そう/
死者をほうむること。「―式」「埋―」「国―」。
ほうむ・る/
1.
死体・遺骨を墓所などにおさめる。 埋葬する。
2.
存在を世間からおおいかくす。
(『広辞苑』より)
古代中国の経書の一つ『易(繋辞下)』の中に、「昔の埋葬は草木で死者を厚く包み覆った」と書かれているように、「葬」は生い茂ったくさむら(
) に敷物(一)を置き、死(死者)をその上に隠し去ることを表しています。『礼記』にも「葬とは蔵(しまいこむ)である」と記されていることから、古くから亡骸を収蔵するという意味を持っていたようです。
近世まで中国はわが国と同様、死者を弔うのに土葬が原則でした。しかし世界各国にはさまざまな葬法が伝わっています。
チベットやインドでは遺骸を野に置いて鳥についばませる鳥葬、シベリアでは山林や樹上にさらしておく風葬などが行われています。中国以外で漢字が生まれていたなら、もしかして「葬」の字もまた違った形になっていたかもしれません。
ぼ/
死者を葬る所。はか。「―地」「―穴」「墳―」
はか/
1.
死者の遺骸や遺骨を葬った所。つか。おくつき。
2.
墓碑。墓石。「―を建てる」
(『広辞苑』より)
「土」が形を表し、「莫」(バク)が音を表す形声文字。本来「墓」とは、土を盛らない平らなものだけを指し、高く築いたものを「墳」、土を盛った簡素なものを「冢」(チョウ・ツカ)といいました。「莫」は「死者を包み隠す」という意味を持つほか、太陽が草むらの中に隠れて見えなくなる様子を表していることから、昔の人たちはお墓の中身について、太陽が昇ることのない暗闇の世界だと考えていたようです。
さて、お墓は祖先の霊を弔い、故人をしのぶ大切な財産。「墓」という漢字も、在りし日の両親の面影を「慕う」ことから生まれたという説もあります。最近ではインターネットで墓参りというのもありますが、古くから受け継がれてきた先祖供養の伝統行事を大切にしたいものですね。
し/
1.
しぬこと。命がなくなること。「―亡」「病―」「決―」
2.
機能を果たさないこと。役に立たないこと。
「―蔵」「―火山」
3.
生死の危険。命がけ。「―線」「―力」「―守」
4.
律の五刑の一。
5.
野球で、アウトのこと。「二―満塁」
(『広辞苑』より)
「歹」(ガツ)は、遺体の肉がそぎ落とされて白骨になった状態。「ヒ」は人がひざまずく意味。死者の前で、人がひざまずいて祈りを捧げている様子を表した会意文字です。新表記では「屍」(シ・シカバネ)と書き換えられることもあります。
さて、昔から「死」は身近な存在と考えられ、漢字の世界でもさまざまな同義語が当てられてきました。たとえば、「夭」は天寿をまっとうしないこと、「札」は流行病などで死ぬこと。満ち足りた人生をまっとうしたときには、「終」の字が使われるようです。
中国には「死且不朽(死すともかつ朽ちず)」という古い諺があります。これは「肉体は死んでも、名声は後世まで滅びない」という意味ですが、私たちも人生を豊かに楽しく過ごし、願わくば実りある「終り」を迎えたいものですね。
も/
1.
死亡した人を追悼する礼。特に、人の死後、その親族が一定期間、世を避けて家に籠り、身を慎むこと。
「―に服する」
2.
わざわい。凶事「事もなく―もなくあらむを」
(「広辞苑」より)
「哭」は声をあげて口々に泣くこと。「亡」は人の死を意味する会意文字。一説には、木の葉がそぎ落ちて枝だけになった状態を「
」(ガク)といい、遺体が骨だけになってやがて失われてしまう様子を表した文字ともいわれています。
さて、古代中国には「三年の喪」という言葉がありますが、これは両親が亡くなったときは二十五ヶ月、足かけ三年の喪に服するというものです。また、論語の中にも「喪与其易也寧戚(喪はその形式よりも、むしろ心の悲しみを大切にしなさい)」とあるように、儒教を尊ぶ中国では、特に死者との別れを悼む「喪」の習慣が大切にされてきたようです。
最近ではニーズも多様化し、葬儀・葬祭もさまざまな形式で営まれるようになりましたが、せめて喪の期間中は静かに在りし日の故人を偲びたいものですね。
せい/
ゆくこと。人が死ぬこと。「―者」「―去」「急―」
ゆ・く/
1.
