団塊の世代の葬儀について

公益社 東京営業部
磯 田 桜


 目 次
まえがき  
第一章 団塊の世代とは
 
1. 団塊世代の歩み
2. 消費マーケットとして
第二章 アンケート実施記録、ヒアリング記録
 
1. アンケート実施記録
2. ヒアリング記録
<まとめ> 団塊世代の今後の葬儀




まえがき
 団塊世代の葬儀について考えるきっかけは、現在の当社の葬儀の在り方への母からの注文と団塊世代の特性についての話の中にあった。母の場合、自分の葬儀は従来のような葬儀ではなく「もっと違った様式を」と望んでいる。具体的には「通夜」「告別式」というように時間を区切らずに「お別れ会」のようなものにして欲しいというものであった。亡くなってから2日間程は自宅に安置し、好きな時間に弔問に来ていただき皆さんにお別れをしていただく。その後家族のみで火葬し、骨葬という形でお寺様にお経を読んでもらいたいということだ。また母の周りの知人達も、葬儀に対して不安もあるが希望もある人が多い。母が従来どおりの葬儀を希望しないで別のものを希望している理由は、その年代の考え方にあるようだ。
 その年代には、ベビーブーマーといわれる現在50歳代前半の人達が該当するわけだが、祖父母の世代と大きく違う点がある。それは、生活レベルと老後への不安である。戦後生まれで高度成長時代に過ごし成人した団塊世代は、経済の安定により、量より質を求めるようになっていった。しかしそうはいっても現在は不況が継続し、漠然とした老後への不安がある。また少子化により、子供に老後の面倒を見てもらうことも期待出来そうにない。こういった背景から、自分の葬儀に関しては自分達で考え、しかも自分達の希望に合う形で葬儀を行うという人が増えているように思う。実際当社では、両親の葬儀についてはもとより自分の葬儀について事前に相談にくる人が増えている。
 また人口比率の面から見ても、2000年までは、消費人口として期待される20歳〜50歳の人数より50歳以上の人数の方が少ないのに対し、2005年には、逆転するのである。ということは、葬儀の消費対象を50歳以上と考えるならば、その需要も同時に増えていくと考えてもよいのではないだろうか。よってマーケットとして大きいこの団塊世代の葬儀へのニーズを捉え、需要を創出することが葬儀社にとって重要になっていくと思われる。第一章では、まず団塊世代とはいったいどのような世代なのか、ということについて見ていきたいと思う。
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第一章 団塊の世代とは
1.団塊世代の歩み
 団塊の世代とは、狭義にはベビーブーマーといわれる1947年から1949年に生まれた人達のことをいう。戦後の日本では、海外からの復員や引き上げもあって、年間約270万人もの子供が誕生した。その数延べ806万人。
 まず、団塊の世代がどんな歩みを遂げてきたのか日本の経済状況を踏まえながら見ていきたい。戦後すぐに生まれた彼らは、やがて「三種の神器」(洗濯機、冷蔵庫、掃除機)が普及することからも分かるように生活レベルが上昇する中で子供時代を過ごす。そして、1960年頃から高度経済成長期に突入し、企業の人手不足から大量の新卒雇用が開始される中「金の卵」として就職する。周囲に期待され、バリバリ働き、オイルショックによる不況を乗り越え、再びバブル景気を謳歌した。しかし、バブル崩壊、IT技術の発展による産業構造の大きな変化の中で、少子化、リストラ、住宅ローンの問題を抱えている。戦後の日本経済と団塊世代の歩みは連動していると捉えてよいと思われる。では、この団塊世代の特徴とは何だろうか。よく言えば、バランス感覚がある、悪く言えば、数だけで強烈なインパクトに欠ける世代と表現される。それは、一世代前が追求した企業の論理、すなわち滅私奉公に対し、団塊世代は会社よりも自分の生活、建前よりも本音という風潮がある一方で、現実は前の世代が切り開いたものを大衆化させただけではないかと批判もあるからである。団塊世代は以上のように「混沌とあいまいさ」をもつ世代と思われる。
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2.消費マーケットとして 

