式場論

〜選ばれる葬儀式場。その魅力は数値化できる〜

公益社 世田谷営業所
安 宅 秀 中

 目 次
第一章 式場選びの現状
第二章 ハフモデルの改良と検証
 
ハフモデルとは
  距離について
  広さについて
広さの要素
最大収容力の求め方
  その他のパラメーターの検証
第三章
葬儀式場用修正ハフモデル
葬儀式場用修正ハフモデル
  世田谷区用賀会館のデータによる検証
  α地区に式場を作った場合のシミュレーション
第四章 今後の式場について




第一章 式場選びの現状
 葬儀という商品を購入するとき消費者は正確な判断など行わない。
 なぜなら消費者は「心理的安定」「時間」「情報」の3つの要素を制限されているからである。
 1つ目の「心理的安定の制限」とは、肉親が亡くなり強度のストレスにさらされ、日常であれば当然出来るはずの正常な判断が出来なくなっている状態のことを指す。
 2つ目は「時間の制限」である。
 車を衝動買いする人はめったにいない。
 ところがお葬式というのは亡くなってから数日以内に執り行う。肉親が亡くなってから数時間後には普段めったに使わない額の買い物をしなければならない。つまり決断にタイムリミットが存在するのである。
 3つめは「情報の制限」である。
 肉親のお葬式というのは人生に何度もあることではない。そして死を直視する機会はあまりない。本能的に嫌う。その結果消費者は葬儀の流れや価格などの情報をほとんど持っていないというのが現状である。
 まず、以上の3つの問題点を認識することが重要である。

 次に東京都生活文化局が平成14年に発表した都内の消費者を対象に行ったアンケート結果を見てもらいたい。(以下本文中で示す消費者の意識に関する調査の図表は全てこのアンケートの結果を使用している)



 質問に注意してほしい。「あなたが葬儀社を選ぶとしたら」と尋ねている。これは「上記の重視点を判断の基準として葬儀社を選べたらいいなと」いう期待であり、必ずしも実際に上記の理由で葬儀社を選んだわけではない。(このアンケートでは葬儀経験者に実際に式場を選んだ理由を尋ねてはいるが、葬儀社を選んだ理由を尋ねてはいない)現実は「こんなはずではなかった」と、期待を裏切る部分も大きいのである。
 このような結果になってしまう理由は上記の3要素(心理的安定、時間、情報)の制限のためである。(もちろんマクロ経済学は経済予測を見誤る要因の一つとして「消費者は必ずしも合理的な経済活動を行わない」という事実を前提条件としているのだが、葬儀という商品を購入するときにその傾向は顕著である。)
 上記のアンケートはシステムとサービスに関する問題、言い換えればソフトの問題に対しての質問項目を使用している。しかしそれぞれの葬儀社のソフトの優劣をうまく消費者に伝えることは難しい。特にマス媒体でどんなにサービスが良いとアナウンスしても消費者にはうまく伝わらない。説得力を持つのは体験情報のみではないかと思われる。また、我々葬儀社同士でさえお互いのソフトの良し悪しを主観以外の方法で判断するのは難しい。ましてや客観的に判断した上で数値化するのは不可能に近い。実際に事前相談を前面に打ち出している当社においてさえ、「近所にあって、式場を持っていたから」というハード優先の依頼理由が一番多い。
 都市部では自宅で葬式をする事は稀である。それ故式場と葬儀社選びは密接に関係している。
 これは当社の経営戦略が会館設立と密接にリンクしてきたことからもうかがえる。
 つまりこれからの葬儀社が会館所有を前提とするなら、(パブリックイメージ上は)式場の魅力こそがその葬儀社の魅力なのである。

 そこで、ソフトの面はともかくハードに関しての評価基準を確立することがこの論文のテーマである。もっと具体的に述べるなら、葬儀式場の集客力を数値化する計測モデルを作るということである。