現在いる地点から出発して向こうの方へ進行・移動する。
2.
ある所を通過して進む。
3.
道などが通じる。
4.
ある方法で事を行う。
5.
死ぬ。逝去する。
(『広辞苑』より)
「
」は行くこと。「折」ははっきりと断つ、ぷっつりと途絶えること。かたく結ばれていた絆が離れて、ばらばらになってしまう状態であることから、転じて「死」を表すようになりました。また、中国古代の思想家・孔子が「逝く者は斯くの如きか(この世にあるものはすべて川の流れのように移ろい変わっていくのだろうか)」と述べているように、去ってしまって二度と戻ってこないという意味でも使われるようです。
孔子の言葉でも分かるように、死者とは “逝く者”であり、この世では再び会うことができない存在でした。
しかし、古代エジプトや中世ヨーロッパなどでは、死者はやがてよみがえると考えられており、必ずしも “逝く”だけの一方通行ではなかったようです。文化や思想の違いが言葉に表れているようで興味深いですね。
き/
1.
いみはばかること。きらい避けること。「―避」「禁―」。
2.
喪中でつつしんでいる一定の日数。いみ。「―中」。
3.
死者の命日。「遠―」「七回―」。
(『広辞苑』より)
かたちを表す「心」と「己(キ)」という音が組み合わさった形声文字。「己」には、押さえつけられたものが起きあがるという意味があることから、心中にハッと抵抗が起きて、素直に受け入れられない気持ち、すなわち肉親などの死を表すようになりました。現代では、「忌諱(忌み嫌うこと)」「忌克(他人を妬んで勝とうとすること)」など、どちらかというと「よくないとして避ける、はばかる」という意味合いで使われることが多いようですが、天武天皇の時代には忌寸(いみき)という立派な姓氏も存在しました。
また、糸筋を整える糸巻きを象徴した文字だという説もあり、「かしこまる」ことから、日本の陰陽道において「物忌み(たたりを恐れて生活を慎むこと)」という言葉が生まれました。いずれにしても、人間の「心」の有り様が深く関係しているのがユニークですね。
いのち/
1.
生物の生きてゆく原動力。生命力。
2.
寿命。
3.
一生。生涯
。
4.
もっとも大切なもの。命ほどに大切に思うもの。真髄。
めい/
1.
いいつけること。いいつけ。「―令」「任―」
2.
名をつけること。また、名を記したもの。「―名」「亡―」
3.
いのち。「―日」「寿―」
4.
まわりあわせ。「―数」「運―」
5.
めあて。「―中」。
(『広辞苑』より)
「人」を「 (あつ)」めて、「口」で天の意向や使命を伝えること。特に、神や君主の発言を指し、転じて「命令」を意味するようになりました。神話に登場するイザナギノミコト、スサノヲノミコトなどの「ミコト(命)」も、「命令を発する神や人」を表す尊称だと考えられています。また、天から授けられた定めを自覚し、それを果たすために人生を全うすることから、いつしか「いのち(生命)」を象徴するようになりました。
その昔、中国の堯(ぎょう)という聖人が「命が長ければ、恥を受けることも多くなってしまう」と嘆いたところ、出迎えに訪れた役人が「与えられた天命を果たすのに、命が長すぎるということがあるでしょうか」とやり込めたとか。
何かと世知辛い現代社会ですが、私たちが果たすべき天命がどのようなものかを考えながら、あらためて「命」について問い直してみてはいかがでしょうか。
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