 前述のような経済、思想をもとに現在の団塊世代があるわけだが、本節では、その数的ボリュームに注目する。団塊世代の消費マーケットは、これからの日本経済の発展のためには無視出来ない存在であるように思う。それを裏付けるアメリカでの話がある。
 「1985年にアメリカでコカ・コーラ社が今までのコークの味を変えると発表した。昔と違って、今の若者はより甘い味わいを求めているというマーケティングリサーチの結果を受け、ライバル会社のペプシ・コーラに追い上げられていることもあって、そのような決断を下した。ところが、結果は惨憺たるもので、全米で新しいコークの拒否運動と従来のコークの再導入運動が起こり、もとのコークの味に戻し結果売り上げを伸ばした。この運動を支えたのが、アメリカのベビーブーマー達だった。コカ・コーラ社の失敗は、炭酸飲料を消費するのはティーンエイジャーだけという統計を重視して、ボリュームのあるベビーブーマーを無視した点にあった。」
 以上のことから日本でも同じことが言えるのではないか。逆に団塊世代のニーズに合うものを商品化したら消費の大きな波を生み出せるのではないか。
 この巨大なマーケットの消費者が何を考え、どんな趣向を持つのかを考えなければならない。少子化による老後の不安、リストラ、先の見えない経済不況への漠然とした不安によって、消費意欲の減退が引き起こっている、という見方が多くなされる中で、堺屋太一氏は異論を唱え、団塊世代の本音としては、楽しさや誇りを持てることには支出を増やそうと思っている、としている。日経ビジネスの調査では、2010年までに貯蓄残高が各年齢に応じて順調に増えると仮定した「楽観シナリオ」と、退職金カットや年金の受取額が減少して、貯蓄が現在の6割しか増えない「悲観シナリオ」の2通りで試算している。「楽観シナリオ」では、団塊世代が保有する資産の合計額は74兆8000億円、「悲観シナリオ」では、64兆3000億円とされている。前後3年の世代よりも「楽観シナリオ」「悲観シナリオ」共に多額になっている。一人当たりで見ても、上下の世代と同等かそれ以上の資産を保有している。つまり、団塊世代はリッチな世代であるということだ。

 団塊世代のマーケットは、消費が活性化すると仮定した場合、規模の論理からしても経済への影響は非常に大きい。団塊世代の傾向として、頑固なところがあり、テレビCMなど第3者が言うことには簡単に踊らない、品質、価格に対してシビアだが、好きなものには思い切って投資するというところがある。ここで団塊世代の質へのこだわりに焦点を当てた新聞記事を見てみる。内容は、団塊世代を含め中高年層の求める洋服の好みが変わってきているというものだ。一般のミセス向けのファッションはいかにも「おばさん」風であるが「いつまでも若々しい着こなしを楽しみたい」という希望に応え、衣料品メーカーや小売店が新商品を取り扱い始めたというのである。最新の流行を取り入れながら、体形の変化を補う形状や大きさを取り入れて、団塊世代をターゲットにしたブランドが生まれたのである。男性については、TPO、サイズ、色、小物などの演出についても注意し、いきいきした雰囲気になるようなコーディネートを意識した商品を取り扱い始めた。このように、団塊世代は従来通りのものにそのまま従うのではなくどこか「こだわり」をもつ世代であるように思われる。
 葬儀を意識する年代は50代くらいからであるように思う。近親者の葬儀を想定する場合と自分の葬儀を想定する場合の2通りが考えられるが、上記の団塊世代の傾向が葬儀に関してもあてはまるのかを第二章ではアンケート結果をもとに検証していきたいと思う。
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第二章 アンケート実施記録、ヒアリング記録
1.アンケート実施記録
 本章では、インターネットでの葬儀アンケートと大本山総持寺瑞応殿祭りでの来場者アンケートをもとに、団塊の世代は葬儀に関してどのような傾向があるのかを見ていきたい。

《インターネットアンケート》
公益社お葬式アンケート
実施期間 2002年8月26日〜9月9日
集計母数 3145件
50歳代  314名
*ここでは団塊の世代が50代に含まれるので、それを抽出する

《総持寺アンケート》
大本山総持寺瑞応殿祭り来場者アンケート
実施期間 2002年9月22日〜24日
集計母数 263件
団塊世代 35名
*ここでは団塊の世代(51−55歳)を抽出する