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第二章 ハフモデルの改良と検証
ハフモデルとは

 仮にある消費者が買い物に出かけたとして、いくつかある店の中でそのお店を選んだのはそのお店に集客力があったからである。
 小売業にはその集客力を数値化して表すハフモデルというものがある。そして、欧米で生まれたハフモデルを基に日本の状況にあわせて改良されたのが通産省版修正ハフモデルである。




 上記通産省版修正ハフモデルにおいては「移動時間」と「商業集積の売り場面積」をパラメーターとし、「集客力は、売り場面積に比例し、移動時間の2乗に反比例する」という考え方をする。
 小売業、たとえば百貨店やスーパーマーケットの場合、買い手の居住地から売り場までの距離は近ければ近い程便利である。また売り場面積が広いほうが商品も豊富な訳であるから、その分魅力があるということである。

 このハフモデルを葬儀式場の分析に応用出来るか検証する。
 下記のアンケート結果を見てもらいたい




  民間の葬儀式場(斎場)の場合、交通の便が良い事を1番の理由としてあげている。つまりパラメーターの1つとして「距離」(正確には移動時間)を使うことは有効である。

 2番目に葬儀式場の広さを選択理由としている。よって「広さ」もパラメーターとして使えることがわかる。
 しかしここで小売業と葬儀の異なる点を検証する必要がある。それは「日常」と「非日常」である。

 小売業において、ある店までの距離とその広さについては、日常的に物を買うことによって学習出来る。一方で、葬儀のような非日常的イベントでは消費者は学習出来ないのではないかとも思われるだろう。
 確かに下記のデータを見る限り消費者自身が葬儀という商品を購入する機会はめったにない。




 購入するとすれば、自分の親のどちらかが亡くなった場合、もしくは自分の配偶者が亡くなった場合ぐらいであろう。
 そうすると通常「葬儀」という商品を購入するのは人生で1、2回である。
 しかし式場を選ぶ場合、消費者つまり遺族は遺族自身としての視点の他にもう一つの視点を持つことになる。
 参列者としての視点である。




 グラフからも分かるように、葬儀という商品を自分自身が購入する機会は少なくても、参列する機会はある。特に葬儀で喪主の立場を受け持つ世代ほど多く参列する傾向にある。3ヶ月に一度参列する葬儀で学習する事は何か?

 式場が「どこにあるか」と「どれくらい広いか」、言い換えるなら「場所」と「参列者収容力」に関しては学習していくのである。肉親が亡くなって、心理的に不安定で、時間が無くて、情報が不足していても式場の場所と収容力に関しては事前に学習されているのである。したがって多くの人々の認識の平均値は、実際の近似値に集約していく。

 以上のことから距離と広さをパラメーターとして葬儀式場用のハフモデルを作り、検証する。

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距離について
 小売業におけるハフモデルの場合、自宅から売り場までの移動時間をパラメーターの一つとして使っている。
 葬儀式場を選択する場合も自宅から葬儀式場までの移動時間を想定して選択する。ただしここで遺族の視点以外にもうひとつの視点、参列者つまり葬儀に来てもらう人の視点も加わる。
 参列者のほとんどが近隣からの人間の場合、式場までの距離は遺族の視点とあまり変化がないが、遠方からの参列者が多い場合はこの限りではない。
 これらの概念を「参列者集団から式場までの距離」と規定する。
 なお実際は交通障害(川や渋滞しやすい道路など)を考慮に入れて移動時間を考えるべきである。
 東京23区に限っていえば平地であり道路や交通手段も整備されているので移動時間は距離に比例することが多い。
 また葬儀式場までの移動時間を考える場合、参列者層に高齢者が多いという事を考慮しなくてはならない。彼ら自身がハンドルを握る可能性は低く、自家用車で送ってもらえるケースも頻繁にあるわけではない。従って、彼らの現実的な移動手段としては、徒歩、電車、バスであると想定出来、その他手段としては、他人の運転する自家用車、自家用車、タクシー、自転車であると考えられる。
 彼らの居住地域と式場までの交通機関が制限されている場合によっても(例えば駅から遠い等)移動手段は異なる。また電車やバスを使う場合は待ち時間や徒歩との組み合わせも考える必要がある。
 上記の交通手段から参列者集団が最も選択する可能性が高いと思われるものを選び、移動時間を測定する。
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広さについて

