葬祭研究所トップページへ
お葬式の豆知識
葬礼談義
世界のお葬式
偉人達の終日
漢字キーワード
葬儀の民俗学
葬祭なるほど話
葬儀に関する論文
葬儀のコラム


葬儀に関するお問合せコーナー
葬儀に関するエッセイ・コラム募集箱
運営会社案内

葬礼談義 Interview
香山リカさん+吉田武
田辺聖子さん・藤本義一さん+播島幹長
佐藤喜宣さん+吉田武
犬童一心さん+中西通
公益社創業70周年記念対談 藤本義一さん+播島幹長

 
株式会社公益社
代表取締役社長
精神科医
吉田 武   香山 リカ さん
 ストレス社会といわれる21世紀は、これまで以上に心のケアの大切さに注目が集まっています。葬儀の現場でも、ご遺族に対するメンタルケアは見逃せない部分です。精神科医であり、その臨床経験を生かして新聞や雑誌等で広く現代人の“心の病”について洞察を続ける、香山リカさんにお話を伺いました。

吉田 香山さんは、精神科医として患者さんの心のケアをされているわけですが、葬儀の際のご遺族のメンタルケアについていかがお考えでしょうか?
香山 精神科では患者さんの死に立ちあうことは少ないのですが、たまにそういうケースもあります。核家族化が進んで昔と違って、人の死に立ちあう機会が少ないせいでしょうか、ご遺族はもちろんですが、看護婦などの医療関係者にとっても、ショックは大きいようですね。やはり、身近な人の死に直面した場合のメンタルケアは、とても大切に思います。
吉田 私も阪神淡路大震災のときは、現地で犠牲者の方のお世話をさせていただきました。また、先の大阪府での小学校の事件でお亡くなりになったお子様の葬儀をお手伝いしたときもそうですが、ショッキングな事件で突然亡くなられた場合のご遺族のメンタルケアがいかに重要であるかを普段以上に感じました。
香山 周囲の人が「頑張って」と励ましたりすると、かえって鬱状態になるケースもあります。特に普段、真面目な人ほど「しっかりしなくては」と頑張ってしまう。十分に悲しまないうちに、何事もなかったように日常の生活に戻ると、眠れなくなったり心に落ち着きがなくなったりしてしまうんですよ。
吉田 そういう場合は、どうしたらいいのでしょうか?
香山 傷をえぐるように思われるかもしれませんが、亡くなった方の話や自分の悲しみをしっかりと話してもらうことです。悲しい気持ちにフタをしないことがとても大切ですね。
吉田 私どもが常に気をつけているのは、ショックの大きな方に「祭壇はどうしましょうか?」などと、直接決断を求めないということです。そして、少しでも心が落ち着かれるように、行き場のない悲しみや怒りを受け止めること。八ツ当たりされることの多い社員にはいつも「サンドバッグになってあげてくれ」と言っています。若い社員は「どうして一生懸命やっているのに怒られるのか」と思いがちですが、不思議なことに、激しく怒りを表現した方ほど後で「ありがとう」とお礼を言ってくださるんです。
香山 悲しみや怒りはため込まないことが何より大事ですからね。

吉田 ご葬儀をお手伝いしていると、親身になればなるほどご遺族の悲しみが自分のことのように感じられ、ときに若い社員のなかには、涙を流してしまう者もいます。
香山 火事の現場に赴く消防士の方にも似たようなケースがあります。彼らの「もう5分早く到着すれば助かったんじゃないか」という後悔の念や悲惨な現場に遭遇したことによるショックは計り知れません。しかし、消防士は強くあらねばならないというジレンマのなかで、悲しみを押し殺してしまうのですね。私も若い頃は、患者さんの悲しみが自分の悲しみのように感じて、一緒に落ち込むことがありました。でも、それでは相手は癒せない。自分自身の心の健康を保つことが相手へのケアにつながるんです。辛いことや悲しい心を閉じないで、共通の悩みを持つ者同士で思いを語り合うといいでしょう。泣いてもいい。だけど、引きずらない努力が必要でしょうね。
吉田 そうですね。私どもは葬儀のプロですが、葬儀に慣れてしまってはいけないと思っています。社員がご葬儀のお手伝いにうかがうと、1日目は「葬儀屋さん」、2日目は「公益社さん」、そして3日目になると「○○さん」と名前を呼んでいただける。これはうれしいことです。短い間のおつきあいですが、ご家族とともにいろんな思いを共有したいと日頃から思っております。
香山 そういう思いでサポートしていただけると、ご遺族の方もうれしいでしょうね。悲しみのなかで、第三者ではありますが葬儀屋さんの存在というものはとても大きいと思います。

