登記を申告し、戸口を抹消する」とある。

 式場正面中央の壁面に黒の額縁に入れた遺影を安置し、両脇は黄色の花で飾る。そしてその手前の棺台に遺体を安置し、そして生花(主に黄や白の菊)と果物、野菜が供えられる。その両脇には大きなローソク一対と、香炉が置かれる。棺台の上のローソクは一般的に白が用いられるが、80歳を越えて亡くなった人などの場合には、赤いローソクが使われることもある。また両側に籠に入れた花が置かれることもある。また遺影の上には「奠」という文字がひときわ大きく飾られる。これは「香奠」の奠と同じで、おごそかに供えるという意味である。その他のお供えとして、死者の夫あるいは子供たちから贈られた哀悼の言葉がかかれた幕である挽章が、遺影の両脇の後方に掛けられる。花輪や花籠は入口を入った両側に並べられ、式場内の両脇には長卓が置かれて、ここで弔問者が腰を掛けてお茶を飲むようになっている。

 式場入口には長卓が置かれ、そこで受付を行う。普通、葬儀のときに贈るものには、花輪、花籠、挽聯(ワンリェン)、挽章(ワンチャン)、香奠などがある。挽章(ワンチャン)とは、葬式の時に贈る布や絹の掛物で、そこに弔意を表す言葉が漢字で書かれる。大きさは縦2メートルくらいで、白や青、黒の素材が用いられる。書かれる文字は縦に3列で、右上から死者の名前とそれに添えた言葉。2列目中央は、四文字の言葉が選ばれる。最後の行にはこれを贈った人の名前が書かれる。そしてこれら供物を記録するための「礼簿」や「謝帖」が用意される。
 故人に対する死化粧(理髪)や死者が身につける衣装も、遺族の考えによって決定される。衣装に関しては実物が展示されているのでそれから選択する。

挽章

 花輪は死者の友人や親戚から捧げられるもので、哀悼の意を示すものである。花輪は竹あるいは木で丸く作り、色紙で大小の花を貼り付けて作られる。中央に「奠」(供え祭る)と大きく書き、右上には「○○同市千古(とこしえに)」と左下に「○○敬挽(謹んで哀悼の意を表す)」などと記す。

 葬儀は現在、簡素化に向かい、一般的な追悼会は殯儀館の中で簡単に行われることが多い。従って儀式は無宗教、つまり僧侶がお経を唱えるということは無く、あっさりとしたものである。追悼式の開式宣言から始まり、全体起立、哀歌の演奏、献花の後、祭文を読み、哀歌の演奏後、棺に向かって三礼(向霊前行礼三鞠躬)、来賓礼一回(来賓致祭一鞠躬)、弔辞、哀歌の演奏、来賓に対して遺族は一回礼をする。それで式事終了となる。

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第二章 その他の国の埋火葬状況

1.イギリスの場合
 1874年、イギリス火葬協会が創立され、1885年にはロンドン郊外に最初の火葬場が誕生した。1987年の統計では、イギリスの死亡者数は年間62万9千人、そのうち火葬は69%である。国内に火葬場は223ケ所あり、したがって1火葬場あたり年間約1,940人の遺体を火葬することになる。
 火葬場にある教会で儀式が行われた後、棺は地下にある火葬炉に送られる。遺族は火葬および収骨に立ち会うことはない。
 なお火葬後の遺灰については何の法律もない。遺灰は故人が指定した場所に撒いてもよいし、海に撒いても良いとされている。
 埋葬の場合、埋葬に先だって教会での儀式を行う。儀式の後、棺は墓地まで運ばれ、会葬者がそれに従う。埋葬時には吊し鎖で棺を墓穴のなかにつり下げ、その間祈りの言葉が唱えられる。会葬者は棺の上に土をかける場合もあるが、埋葬が終了するまで見届けることはない。
 通常は、葬儀のあと近親者が一同に会し、軽い食事が用意される。かつては豪華な食事が準備されたが、最近では簡略化している。
 火葬した際に、汚染物質を出さない材質のもの(たとえば澱粉)で棺を作るなどの商品が販売されている。
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2.アメリカの場合