全体では、「具体的に考えたことがある」(約8%)
       「漠然と考えたことがある」(約46%)
       「考えたことがない」 (約46%)
50代では、「具体的に考えたことがある」(約13%)
        「漠然と考えたことがある」(約56%)
        「考えたことがない」(約31%)
 この結果からは葬儀について関心が高いとは言えない。「具体的に考えたことがある」人は全体の13%にすぎない。



 インターネットアンケートでは、年代に関わらず「世間並みの葬儀を行いたい」か「質素に行いたい」のどちらかである。総持寺アンケートの団塊の世代では、「質素に行いたい」が(61%)とかなり大きな数字になっている。「世間並み」にしても「質素」にしても抽象的であり、人によって違いがみられると思われる。そこで内容をさらに抽出してみる。

抽出内容・・世間並みの葬儀を行いたい、質素に行いたい
(50代、インターネットアンケート)
(表1)
世間並みの葬儀を
希望する方の場合
質素な葬儀を
希望する方の場合
葬儀について具体的に
考えたことがある
13%
14%
葬儀について漠然と
考えたことがある
53%
60%
葬儀について
考えたことがない
34%
26%
どのくらい費用が
かかると思われるか
100万〜150万(27%)
150万〜200万(26%)
50万〜100万(32%)
100万〜150万(25%)
希望される祭壇
白木祭壇(43%)
デザイン祭壇(32%)
白木祭壇(27%)

 「世間並みの葬儀をしたい」と答えた人の葬儀への関心度はどうかというと、
  「自分自身の葬儀について漠然と考えたことがある」(53%)
  「自分自身の葬儀について考えたことがない」(34%)
  「自分自身の葬儀について具体的に考えたことがある」(13%)
とやはり関心度としては低いと言わざるを得ない。具体的に考えていないからこそ「一般的に」にと考える傾向にあることが分かる。
 また、葬儀を行う場合、どのくらいの費用がかかるのかという質問に対し、100万〜150万と150万〜200万を選んだ人が僅差である。
 また祭壇については、白木祭壇を選んだ人が43%とかなり多い。
 「質素に行いたい」と答えた人の葬儀への関心度はどうかというと、
  「漠然と考えたことがある」(60%)
  「考えたことがない」(26%)
  「具体的に考えたことがある」(14%)
と世間並な葬儀を希望している人よりも漠然と考えている人の割合が高いが、やはり具体的に考えている人は14%と低い。また、費用についてはどうか。最も割合的に多いのは、50万〜100万(32%)で2番目に多いのは100万〜150万(25%)である。祭壇について意外なのは、最も割合が大きいのが空間を重視した「デザイン祭壇」ということである。安易に質素希望だからと言って従来からの白木祭壇を選ぶということではないようだ。また、花祭壇は生花祭壇ということで、まず高いと思う人がいるのも事実である。質素にしたいがセンスのあるものを、と思う人と、質素にしたいから特にこだわらない人と両方いる。



 (グラフ3)より、精進落としの料理はどのようなものを用意したいかという問いに対し、「自分の好きな料理」「故人の好きな料理」など、自由な選択肢があるにも関わらず、「葬儀社のすすめる料理の中から選んで用意したい」を選んだ人が最も多い。サンプル全体では(38%)、団塊世代が(47%)という結果となった。



  (グラフ4)より、費用の決め方について、「すべての事柄について一つひとつ検討して決める」方法が葬儀へのニーズに対し最も忠実であるように思われるが、この選択肢を選ぶ人は少ない(全体25%、団塊世代20%)。特に、団塊世代に関して言うならば「葬儀社が提案するセット料金から決めたい」を選択した人の割合は40%と大きい。サンプル全体では29%である。葬儀費用全体として、膨れ上がる心配のない「セット料金」=安心 なのだろうか。
  (グラフ3)の精進落としの料理の決め方についても、(グラフ4)の費用の決め方についても、団塊世代の選択した結果からは『保守的』な印象を受ける。
 次に実際費用としてはどのくらいを考えているのかを見ていく。インターネットアンケートでは、200万円以下の葬儀を希望している人が約8割であり、当社世田谷営業所における過去2年間(H13.H14)の葬儀施行データからも同様の傾向が見られたが、サンプル全体と団塊世代の間で異なる特徴は見られなかった。