吉田 昔は逆縁といって、親より子どもが先に亡くなった場合は、親は火葬場へ行かないことが常でした。しかし、我々は、必ず火葬場へ同行していただくようにおすすめしています。特に事故による急死の場合などが顕著ですが、遺体とお別れをしないと”死“をなかなか受け入れられない。そうすると、逆に後に苦しむことになりかねませんから。
香山 一般的に、日本人は遺体を怖いものとして忌み嫌う傾向があるようですが、きちんと遺体と対面して、自分のなかに”死“を受け止めることが大切です。そういう意味でも、お葬式というのは、心のけじめをつける上でとても大切なものだと思うんです。
吉田 葬儀のスタイルというものは、長い歴史の中で、試行錯誤を経て、現在の形になったものだと思います。公益社では、従来のしきたりを踏襲しつつも、CADやCGを用いてデザイナーが祭壇をデザインするなど、亡くなられた方らしいスタイルで、ご遺族の希望に沿うような葬儀を心がけています。どんなに高齢で天寿を全うされた方のご葬儀にも、悲しんでいる方は必ずいらっしゃいます。ですからたったお一人でも、悲しみの大きな方に焦点をあてた心配りを大切にしています。葬儀はあまりに形式ばると形骸化してしまいますからね。
香山 いや、私は形式もある部分では大切だと思うんですよ。現代はあまりに合理性を追求して、無駄や世俗的なことを置き去りにしています。しかし、そういう部分に実はとても大切な意味がある。人の死というショッキングな体験をきちんと受け入れ、故人とお別れするけじめをつけるための儀式として、形は残っていってほしいと思います。
吉田 たしかに、葬儀には儀式のほかにも、昔から伝えられている日本のマナー、立ち居振るまいが求められます。葬儀はそういうことを改めて見直す良い機会にもなりますね。
香山 最近では、形式にとらわれないスマートな葬儀が話題になってますが、私はやはり、お葬式は厳粛なものであってほしいと思いますよ。私は神戸芸術工科大学で学生たちに視覚情報デザインを教えているのですが、卒業制作で仏壇を作りたいという学生がいました。
  なぜかと聞いたら、おばあさまが亡くなられて、「生まれて初めて葬儀に参列して”儀式“に感動したから」というんです。また、将来は葬儀屋さんになりたいという学生もいます。それは、人に奉仕でき、またリスペクトされる職業だからだそうです。私たち大人が考えるよりずっと、今の若い人たちは、葬儀に興味があるし”カタチ“を知りたがっていると思いますね。
香山リカ 精神科医。神戸芸術工科大学視覚情報デザイン学科助教授。学生時代よりリカちゃん人形の名をペンネームとして、雑誌等に寄稿。その後も臨床経験を生かして、新聞、雑誌で社会批評、文化批評、書評なども手がけ、現代人の“心の病”について洞察を続けている。専門は精神病理学だが、テレビゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。
吉田武 1937(昭和12)年、三重県生まれ。56(昭和31)年、四日市商業高等学校卒業。住友銀行を経て、90(平成2)年、株式会社公益社入社。2003(平成15)年4月、公益社代表取締役社長に就任し、現在に至る。
吉田 それはとてもうれしいお話です。私どもも、皆さまに感動を与えられるような葬儀をこれからも心がけていきたいと思います。
Copyright (C) 2004 KOEKISHA CO.,LTD. All Rights Reserved.