 小売業においては売り場面積が広ければ広いほど商品の品ぞろえも豊富ということがいえるので、面積の広さに魅力が比例するという図式が成り立つ。ただし葬儀式場においてはこの法則はそのまま当てはまらない。

 なぜなら葬儀式場における「広さ」の概念には3種類あるからである。
 1つは式場の座席数である。
 2つ目は式場の敷地内に参列者を含めてどれだけの人数が並ぶことが出来るかという、式場自体の収容能力である。
 3つ目は駐車場台数である。

 このうち3つ目の駐車台数においては都心の駅に近い地域では駐車台数は少なくてよく、郊外型の式場では駐車台数が多くなければいけない。また、式場の広さとのバランスも重要である。
 この点でパラメーター化するのは難しいので省く。

 広さにおいては次の2つの制約条件が存在する。

遺族親族は葬儀の最中、式場内の座席に座ったままなので、座席の数は遺族親族の数よりも多くなければいけない。
当然のことながら遺族親族と一般参列者の数を合わせた数、つまり葬儀参列者の総数よりも式場全体の収容数が多くなければいけない。
 (本文では (葬儀)参列者=遺族親族+一般会葬者 と定義する。)
次に心理的に1つの傾向が存在する。
遺族親族と参列者を合わせた数よりも座席数が極端に多くてはいけない。

分かり易く図式化すると以下のようになる。

遺族親族の数<式場内の座席数
葬儀参列者の総数<式場全体の収容人数
式場内の座席数×係数<葬儀参列者の総数

 ここでに出てくる式場全体の収容人数(キャパシティ)の求め方を述べる。
 まず式場内の座席数がカウントされる。
 次に立って並ぶ参列者の人数である。一般的に1坪(約3.3平方メートル)に9人が並ぶことが出来るとされている。(2.73人/)(イベント時の事故回避のための誘導マニュアルによると群集流の人口密度が3人/を超えると将棋倒しの可能性が生じる。さらに5人/を超えると通行規制を行わないといけない)
 この人数の合計を「参列者のストック」と呼ぶことにする。
 ただし葬儀式場はコンサートホールとは違って参列者をずっと収容し続けているわけではない。一般参列者は焼香や献花が始まると移動し始めるので、「参列者のフロー(流れ)」の状態になる。
 また動線も重要なポイントとなる。理想として通路が常に一方通行であること、階段、エレベーターなどの上下移動がないこと、一度に多数の焼香者を誘導するために式場内の焼香スペースは広い間口(1人分で最低50センチ必要)であることなどが挙げられる。(注:葬儀社の社員なら「3尺(90センチ)のテーブルでストレスなく二人焼香できるから最低50センチと言うのはおかしい」と感じるかもしれない。しかしこの場合テーブルの両側に空間が存在している。3尺テーブル2台を隙間なく並べて(幅180センチ)4名の焼香をしてみてほしい。成人男子なら少々窮屈なはずである。テーブルの間を20センチほど空ければうまくいく)
 1回の焼香にかかる時間は平均30秒間(焼香動作の他に遺族への立礼を含む)、50センチが1人分の焼香に必要な幅とすると、1メートルでは2名、よって焼香時のフロー能力は2人/30秒≒0.07人/m・sとして表すことが出来る。
 イベント時の事故回避のための誘導マニュアルを参考にすると、階段を上るときの通行能力(流動係数)は1.2人/m・s(幅1mにつき1秒間に1.2人が進むことが出来る)、ちなみに災害非難時の移動時は1.5人/m・sと想定されている。
 葬儀式場の場合、参列者に高齢者が多い事を考えて、動線フローの通行能力を0.9人/m・sと設定する。動線に階段が含まれているときは通行能力を0.6/m・sまで落とす必要がある。つまり幅1mの通路と幅1.5mの階段の通行能力は等しいと考える。
 ただし通路の総面積を考えるのはあまり意味がない。通路で一番細くなっている部分(通称ボトルネック)の幅が重要である。
 焼香エリアの幅をaメートル、通路の一番細い部分をbメートルとすると、最大フロー状態になったとして
 0.07am≦0.9bmが成立する必要がある。
よって焼香エリアの幅≦12.85×通路の一番細い部分(m)となる。