 自分らしい葬儀を希望している方について(総持寺アンケートより)
 参考であるが、「あなたが葬儀を行う場合、どのようにしたいと考えますか」という質問に対し、a世間一般的な葬儀をしたい b自分らしい工夫のされた葬儀をしたい cなるべく質素に行いたい dその他 という選択肢を用意したところ、「b自分らしい工夫のされた葬儀をしたい」を選んだ人を年代別に見ると、面白い結果になる。年齢が上昇するにつれて、自分らしい葬儀を望む人の割合が大きくなっていくのである。年代が若い人の方が自分らしいものを望むであろうと予想をしていたので、意外な結果である。祭壇に関しては、花祭壇を希望している人の割合がかなり大きい印象を受けた。
 インターネットアンケート(50代抽出)のフリーアンサー欄の一部を紹介する。「シンプルな葬儀を望む」「亡くなった本人を知っている人だけのお葬式の方が心に残るものがあると思う。そのような小さな部屋や祭壇も用意してくれたら良いと思っている」「音楽葬的なものをするか、葬儀をしないか」「金額だけでなく、亡くなった人の生前の考えや、生活の様子などをよく聞いてその人に喜んでもらえるような葬儀がいいと思う」「本人の経歴がわかるようなしおりがあれば良いと思う時がある」など。これらのコメントからは、葬儀に対する希望を柔軟に受け止めて欲しいという気持ちが伝わってくる。

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2.ヒアリング記録

 50歳代前半の方に、どのくらい葬儀に対する関心があり、喪主の経験のある人は施行した葬儀に対してどんな感想を持っているのか、またどんな要望を持っているのかということを聞いた。対象者は、主婦、町会関係者、会社員、地域の「おやじ連」所属の人と様々だが、いずれも団塊世代の人たちである。

■葬儀について考えるきっかけ
 ヒアリング調査を実施した結果、自分の葬儀について考えている人は、考えるきっかけとなるような出来事があったようだ。以下は一例である。故人は(ヒアリング対象者の)ご主人の叔父にあたるが、葬儀に関して何の希望も残さず他界してしまい、残された者はとても大変だったという。「叔父ならこうする、これを選ぶはず」と想像し、葬儀の内容を決めていったということだが、やはり何を基準にしていいのか分からないところが多々あったとのことだ。だから、自分達の葬儀の時には、残されたものが困らないように「これだけはして欲しい」という希望を伝えておき、また、葬儀にまつわる手続き、遺留品の分配にまつわる一切の事について明記しておくつもりだという。一方叔母は、必要と予想される費用だけでなく、葬儀の内容に関する希望まで自分自身で用意して亡くなったので、葬儀についてはただ叔母の残した指示に従うだけで良かったとのこと。「もし自分が亡くなったら葬儀をこの式場(遠方)で執り行い、親戚の移動費、葬儀代金等もこれで」と一切用意してあったらしい。故人の遺志があったことで、親戚同士の揉め事もなく純粋に故人とのお別れに集中出来、残された者に迷惑をかけることなく自分でしっかりと準備して逝った叔母に対し、「死に際が美しいね」と遺族の心を和ませたとのことだ。亡くなってしまった後は、口出しも出来ないし弁解も出来ないのだから、自分の葬儀に関してはしっかり考えておきたい」(52歳、女性)
 一方で、葬儀に対する考えを近親者に対して伝えたり、また聞いたりすることについてどう思うかを尋ねたところ、以下の様に答えた人もいた。「そこまで出来ない。死へのタブー意識があるから葬儀に対する希望について聞けない。また、誰を葬儀に呼ぶかを考えている人もいるが自分にはそこまで出来ない。そういったことが出来れば子供は楽かもしれないが。しかし正直に言って親や妻の葬儀の際、誰に連絡をしていいのか分からないと思う」(51歳、男性)

