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依り代としてのシカ
(青森県・金木町)
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シカもしくはシカバナといって、すぐそれをイメージできる人はどれくらいいるだろうか。今では祭壇が大きくなり、片隅に置かれているか、使われない場合も多くなったが、昔は、葬儀にシカは付きものであった。シカは四花、紙華、四ヶ華、死花などいろいろな漢字があてられるが、白もしくは金、銀紙の房状の飾りで、紙に切れ込みを入れたものを竹ひごに螺旋に巻き付けたものである。
このシカには仏教的な意味づけがなされており、釈迦入滅のときにその死を悲しんで、周囲の沙羅双樹が白く変わったことから、釈迦の涅槃になぞらえて葬儀の際に飾るようになったといわれている。
しかし、シカの作り方や使い方は地方によってさまざまであり、一概に釈迦涅槃の故事の模倣とはいえないようだ。
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かつての報告によると、岐阜県揖斐郡藤橋村(旧徳山村)や東京都の八丈島では、シカは白木の削り掛けであったという。削り掛けとは白木を小刀で房のように削り出したもので、いまでも関東地方などで小正月の飾りとして作られている。この削り掛けは御幣(みてぐら)の原型と考えられている。
形態の違いだけでなく、使われ方も多様である。シカが死者の依り代として用いられていた地域もある。青森県北津軽郡金木町では、シカは4本に分かれたもの1基だけであり、遺体、遺骨とともに、祭壇の中心に置かれており、位牌と同様、死者の依り代として捉えられていたようだ。ここでは亡くなるとすぐカリ(仮)シカといい、白い50センチほどのシカを1基飾る。このあたりは火葬の後、通夜、葬儀が行われるが、カリシカは火葬の時に遺体とともに焼いてしまい、葬儀の時にはあらためて約1メートルほどの大きなホンシカを祭壇の中央に立てる。つまり葬儀の祭祀の中心がシカなのである。
また、シカが花の代わりとして飾られる場合も多い。和歌山県東牟婁郡古座町では五具足の花瓶にシカを4本ずつ一対挿している。五具足とは花瓶、燭台、香炉と仏を拝するための基本的な仏具であり、普通の花瓶に葬儀の時はシカを挿す。つまり造花として捉えられていることがわかる。地域によっては白い紙で作るだけでなく、金紙や銀紙、時には紅白の紙で作るところもある。また石川県の浄土真宗の地域などでは、シカが巨大になり、高さが2メートル近くのものが花瓶に飾られるという。
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| シカが墓を区画して死霊を封じ、邪霊を入れないために使用される地域もある。葬儀が終わった後、シカを墓に持っていき、墓の四隅に立てる地域が岡山県などにある。さらにこの地域では、墓の四方にシカを立てるだけでなく、シカのことを地取りとも呼んでいる。つまりシカが墓を区画して結界を作るための道具として捉えられているのである。これについて五来重は、シカが墓の結界を行い、死霊を封じ込めたり、逆に邪霊を墓に入れないようにするためのものであり、風水思想や陰陽道との関係も考えられるという(『葬と供養』東方出版)。
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造花としてのシカ(和歌山県・古座町)
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これは他の地域で地買い麦や地買い銭など、土地の神から墓を買いとるという習俗が見られることも含めて推定している。
このようにシカも単なる飾りではなく、日本各地でさまざまな意味づけがなされ、用いられているのであり、その来歴は一概にいうことは出来ないのである。
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