(例) 通路の一番狭いところが50センチだとすると0.5×12.85≒6.4となり6.4メートル幅以上の焼香エリアを確保しても無駄である(ボトルネックで流れが停滞する)ということである。

余談だが焼香台の数をcとするとc≦2aなので最大フローの状態の場合
 0.07×1/2c≦0.9b⇔c≦25.14b
 ボトルネック幅bが0.5メートルでも12台焼香台を置けるということは、人が1人通れる幅があれば現実には全く動線上問題がないということである。

 ちなみに用賀会館の場合、ボトルネックは司会台脇の式場出口の幅50センチの式場出口である。
 一方で焼香エリアの幅は3メートル確保できるので3メートル<12.85×0.5=6.42 となり動線上特に問題のないことが分かる。
 通常の建築構造であれば、動線のボトルネックが焼香台数を制限するケースは稀であるといえる。
 1人の焼香時間は平均30秒であるので総フローの焼香可能能力は「焼香可能能力(総参列者数)=一度の焼香(又は献花)可能数×2×焼香時間」となる。
 またエレベーターを挟んだ動線はボトルネックとなるだろうか。もちろんエレベーターの乗降可能人数にもよる。10人乗りのエレベーターに乗り、ワンフロアー分移動する動きに必要な時間は、平均45秒程である。つまり1分間に約12名のフローである。ただし焼香場所の前に参列者何十人分かのプールを作ってしまえばエレベーターのフロー数はあまり意味がなくなる。
 関東においては通夜の弔問客数は告別式の参列者数の約3倍である。したがって、通夜の弔問客数をメインに収容能力を考えればよい。通夜の本来の趣旨としては通夜の弔問客数が多いのはおかしいのだが、会社勤務を考えると平日昼間の参列は難しいことからどうしてもこのように偏った数となる。
 また関東では通夜の弔問客に食事を振舞う習慣がある。このため食事用の部屋の収容能力も考える必要があるのだが、焼香を必ず全員が行うのに対して、食事は希望者のみである。また式場全体の収容力と食事用の部屋の収容力が極端にアンバランスになっているとは考えにくい。さらに食事の部屋が満席なのに無理に食事をしていくとも考えづらい。以上の3点からこの食事の部屋の収容能力については考慮しないこととする。
 焼香は通夜の場合開式10分後位から始まると仮定する。
 開式前から焼香(または献花)が始まる段階までの収容能力が一番の問題となる。フローの状態になってから敷地内の収容者数が増え続けるとは考えづらい。

 以下にフローとストックの求め方の具体例を挙げる。

例−1 用賀会館のフロー
  用賀会館の場合、式場のスペースと、ボトルネックの関係から一度に6名が焼香することが可能である。焼香時間が40分与えられていると仮定して「6名×2×40分=480名」の焼香が可能である。

例−2 用賀会館のストック
  80席の式場×2=160人 
1階の待機空間の広さ30.6
 30.6×2.73(1に当たりの人数)≒83人
3階の待機空間の広さ70.8 
70.8×2.73(1当たりの人数)≒193人
フローを考慮しないストック数は 160+83+193≒約450名である。