《葬儀の内容》
■コンセプト 
 故人らしさを表現するものにしたいのか、それとも世間並みがいいと考えるのか、親戚に恥をかかせたくないと考えるのか、各喪家によって重視するものは様々である。
「まずは自宅へ返してあげたい。みんなにお別れに来てもらいたいから『ただ単に質素に』ということは考えていない。納得のいくだけの費用は出そうと思う」(51歳、男性)「故人の立場にあった葬儀をしてあげたい」(55歳、女性)「自分の時も親しい友人にはお別れに来て欲しい。そのために生前に名前、連絡先をリストアップしておき、訃報を伝えて欲しい。自分が親しくしていた友人の葬儀を知らされず、後でそのことを聞いた時には友人が死んだことを受け入れるのに時間がかかった」(52歳、女性)「悲しい気分だけでなく、前向きでほっとできる雰囲気にしたい」(53歳、女性)

■演出
1)祭壇
 どういった祭壇を希望するかを、白木祭壇 花祭壇 花祭壇よりもさらにオリジナリティの高いもの、と3枚の写真を提示しながら聞いたところ、「自分の時は、絶対生花の祭壇にして欲しい」(51歳、女性・52歳、女性)「母親の葬儀の時に花祭壇のカタログを見たら選んだかもしれないのに」(55歳、男性)「普通の白木祭壇でよい」(55歳、女性)という答えが返ってきた。3種類の祭壇の費用が同じだとするならば、どれを選ぶかという質問に対しては「花祭壇はいいと思うが、親戚が何と言うか分からない」というコメントも。葬儀では、親族の中で意見が折り合わないことが多々ある。その中で儀式の印象を左右し、また費用面にも大きく影響してくる祭壇決定については、特に注意が必要である。

2)「思い出」の式場展示
 葬儀の際、式場の片隅に故人を偲ぶスペースとして展示等を行う場合がある。そういったことについてどのように思うかを質問したところ、様々な意見があった。「故人が詠んだ短歌が飾ってあって良かった」(53歳、女性)「BGMを流し、写真を何枚か飾っている展示があったが、いいなあと思った」(55歳、男性)「故人は会社人間だったから特にそういったものは思い浮かばなかった」(55歳、女性)「弔問する時には、待ち時間に故人を思い出しながらゆっくり見られるので良い」(52歳、女性・55歳、男性)「喪主側であるなら悲しすぎて展示はしたくない、見えるものではなくて心を大事にしたい」(52歳、女性)「家族はある意味、葬儀であきらめをつけなくてはならない。だから、亡くなって間もないと、展示等はきついかもしれない」(51歳、男性)誰のための葬儀なのかということにより、展示一つでも考え方が違ってくることが分かる。
 また回答者の中に、花火を打ち上げたという人もいた。

■費用 
 葬儀費用の決め方については「納得のいくものに対価として支払いたいので、一つ一つ項目ごとに費用を決めていきたい」(51歳、男性)「セット料金になっているものの内訳は知っておきたい」(53歳、女性)「ある程度セットになっていてそこから必要のないものは省き、またランクを一つ上げたり下げたり出来れば一番良い。とにかく無駄なところに費用をかけたくない。火葬場併設の式場を利用し、車両費(霊柩車、ハイヤー、マイクロバス)をうかせた分、花祭壇の費用にまわしたい」(52歳、女性)
 費用項目一つひとつ吟味して決めてもらうことが満足につながるように思われるが、総額で概算いくらになるのかをまず把握しておきたいと考えるのが当然である。そして現実問題、打合せ時には心労と疲労が重なり、一刻も早く葬儀に関する諸々の事柄を決めてしまいたい、と思う人もいることを考慮すると、ある程度のセット料金を提示することの方がむしろ親切な場合も多いかもしれない。

■形式、合理化 
 繰り上げ初七日法要、返礼品の当日返しなど、昔に比べてお葬式の形態が合理化してきていることについてどう思うかについて質問したところ、合理化に賛成の意見が多かった。しかし地方、地域のやり方に従って行う、という意見もある。また、最近の傾向として会社員は時間的な都合で通夜に弔問する場合が多い。この観点からの質問について「自分は告別式の『告別』という意味合いを個人的に通夜に託している」という意見もあった。葬儀に参列する際の理由として、会社の関係等で義理的要素が強いからなのか、どうしても参列したい友人のお葬式であるからなのかを質問したところ「儀礼的が多い。どうしても参列したいと思うような葬儀は10回か20回に一度」(54歳、男性)さらに義理的要素の大きい葬儀参列のケースはどうなると思うかを質問したところ「日本の宗教的文化から続くと思う」(54歳、男性)「我々の世代では続くと思うが、少子化で参列経験も少なくなるだろうから子供の世代は分からない」(55歳、男性)ということだ。

