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昭和42年10月生まれ
●略歴
昭和62年4月 杏林大学医学部入学
平成 5年3月   同大学卒業・医師免許取得
平成 5年4月   杏林大学大学院医学研究科入学 法医学専攻
平成 9年3月   同大学院卒業・医学博士取得
平成10年4月   杏林大学医学部法医学教室助手
●現在
  • 杏林大学医学部法医学教室 助手
  • 杏林大学医学部付属病院麻酔科学教室 非常勤医師
  • 東京都監察医務院 非常勤監察医
  • 東京都多摩地区警察医会 顧問
  • 警察庁法医専門研修過程、杏林大学保健学部、日本歯科大学、
  • 公益社フューネラルサイエンスカレッジ、他 嘱託講師
 
 現在私は、杏林大学医学部法医学教室に所属し、実務として主に法医解剖を行っています。法医解剖には、死因不明のご遺体や事故などで亡くなられたご遺体に対して行う行政解剖と、事件によって亡くなられたご遺体に対して行う司法解剖の二種類があります。私は執刀医として、このような解剖を行っており、おそらく大学の医学部や病院に勤務する医師としては、一番「死」について観察・研究している医師ということになるでしょう。 近年では、少子高齢化や核家族化が進むことで、独居高齢者の死亡が増加傾向にあり、そのような方々の解剖を経験する機会が増えています。また、景気低迷や現代的精神病などが原因となる自殺、短絡的思考から発生する傷害致死事件や殺人事件、濫用薬物による中毒などが増加傾向にあり、数年前では考えられないような死亡事例を経験することが少なくありません。
最近では、これまで一般的に表面に出てこなかったような医療事故の解剖も増えています。私たちは、このような現代の社会情勢に即した判断を求められるため、絶えずいろいろな情報を収集し、ご家族や警察関係者、法律関係者に対して、医学的かつ中立的な対応をするように努力しております。
  このような仕事をしていると、現代の日本人の感覚には「生きている」ということは医学的に当たり前のことであり、「死ぬ」ということは医学的に特殊なことと思われていると感じることがよくあります。普通に診察や手術を行っている医師や医療従事者ですら、そう思っている方が多いでしょう。ところが、これまで様々な「死」を法医解剖で経験すると、同じ医師であっても私たち法医学者はまったく逆の考えを持っています。抽象的ではありますが、「生きる」ということは非常にアンバランスで奇跡的なことであり、「死ぬ」というのは安定したものと考えています。生物というのは、つねに一生懸命バランスをとって生命を維持しています。例えるなら、地上から高い位置に張ってある綱の上を、長い棒を横に持って歩いている綱渡りの状況を想像していただければいいかと思います。綱渡りしている時に、病気や外傷が原因となってひとたびバランスが崩れると、真っ逆さまに転落することになります。横で同じように綱渡りをしていた人は、自分自身がバランスよく歩くことに夢中になっているため、他人の落ちる様を観察することができません。ところが、私たち法医学者は、バランスを崩して転落してくる人を地上で観察しており、バランスを崩した原因を考えることになります。つまり人は、うまくバランスを保って綱渡りしているときは、それを当たり前のように感じる代表的な生物なのです。話は若干横道に逸れましたが、このように私たちは、生命の仕組みを「死」の側面から医学的に研究していると言え、「生きている」ことの奇跡と重要性を常に感じております。
  一方で、ご家族の感情面を考慮すると、「死」とは突然身近にいた家族がいなくなるということであり、残されたご家族や親族の悲しみは大きく、とくに事故や犯罪に巻き込まれて亡くなられた方のご家族の悲しみは計り知れないものがあります。私たちは、医学的に「死」というものは想像以上に身近に存在するものであると理解しており、さらにそれを医師や警察関係者に講義などを通して教えているのですが、それと同時に、ご家族の心情や感情に対しては細心の注意を払わなくてはいけないと考えています。突然死された方や、事件によって亡くなられた方のご家族は、「死」のメカニズムを理解する間もなく離別に追い込まれるわけですから、その心情たるや想像を超えるものかと思われます。社会的にも、もっと「死」について理解を深め、奇跡的な「生」の大切さを理解してもらえる環境作りが重要であると思っています。
  平成十五年より警察庁は、ご遺族の心情に配慮して、犯罪によって亡くなられたご遺体の傷の修復に対し、金銭的な補助を行うことを決定しました。これに伴い、私たち法医学教室でも、法医解剖後に傷の修復の他、防腐処理などの遺体衛生保全、いわゆるエンバーミングを開始することとなりました。防腐処理を行うことで、身元不明遺体の身元確認が比較的長期にわたって行えるだけでなく、ご家族や葬儀社などご遺体を取り扱う方々への二次的な感染や汚染の蔓延を予防することができると考えています。現実的にも、法医解剖を行い、エンバーミングと傷の修復を行ったことで、ご家族に大変感謝されたことも多々あります。今後は、このようなご家族へのケアを充実しつつ、「生」や「死」に対しての正しい医学的・社会的観念が広く普及していくことを期待しています。
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