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プロフィール
サンフランシスコ葬祭大学卒業。
1996年にカリフォルニア州エンバーマーライセンス取得 。日本人初のエンバーマーとして活躍、現在までのエンバーミング処置数1,500件以上。現在日本エンバーミングサービス株式会社代表取締役。
 
 エンバーマーとして日々の職務を行っていく上で、とかく技術や薬品、備品等のテクノロジーの方面が注目されがちです。もちろん技術も日々の経験の中できちんと磨いていく事が大切ですし、テクノロジーの意味でも他の分野から新しいものを取り入れて行く事は非常に重要であり、今後のエンバーミングのクオリティの向上に対し必要不可欠な物であると思われます。
  しかしその一方で古来から未来まで不変である、エンバーマーとして必ず身につけておかなければならない精神論というものが存在します。もちろんその他の仕事についても同様のものがあると思われますが、エンバーマーという常にご遺体と相対するという職業柄、その精神論はとりわけ重要になります。ともすれば忘れられがちになってしまう事柄ですが、現在エンバーマーである者又は今後エンバーマーを目指して行く者にとって何よりも大切な部分であると言えるでしょう。
  そもそもエンバーミングのプロセスの中でエンバーマーはご遺体に対して様々な方法を用い防腐、殺菌、修復の処置を行っていくわけですが、その全てのプロセスは、亡くなり口もきけなくなってしまったご遺体と、口もきければ感情もあるエンバーマーという一人の人間の一対一で行われます。考え方を変えれば、口がきけないご遺体に対しエンバーマーは絶対的なアドバンテージを持っているという事になります。まずエンバーマーとして考える必要があるのは、このエンバーミングルーム内での大きな立場の違いが挙げられるでしょう。
  立場の違いは時として大きな隔たりを生む事があります。それはエンバーミングにおいても例外ではありません。ですからエンバーミングを開始するにあたりまずその立場の違いを無くす事が第一歩として非常に重要です。もちろん相手はすでに亡くなっており、例えば相手側の意志で何かができるという事はありませんので、エンバーマー側から何かをする事が求められます。具体的には様々な方法が個々のエンバーマーで存在すると思いますが、まず第一に一切の自分の感情を少なくともエンバーミングルームにおいては出さない事が挙げられます。喜怒哀楽を簡単に出してしまう事は、相手を自分と同様の一個人として認めた場合に適切であるとは言えないでしょう。また余計な感情は時には技術の邪魔にもなりますし、何よりも相手に対し礼節を尽くすという意味にはなりません。
  そして第二に感情の部分と若干重複しますが、エンバーミングルームに自分の趣味や好みを持ち込まないという事が挙げられます。よく言われる事ですがエンバーミングの世界ではコモンセンス(Common sense)すなわち「常識」または「良識」と言う事が強く問われます。自分の趣味や好みの中で善かれと思い行う事が、必ずしも常に常識や良識とそぐわない場合があると言う事です。例を挙げればきりがありませんが、それぞれの年代にはそれぞれの常識があり、化粧や髪型そしてその他の細かい部分についてもエンバーマーとして自分が見聞きして来た情報をもとにコモンセンスに沿って処置して行く必要があるのです。もちろん自分が実際に相対している故人の趣味や好みに沿ったエンバーミングをして行く事がエンバーマーにとっての最終目標と言えますが、実際に目の前にしたご遺体からその好みや趣味の情報一〇〇%集めることは非常に困難であり、また一部の例外を除いては不可能とも言えるでしょう。その為にも普段から自分のコモンセンスを磨いて行く事はエンバーマーにとっての使命であると言えます。
  また趣味を持ち込むと言う意味ではエンバーミングルーム内での音楽等も挙げられると思います。エンバーミングルーム内ではあくまでも故人が中心であり、エンバーマーはその後行われる葬儀全般を滞りなく行う為のお手伝いをしているに過ぎません。その中心である故人が好きであるか嫌いであるか定かでない音楽等をエンバーミングルームに持ち込む事はやはりエンバーマーとして考えなければならない事のひとつであると思われます。
  最後になりますが、エンバーミングのプロセスの中には常に切開等、言い方を変えればご遺体を傷つけるという手法が必然的に含まれます。もちろん必要最小限に限り行う事ですが、エンバーマーとしてはこうした事実を正面からきちんと受け止め故人に対しよりやさしく対応して行く事が求められます。
  今回挙げてきた幾つかの項目は本来は当たり前の事の様に聞こえますが、エンバーマーとして存在して行く中で本当に忘れてはならない事です。またエンバーマーとしてまたはプロフェッショナルとしての以上のような精神の持ち方は必ず自分の技術の結果として表れます。
  エンバーミングの技術面を支える基本の三項目は「防腐」「殺菌」「修復」ですが、精神面を支えるものは「優しさ」「常識」「正直さ」であると私は信じて日々のエンバーミングを行っています。
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