■エンバーミング
 エンバーミング処置について、一通りの説明後(ドライアイスに代わる遺体の衛生保全処置、遺体を生前同様美しい状態に保つ等)、エンバーミング処置を望むかを質問したところ「先に亡くなったおじいさんのところに早く行かせてあげたかったから、特にエンバーミング処置の必要性がなかった」(51歳、男性)「長い時間をかけてゆっくりお別れしたい気持ちもあるが、早く火葬までし終えたい気持ちもある。自然なものに手を加えたくない。だが、子供だったらいつまでも離したくないかもしれない。でも自分が60代くらいまでに死んでしまったらエンバーミングしてもらいたい」(51歳、女性)「エンバーミングという処置は聞いたことはあるが、日本は火葬がほとんどだし、火葬してあきらめる。長い間手元においておくという意味では、成仏できない気がする」(54歳、男性)あまりエンバーミング処置に対して肯定的な意見は伺えなかったが、感染症の問題についての話をした時に興味を示していたので、私自身がもう少し詳しい説明と処置後の満足度について伝えられたとしたらもっと肯定的な意見が出たかもしれない。

■事前相談
 「オリジナリティの高い祭壇を組むことが可能だとしても、事前にどんなことが出来るのかを知っておかなければ、いざ葬儀という時に希望を出すことは難しい」(51歳、女性)「間近にせまっている時だったら、葬儀、死について考えたくないし、まして事前相談なんてできない」(52歳、女性)祭壇に関してと同時に、先に述べた費用についても事前に知識を得ることで、万一の際の漠然とした不安を解消することが出来、また費用、商品について葬儀社が提示するバリエーションに対しても、落ち着いて目を向けることが出来るのではないだろうか。

■団塊世代としての意識
 「団塊世代は、葬儀のことよりもリストラについてなど今ある現実問題に関して考えることが多いと思う。まず、自分の生活をどうするか。終身雇用と言われていて60歳までは働けると思っていたのに、今は55歳までになるかもしれない。もっと働きたいなら職種を変える必要がある。そうすると当然給料も下がる。再就職先を見つけるにも特殊技術を持っていないと難しい。また将来的には子供にも面倒を見てもらえない。そう考えると蓄え、積み立てを考えなくてはならないから、子供には『葬儀は質素に』と言っておかなければならない。自分の父には、墓を守ってくれと遺言を残されたが、自分は守っても、子供にまで守ってもらえるか分からない。自分が亡くなった後の始末もある程度やって欲しいが子供に期待し過ぎない」(51歳、男性)「特に団塊の世代としての意識はないが、子供も自分達も一人ひとりが自立出来ればいいと思う。少子化、高齢化の時代でみんなが自立しないとつぶれてしまうのではないか。定年後の人生のためにも、こういった会(おやじの会)でいろんな人に会い、いろんな話をして楽しみたい。自立するための準備期間を、定年を迎えてからではなく40歳からと長めに設定した」(55歳、男性)質問を変えて、日常で葬儀についてなかなか話題にならない大きな理由は何ですかと尋ねると「今を生きることで精一杯。80歳まで生きるつもりだから、先のことは考えにくい」(55歳、男性)とのこと。
 ヒアリングを通して思うことは、私達が考える以上に葬儀への関心が低いということである。一度葬儀を出した経験のある人でも、その時葬儀について考えることはあっても、自分の葬儀の時にはこうして欲しい、と考えるまでには至らない。葬儀は無事に終えれば一安心と考え、自分の葬儀までには時間があるから慌てて考える必要性がないと思うからであろう。まして万一の時には、大事な方を亡くされて考える余裕はなく、故人のために何かしてあげたいと思っても何をしたらいいか分からない、従来ではない形を示されても急には取り入れられないと考えるようである。