 アメリカ火葬協会によると、アメリカの火葬率は1975年の6パーセントに比して2000年には26パーセントに、伸びている。





 火葬が増えている地域は南米からの移住者が多いカリフォルニア州やリゾート地のフロリダ州が顕著であり、西暦2010年には火葬率が38パーセントを超える見込みである。特に、家族とは別れて生活しているケースが多いフロリダの定年退職者が集まっている地域では、火葬率が70パーセントを超えているところがある。火葬が増大している理由として同協会では、次の5つを挙げている。第一に、退職者が集まる地域の人口が増大しているということ。第二に、アメリカへの移民として、火葬を行うアジア系の人口が増大しているという点。第三に、人々の教育水準が上がっていること。第四に、伝統にとらわれなくなっていること。第五に、環境問題などに敏感になってきているという点。
 さらに、フロリダとカリフォルニア州では火葬規制が設けられている。フロリダ立法府は、火葬に伴う危険な物質の排出を減少させるため、火葬温度を以前の200度という低温から982度に規制した。カリフォルニアでは、遺体や棺を焼いたあとの汚染物にダイオキシンが高レベルで存在することが判明したため、さらに規制が設けられる可能性もある。
 また、プルトニウム・パウダーのペースメーカーをつけていた遺体を火葬することの影響が心配されている。ペースメーカーにプルトニウムバッテリーを使用していたものは、汚染原因となるからである。
 将来的には、火葬場を人口密集地から離れた場所に移転させること、あるいは空気の浄化を促進させる目的で樹木を植えることを義務づける案も出ている。しかし、もしそうなったとしたら、火葬料金の値上げにつながる恐れがあるだろう、との意見もある。
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3.韓国の場合

 2002年4月2日付けの「朝鮮日報」によると、調査の結果、韓国の火葬率がここ10年間で倍以上に増えたことが明らかになったとのことである。保健福祉部の記録によると2000年の死亡者24万7,346人中8万3,233人が火葬をし、火葬率33.7%であった。これは91年の17.8%に比べ、倍近く増えている。韓国の火葬率は81年の13.7%から94年には20.5%、98年には27.5%と上昇し、99年は30.3%と、初めて30%を超えた。市・道別の火葬率は釜山が55.8%と最も高く、蔚山が48.7%、ソウル46.5%、仁川45.7%の順となっている。一方、済州は12%と最も低かった。釜山、蔚山と共に、慶尚南道33.2%、大邱31.5%、慶尚北道24%など、嶺南地域の火葬率が比較的高い反面、光州、全羅北道18.5%、全羅南道14.6%など、湖南地域は相対的に低かった。
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4.シンガポールの場合

 人が亡くなった場合、遺族は遺体を土葬することが出来るが、その期間は最大15年で、その後はご遺体を掘り返して火葬し、その遺灰は公営の納骨堂に収納される。
そして、今までお墓として使われていたところは再度埋葬の為に利用される。もし、火葬してから3年経っても引き取りをする人がいなければ、遺灰は海に撒かれる。
 イスラム教徒やユダヤ教徒などは、火葬が禁じられている。掘り起こされたご遺体は8体ごとに1箇所の墓地に2列に並べて、個別に埋葬される。ちなみに、火葬が出来る仏教、キリスト教、道教、ヒンズー教などの場合、90%は火葬されている。
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第三章 将来の日本の葬儀形態
1.火葬による大気汚染の問題
 日本では約1300年前(700年)に僧侶が火葬されたのが始まりである。日本での火葬の歴史はかなり長い。現在では、火葬場の技術も進歩している。1980年代以降に建てられた火葬場では、主燃焼炉から発生する不完全燃焼ガスを高温で燃焼させ酸化により黒煙やダイオキシンの発生を抑制している。さらには、バグフィルタ等の集塵効果の高いフィルタなども使って、排気は高度に浄化されている為、高い煙突は不要である。ただ、中国と決定的に異なる点は、火葬時に棺に遺体を入れるか否かという点である。火葬にするなら当然棺は木製が良いのだが、ダイオキシン等の環境問題という点を考慮すれば、中国のように、棺なしで荼毘に付すというのも合理的ではある。ただし、日本では納棺が、一連の葬儀の流れになくてはならない存在になっているので、それを真似ることは非常に困難といえる。