 フロー能力は焼香時間に大きく影響する為、複数の式場の最大収容能力を比較する際、ストックを基準にした方が精度が高い。

遺族・親族と参列者を合わせた数よりも座席数が極端に多くてはいけない。
 (式場内の座席数×係数<葬儀参列者の総数)について一例を挙げる。
 遺族・親族の数が10名程度の密葬で、参列者がいない場合を想定する。座席数だけが異なりその他の条件が全く同じである80席の式場と40席の式場が存在したとして、その場合遺族は40席の式場を選ぶ可能性が高い。
 なぜなら余りにも大きな式場を選択すると空席が多くなり、かえってさびしい雰囲気がしてしまうからである。
 経験上、全体の参列者が座席数の半分を切った時点で、なおかつ他に選択出来る式場があった場合、心理的抵抗が生ずるように思われる。
 よってについては個人差があり、数値化が難しいので条件としては採用しない。

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その他のパラメーターの検証

つぎに「距離」と「広さ」以外に使えるパラメーターがないか検討してみる。

1.使用料金
 パラメーターの要素として「式場の使用料金」はどうだろうか。
 世田谷区の民間式場の使用料はおよそ20万円前後である。寺院式場にはこれより高い設定も多く見られるが、先程の式場選択理由からも分かるように、檀家であれば希望の如何を問わずその寺院で葬儀をするケースが多いので、使用料金は斎場の選択基準になりにくい。(ちなみに式場選びの根拠を聞いたアンケートでは55/340が「檀家だから」という理由で寺院を選んでいる。)また、使用料の安い公営の式場は絶対数が少なく、使用可能なのはその地域住民のみであるため、一般式場と比較対照は行いにくい。
 現実に式場の料金の違いは数万円程度の差であり、葬儀費用全体に占める割合は低く、選択理由としては弱い。(前記のアンケートで式場の使用料金を選択理由に挙げた人は4.8%しかいない)

2.認知度
 例外として「葬儀参列による学習効果」により上記のハフモデルの法則が当てはまらないケースが出てくる。
 例えば火葬場が運営する「火葬場に併設されている式場」である。
 火葬場の式場は歴史が長い。
 現存する火葬場は都心部にある。戦前、火葬場が創設された当時はかなり郊外に作られていたのであるが、戦後の爆発的な人口増加と都市計画により居住区が放射線状に広がり、郊外にあったはずの火葬場が現在は都心部にある結果となってしまった。
 都内にはある民間の企業の運営する火葬場併設の式場が5箇所ほどある。これらはどれもほぼ100%の稼働率であり、通常3日ほどの予約待ちである。また利用者の居住地分布、いわゆる商圏もおそらく5キロを越え都外近郊からも利用者が多い。火葬場併設の式場は稼働率、商圏の広さともに他の式場をしのぐ集客力を持っているのである。
 このように人気のある理由は、火葬場と式場の距離がパラメーターとして機能しているからである。この距離についてはマイクロバスで移動することもあり、あまり式場選択には影響しないように思われる。しかし、火葬場が式場のすぐ隣というのは心理上優位性を持つ。
 また、長期間にわたり運営されているということは、多くの人が参列し、位置関係を学習するということでもある。
 そして自分が施主の立場になって式場を選ぶときにこの認知は生きてくる。参列者のことを考えるにあたって「あの場所なら皆さんもご存知のはず」と考える。

 ここで位置の認知の概念は現実の移動時間の概念より優先される。(参列経験による交通手段等の移動方法の認知は、移動時間を短縮するとも考えられる。)
 火葬場併設の式場はその長い運営期間によって、その認知を深めてきた。この事を考えれば式場開設以来の延べ参列者数をパラメーターに使う事も可能ではないかと思われる。しかしその式場の、のべ参列者数を割り出すのは非常に困難である。経年の参列者数の認知度をパラメーターとして使用する方法よりも、式場の収容能力が認知を左右すると理解する方が現実的である。したがって式場の収容能力を認知の集積のパラメーターとして使う事が出来るとする。またハフモデル上、式場の収容能力が結果的に集客のパラメーターになるというのは、認知の集積という広告効果の観点からも正しい。