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まとめ 団塊世代の今後の葬儀
 団塊世代は、日本経済と連動しながら歩みを遂げてきた。戦後に生まれ、高度経済成長を経て生活が安定する中で過ごしてきたが、現在は様々な問題を抱え、老後への漠然とした不安がある人が多いようだ。「混沌とあいまいさ」という言葉が団塊世代の特徴を表すものであろうと前述したが、はたして当たっていただろうか。アンケート、ヒアリング記録からは、その影が少し見えてくる。「混沌とあいまいさ」とは、「一世代前が追求した企業の論理と滅私奉公に対し、団塊世代は会社よりも自分の生活、建前よりも本音という風潮がある一方で、現実は前の世代が切り開いたものを大衆化させただけではないか」という意味で使っているが、アンケートでは、団塊世代は意外と「保守的」であるという結果が得られ、ヒアリングからは、団塊世代の葬儀への「関心度が低い」ことが分かった。新しい葬儀形式を選択しない理由には「体裁」というものが大きくのしかかっているようだ。これは、親戚、近所、会社に対してなど様々であると思われる。(グラフ2)からも分かるように「施主となった場合、どのような葬儀を行いたいと思いますか」という問いに対し、「質素に」と同様の割合で「世間並に」を選んでいるからだ。とは言っても序章で述べた母達のように「こだわりをもつ世代」であることに変わりはない。一章の事例からも分かるように、従来通りのものに不満のある人もいる。
 今回は、「団塊世代独自のニーズとは何か」を探るつもりで調査を行ったが、想定した結果が得られなかった。その理由としては、葬儀が非日常すぎて普段の生活で話題になりにくく、まだニーズを得られるような段階に到達していないからと思われる。当社としては日常生活でもっと葬儀に関心を持ってもらうにはどうしたら良いかを考えなければならない。それはまず、葬儀について考える「きっかけ作り」をすることであるように思う。しかし、葬儀について事前に考えるというこの一歩をなかなか踏み出さない人が多い。したがって当社がこれからすべきことは、「葬儀について考えることは当然のこと」という意識付けだと思う。葬儀について一度真剣に考えたことのある人は、次に葬儀について考える時には1回目のような抵抗感がなく、テレビなどで取り上げられた時にも興味をもって見ることが出来るという。当社としては意識喚起のためのPRが必要であり、次のステップとして事前相談を積極的に行わなければならない。団塊世代の方にヒアリングで3パターンの祭壇について伺った際、オリジナリティの高いものをご覧になって「こんなのもあるのねえ、でも事前に知っていないと突然葬儀の時に提示されても選べないわ」という答えがあった。葬儀が少しずつ自由なスタイルに変化し、自分の希望を取り入れた形で執り行うことが出来るようになってきているという事実をお客様が知らないと、要望として葬儀社に伝えることは難しいと思われる。
 一般の方に葬儀に関して興味を持っていただく方法として、事前相談またはこちらから出向いての出張説明が必要である。また、実際の葬儀においては参列者への提案も出来る。例えばオリジナリティの高い葬儀を増やすことで、「こんな葬儀もあるのね」と参列者への意識付けが出来る、ということだ。
 また、営業所に相談コーナーを設け、「公益社に行けば何でもきちんと教えてくれる」と思われることが非常に重要であり、そのためには常駐している者が豊富な知識を持っておくべきであるように思う。
 また、費用に関しては、アンケート結果から「葬儀への費用は200万以下で」と考えている人が、団塊世代を含む50代では60%以上であり、費用の決め方で「葬儀社が提案するセット料金から決めたい」という考えの人が40%いることが分かった。
 今回の調査では、団塊世代がどんな形式の葬儀を望んでいるのかということを具体的には提示できなかったが、今後はもっと潜在的ニーズを引き出しやすい形のアンケートの質問を検討し、数多くのヒアリングを実施していきたい。
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[参考文献]
岸田ひろ子著 『なるほど!マーケティングデータブック団塊編』 2001年5月25日 (株)スタープレス
堺屋太一著 『日本の盛衰』 2002年10月29日 PHP研究所
天野正子著 『団塊世代・新論』 2001年2月15日 (株)有信堂高文社
弘兼憲史著 『我ら団塊世代の反論』 2001年2月15日 (株)講談社
日経ビジネス 『団塊が引退する日』 2002年11月11日第1166号 日経BP社
日本経済新聞2001年12月3日記事
日本経済新聞2003年2月27日記事
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