 火葬率が98%以上に達する斎場(火葬場)の大気汚染も環境問題化している。大気汚染の元凶と言われるダイオキシンは、塩素系製品(塩化ビニール、プラスチック等)の焼却時に発生するもので、ゴミ焼却場が主な発生源であるが、火葬場でも発生しており、棺・衣装・副葬品には塩素系製品を使用しないことが義務付けられている。
 なお、人体は60〜80%水分(若い人ほど水分が多い)で、塩素もかなり含んでいるが、イオン状で存在するため無害である。

 2000年8月7日の朝日新聞には、次のような記事が載せられている。
 ―火葬場からもダイオキシンは出ている。
 厚生省によると国内には5,142の火葬場があるが、98年度中に火葬の実績があるのは1,558施設。厚生省の委託を受けて京都大学大学院工学研究科が97年から2年かけて計22カ所の火葬場を実体調査したところ、排ガス中のダイオキシン濃度は最も高い施設で24ナノグラム/。ゴミ焼却場・既設炉の排出規制値である10ナノグラムは越えているが、閉鎖命令の出る80よりは低かった。近代化が遅れており、しかも高温で連続焼却できない火葬場ではもっと出て不思議はないところだがこの結果だった。発生源は人体だけでなく棺や副葬品、ドライアイス、果物類などからである。
 日本の火葬率は約99%、97年度には約97万体が荼毘に付され、その結果全国で計1.8〜3.8pgのダイオキシンが大気に排出された。これはゴミ焼却場から出るダイオキシン総量の0.1〜0.2%。わずかな数字だが、今後高齢化が進み2036年に死亡人口が約176万人とピークに達した場合、火葬炉が現状のままだとダイオキシンの発生量は3.2〜6.9pgとなって、規制の進むごみ焼却場の排出量の35%近くになる。
 厚生省は調査を基に今年3月、年50件以上の火葬をする火葬場を対象にガイドラインをつくり、これから新設する炉について、ダイオキシン排出量を1ナノグラム/以下、既設の炉は同5ナノグラム以下と、ごみ焼却場より厳しい基準を設けた。
 人の遺体はごみではないという立場から、火葬場は大気汚染防止法やダイオキシン類対策特別措置法の対象になっていなかった。しかし、火葬という行為からも確かにダイオキシンは発生している。今ではまだ小さな数字だが、それはまだ規制の甘い段階のゴミ焼却場と比べた場合であって、今後ゴミ焼却場が改善され、死亡人口が増えてくればゴミ焼却によるダイオキシン排出量の1/3にもなるというのだ。
 ここまでくれば無視することは当然出来ないわけで、炉の改善はもちろんのこと、棺や副葬品にも注意を払う必要がある。

 ベニヤ板の張り合わせか木のチップを固めたもの等である最近の棺については、接着剤や塗料がダイオキシンの発生源になるという。この対策に段ボール製(米国製)の棺が使われたり、副葬品としてよく入れられる時計、メガネ、ゲートボールのクラブ、ゴルフのパター、カラオケマイクなどをケヤキやナラで模型としてつくる製品が開発されていたり、仏衣も木綿やレーヨンのものが使われることが始まっているという。

 さて、エコロジーを考えるとどんどん追いつめられるような気になるが、棺や副葬品を考えることで大幅に懸念材料を解消させることが出来るとすれば、それは当たり前のことだともいえる。つまり、エコロジーについての知識・知恵がなかったために面倒を引き起こしていることが多いわけであって、きちんと知識を持ちさえすれば面倒なことはなく、それだけで大幅に改善出来ることでもある。
 死亡人口が増えると、ダイオキシンも増える。今の棺のままで、果たしてよいのだろうか。火葬温度を上げることにより、ダイオキシンの発生を少なくすることは可能であるが、高温にすると遺骨が粉になり、骨粉焼却灰が飛散して、灰の終末処理が大変困難になる。そのため通常750〜800℃で焼却が行われている。