*式場数と収容能力
 例えば100名収容可能な式場を3式場を持つA会館と、200名収容可能な式場を1式場を持つB会館とを比べるとどちらが有利だろうか。現実問題として、よほど誤った動線設計をしていない限り、A会館は残る2式場を待合室として使い、収容力300名の式場として機能させる事が可能である。よって収容力は式場数に関わらず、合計値で計算するものとする。
 またキャパシティが大きければ規模の大きな葬儀も受注する事が出来、施行件数が増える。(無制限に大規模が良いというわけではないが、少なくとも50名より150名の方が有利)

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第三章 葬儀式場用修正ハフモデル
前章までの内容から以下の数式が導かれる。
※葬儀式場用修正ハフモデル
計算条件
遺族親族の数<式場内の座席数
葬儀参列者の総数<式場全体の収容人数
以上の条件を満たすことを前提とする。




たとえばある喪家の近隣にAとBの2つの式場があるとすると
数式1−1


α地区に式場を作った場合のシミュレーション
次に葬儀用ハフモデルの計算式を利用し、α地区をモデルケースとしてシミュレーションを行う。



 3会館とも各々2式場を持つと仮定する。
 最大収容力はそれぞれ
A会館 100名+ 50名=150名
B会館 200名+100名=300名
C会館 150名+ 50名=200名
とする。
 各駅の間隔は700mづつの等間隔であると仮定し、各駅の間は電車で1分とする。参列者に老人が多いことを考慮して、徒歩時速4km、分速なら70mとすると、10分歩けば次の駅である。
 会館Aと会館Cは最寄駅から歩いて1分(70m)、Bは5分(350m)であると仮定する。




*遺族甲の視点
 甲エリアに「遺族甲」が住んでいると仮定する。
 各式場から各々1キロメートルづつ離れており、途中物理的障害は存在しない。
 徒歩だと1000m/70m(1分間に歩く距離)≒14分(移動時間)なので
数式1−1を使って



 甲エリアの人口を3500名と仮定すると
年間予想死亡人口=3500名×0.7%≒25人(潜在的需要件数)
よって
 A式場の年間利用期待値=25人×0.23(A式場の集客力)≒ 6件
 B式場の年間利用期待値=25人×0.46(B式場の集客力)≒12件
 C式場の年間利用期待値=25人×0.31(C式場の集客力)≒ 8件
 上記の数値はもちろん料金体系など他の選択基準がほぼ等しいことを前提とした数値である。また各式場が等距離にあり、移動障害物も無いので車を使う人が多くてもこの期待値は変化しない。

*遺族乙の視点
 では乙エリア在住「遺族乙」の場合を考えてみる。
 乙エリアは電車の路線上に存在しD駅に隣接しており、参列者の多くが電車を利用すると仮定する。
 各駅の移動は電車なら1分づつ、17時から18時に掛けては4分に1回電車がホームに入り、電車待ちの平均時間は2分間とする。

 A式場までの移動時間=2分(電車待ち時間)+3分(電車移動時間)+1分(徒歩)=6分
 B式場までの移動時間=2分(電車待ち時間)+2分(電車移動時間)+5分(徒歩)=9分
 C式場までの移動時間=2分(電車待ち時間)+1分(電車移動時間)+1分(徒歩)=4分



 乙エリアの人口を3500名とすると
  年間予想死亡人口=3500名×0.7%≒25名
よって乙エリアにおける
 A式場の年間利用期待値=25人×0.20(A式場の集客力)≒ 5件
 B式場の年間利用期待値=25人×0.18(B式場の集客力)≒ 5件
 C式場の年間利用期待値=25人×0.61(C式場の集客力)≒15件

 A式場とB式場を見ると、式場の立地の魅力を交通機関が大きく左右することが分かる。
 (B式場は駅から少し遠いことがマイナス要因となっている)
 また必ずしも直線距離で立地の魅力が判断出来るものではないということも分かる。