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2.将来の火葬を取り巻く環境対策

 厚生省の予測では、2000年に年間100万人を突破する全国の死亡人口が、ピーク時の2036年には176万人に達するとしており、現有火葬炉のままでは、死亡人口が増えるに比例して発生ダイオキシン量も増えることを意味し、地球環境を更に悪化させるものと考えられる。
 このように、葬儀環境には、葬儀業界の体質改善と地方自治体の火葬行政の両面で、大きな課題が残されており、葬儀業界、地方行政一体となった葬送の改革が必要な段階に入った。
 名古屋市は現在、八事(やごと)斎場1箇所で市民の火葬需要に応えている。高齢化の急速な進行に伴って火葬需要の増加と八事斎場の老朽化により、今後の名古屋市の斎場のあり方について検討されている。名古屋市では「名古屋市斎場整備検討委員会」が設置され、八事斎場の現状と課題、新斎場整備の必要性、斎場の施設・設備と環境保全、管理運営のあり方などについて議論されている。八事斎場での平成10年度火葬件数は17,720件(平成元年より約17%増)。そのうち、市民以外の利用率は約12%。現状における問題としは、第一に告別室、収骨室を設置しておらず、告別・収骨の会葬者が錯綜して炉前ホールが混雑し、また、告別と収骨が隣り合う場合もある、ということ。次に、駐車場の問題が挙げられる。現在同火葬場には145台の駐車場を備えているが、火葬集中日には不足することもある。第三に、改築後29年経過し、老朽化が進行しているということ。第四に、火葬炉に冷却前室が設置されていないということ。最後に、構造的制約から、より高度な環境保全システムを導入することが困難である、という点が挙げられている。名古屋市域の将来火葬件数は平成20年に約22,500件、平成44年に約32,100件で最多となり、その後は漸減と推計されている。八事斎場の火葬能力の限界は1日110件と推定されるが、将来火葬件数の推計では、平成20年頃には友引の日の翌日など集中する日には110件を超え、翌日以降の火葬あるいは他の斎場の利用も想定される。

 このように、世界的に「火葬化」の動きが活発な中で、既に火葬化を成し遂げた日本ではあるが、非常に解決し難い問題を抱えている。木製の棺を燃やすことによって出るダイオキシンの問題は非常にナイーブな要素を含んでいる。棺をやめればいい、という安直な方法論では通じない。日本においては葬儀をする中で、「棺」の存在は大きい。フィジカルな問題も少なからずあるようだが、それ以上に感情的、心情的な側面からも非常に大きな比重を占めるものという感がある。

 最近は、全国各地で生や死を考える会合が開かれ、「生」の終焉としての「死」について考える人が増え、“遺骨を自然に還したい”と「自然葬」を希望して、遺骨を骨紛に粉砕して、海や山に散布する「散骨」を行う人も出てきている。(海希望の人7割、山希望の人3割)。
 更に、「散骨」が遺骨を生前ゆかりの海や山に散布して終わりとするのに対して、山林墓地に遺骨を骨壷から出して埋め(骨壷は廃棄処分)、その上に植林することにより、森林伐採による地球環境悪化防止に役立てようと企画する寺院も出現している。

 「事業墓地」の出現は、郊外の樹木を伐採して造成され、環境破壊を伴ったため、そのため郊外の自然を損なうことになった。墓地用地は他目的用地への転用が困難なものであるため、墓地認可については簡単に許認可を下ろすべきものではないことは勿論であるが、造成により破壊した自然環境を修復する義務についても考慮されなければならない。
 今まで環境への意識が疎かであった墓地事業にも環境への配慮が求められる時代となった。

 現在、世界的に環境保護の動きが活発になっているが、それが葬儀業界にも求められている。環境保護団体では、火葬による大気汚染と、土葬による土壌汚染を心配している。土壌汚染として、エンバーミングによって防腐剤を注射された遺体が埋葬された後腐敗し、漏れ出た防腐剤が地下水を汚染する危険もあるという。多くの共同墓地では、墓の基底に防水処置をしているが、浸出を止める確信がある訳ではない。

 死亡人口の増加に伴って、日本も火葬の方法を見直す時期にきているのではないだろうか。しかしながら、そこには環境問題を優先すべきか、日本民族独特の死生観に基づく心情的なものを優先すべきかという、どちらとも選択出来かねる問題が残る。

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《参考文献》
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