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第四章 今後の式場について
 それでは今後どのような式場を作っていけばよいのだろうか?
 葬儀式場用ハフモデルを基準にすると、式場は広ければ広いほど良い。しかし土地の価格の問題があり、広さに比例して維持費も膨らむ。そして使用目的もあって、十分に条件を満たす物件を見つけることが困難であるのも事実である。
 それでは適切な式場の収容人数はどれくらいだろうか?
 当社東京地区のA会館データによると、以下の傾向が見られた。

2日間の参列者数については200名規模の式が一番多い。
100名規模の葬儀の場合、低価格の祭壇の選択率が高い。
200名規模の葬儀の場合 中〜高価格の祭壇の選択率が高い。
130万や180万といった価格設定は人気が低い。
白木祭壇の選択比率と花祭壇の選択比率は祭壇価格50〜100万の間では同じである。
花祭壇を選択する人は会葬者が少なくても祭壇に費用をかける傾向がある。
これは無宗教葬など葬儀のスタイルに明確な方向性を持った遺族が、花祭壇を選ぶケースが多いためと思われる。
結論
 祭壇価格と参列者の相関関係を考えると、2日間の会葬者が最大200名まで対応できる式場を作れば、高価格の祭壇を希望する顧客のニーズをほぼ満たすことが出来るので、効率が良い。また前述の通り、関東圏において弔問・参列者比率は
 通夜:告別式=3:1
であるため、最大収容人数は計算上
 200名×3/(3+1)=150名
となる。
 式場内の席数は約40席必要である。遺族・親族は式中ずっと式場内に座っているためである。通常遺族席の数は30席を程度とする考え方が一般的だが、少し余裕を持たせて40席とする。実際遺族親族数が40名を越えることは稀であり、昨年のデータで親族が40名を超えたと思われるのは全施行件数の2パーセントに満たない。40席程度であれば、広すぎる空間に対する心理的抵抗が生じる心配もない。また、遺族席数を40席とするとロビーは
 150名−40名=110名
したがって110名が待機できる広さであれば良い。よって
 110名/2.73(1に立てる人数)≒40≒12坪
に受付と退路の空間をプラスすればよい。(ここで収容人数を考える際にはストックを基準にする)
 第二章−で述べた火葬場併設の式場について葬儀式場用のハフモデルを用いて試算したところ、シェアの理論値が高いことが分かった。総合的に見ると動線、防音等問題点はいくつかあるが、限定された物理的条件上での有効利用という点ではベストなのである。稼動率ほぼ100%も当然か。
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参考文献等
(株)公益社 営業システム データベース
超文章法 野口悠紀雄 中公文庫
立地調査 チェーンストアの実務原則・シリーズ 会田玲二(著) 実務教育出版
大型店出店影響度の読み方−通産ハフモデルの手引き 板倉 勇(著) 中央経済社
図解ランチェスター戦略経営入門サンマーク文庫 ランチェスターシステムズ(著)
最新ランチェスター戦略マニュアル〈1〉戦略入門編 日本ランチェスター協会(編集), 多田真行 ビジネス社
ランチェスターの基本戦略がわかる本 日本ランチェスター協会 三笠書房
商業立地の知識 山下勇吉 日経新聞社
マーケティング戦略の実際 水口健次 日経新聞社
エリアマーケティングの実際 米田清紀 日経新聞社
マーケティングリサーチ入門 牛窪一省 日経新聞社
データベースマーケティングの実際 ルディー和子 日経新聞社
マーケティング用語辞典 村田昭治 日経新聞社
マーケティング 田内幸一 日経新聞社
計量経済学入門 宮川公男 日経新聞社
統計学入門(基礎編) 安川正彬 日経新聞社
統計学入門(応用編) 安川正彬 日経新聞社
現代統計学(上)(下) 国友直人 日経新聞社
NTT タウンページHP(地域別葬祭業者検索用)
東京都生活文化局HP
世田谷区役所HP
大田区役所HP
東京都庁HP
統計局・統計センターHP
東京23区 4万5千分の1地図 昭文社

Special thanks to
玉川貴子(専修大学大学院)
(株)公益社 葬祭研究所 スタッフ
(株)公益社 世田谷営業所 スタッフ

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